アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

こんな時代だから・・ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲

2024-04-21 18:00:00 | 音楽/芸術
 ショスタコーヴィチの弦楽四重奏を全曲演奏するために組織されたDSCH弦楽四重奏団。この第2回演奏会に足を運んできた。DSCHとはレミドシと読み、ショスタコーヴィチのイニシャルのようなものなのだそう。このモチーフを多用したということらしい。確かに作曲家により、この手の拘りを耳にすることは珍しくないが、チーム名にするなんて崔文洙氏率いる4名のメンバー達のショスタコーヴィチへの愛情が計り知れるというものだ。
 さて、今回の演奏だが昨年の初回に比べると、さらにそれぞれの息が合い、音楽の流れが良くなっているように感じられた。不勉強のアントンKだから、譜面を取り出して何度も鑑賞するようなことはしてこなかったが、聴き進む中で数々の交響曲の中で用いられているパッセージやモチーフが耳に着いてハッとさせられてしまった。ショスタコお得意の小太鼓のリズムまで飛び出したのには苦笑したが、それら細かな要素を、各パートが心を込めて演奏する姿を間近に見て熱く感動してしまったのである。
 この作曲家ならではの空気感、威圧感は想像を絶し、各パートの雄弁さはもちろんだが、奏者4人それぞれが響きを聴き合って奏でる調和のとれた様は、独自の世界へとアントンKを連れていった。演奏者の気が会場いっぱいに広がり、知らず知らずとその響きの中で集中してしまい、まさに息を飲むのも忘れそうになる。Vc植木氏の土台を支えるエネルギーはどうだろう。Vla安達氏の透き通った心地よい響き、崔氏に負けず劣らず素晴らしいハーモニーだったVnビルマン氏も大健闘だったように思う。そして崔氏の奏でる響きは、いつも以上に鮮烈であり美しく、かつ過激でデモーニッシュだった。とくに最高音がPPで永遠に響く箇所など、鳥肌が立つほどの響きに満たされた。あの響きは、録音では到底伝わらないだろうが、ホール全体が一心一体となった瞬間を何度も味わうことが出来たことに感謝したい。
 世界情勢、自然災害、その他次々と予想不可能な出来事が起きて混沌としたカオスの時代に突入したかのような令和時代。こんな時代にあえてショスタコーヴィチをひと時真剣に集中して鑑賞することで、どこか慰めや反省、心の拠り所に到達できる気がしている。なかなか実演では鑑賞できない、ショスタコーヴィチの四重奏曲だが、来年はいよいよ中期の楽曲が並び、期待が膨らんでしまう。メンバー4名それぞれ多忙を極め、準備が膨大で大変だと容易に想像できるが、次回もさらなる精神性の高い非日常の響きを期待して待つことにしたい。

 掲載写真は、カーテンコールで再び登壇したDSCH弦楽四重奏団の4人。完全燃焼した歓びと安堵の表情が素敵で、こちらも心が熱く満たされる。これだから音楽鑑賞は止められない。

 ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲全曲演奏プロジェクト 第2回
第4番 ニ長調 OP83
第5番 変ロ長調 OP92
第6番 ト長調 OP101
アンコール
第8番~5楽章

DSCH弦楽四重奏団
Vn  崔 文洙
Vn  ビルマン 聡平
Vla  安達 真理
Vc  植木 昭雄
2024年4月21日 すみだトリフォニー小ホール


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