葉の影に隠れてジュラ紀を生き延びしちさき体の哺乳類たち(エオマイヤ)
太陽のひかり届かぬ白亜紀の森をさまよふ恐竜の群れ
卵を抱く姿のままの恐竜の化石に残る羽根の痕跡
はるかなる記憶を風が語るとき砂漠の蜥蜴足を止めたり
ふたたびの繁栄の時待つごとくウミイグアナは海を見てをり
禁断の林檎の味が忘られぬアダムとイブの旅の始まり
楽園を追はれし日から他の命奪はなければ生きられぬヒト
ドードーのまぼろしの声大陸の森に響きぬ満月の夜
増殖するレミングの群れそそり立つ白き崖から海へなだれつ
支配者の顔したヒトが手に入れし原子力とうパンドラの箱
眼に見えぬ毒の煙が迫りくる渚は今も美しいまま
箱船を追ひかけ沖へ漕ぎ出せる小舟の群れが波の間に消ゆ
新宿にビルの墓標は並びたりホモサピエンスの記憶をとどめ
人類の最期の柩進みゆくロボットたちの礼に送られ
人類が滅亡したるそののちも動き続ける地球(テラ)の原発
人類はいつか滅びるだろう。
それが近い未来なのかははるかに遠い未来なのかはわからないが。
長い間繁栄を誇ったあの恐竜でさえ滅びたではないか。