関西4大オケスペシャルコンサートを聴いてきた。
これは、大阪駅にほど近いところにあるザ・シンフォニーホールが開館40周年にあたるということで企画開催された演奏会だった。アントンKにとって思い入れの深いホールは、やはり上野の文化会館だが、その後あちこちに素晴らしいホールが出来て影が薄くなってしまったことが少し寂しい。その素晴らしいホールの一つが、今回行った大阪のザ・シンフォニーホールだろうか。もちろん、都内在住だから、出向く回数は限られてしまうが、初めて聴いた時の響きの美しさ、残響の心地良さは未だに残っている。朝比奈隆晩年のブルックナーチクルスでの興奮は、このホールに足を踏み入れる度に蘇ってしまう。そして後のお別れ会での残像が目に焼き付いてしまっている。アントンKにとっては、ちょっと特別なホールに感じてしまうのだ。
さて今回来阪の目的は、もちろん2つのオケのソロ・コンサートマスターでおられる崔文洙氏の「英雄の生涯」の鑑賞にあった。昨年10月に演奏された新日本フィルとの「英雄の生涯」は、スケジュールが合わず配信での鑑賞に終わり、歯痒い思いを残してしまったから、その雪辱を果たすべく大阪まで乗り込んだ訳である。
今回オケは大阪フィル、そして指揮者は尾高忠明マエストロであり、道中から良演がさらに期待されたが、今思い返してみても素晴らしい演奏だったと断言出来る。少なくともアントンKの体験上では、一番心に染みる深い演奏内容だったと書き留めておきたい。これまでにも、コンマス崔氏の「英雄の生涯」は実演で聴かせて頂いているが、間違いなくより深く表情豊かに変わり、崔氏でしか味わえない独特な音響空間、心の葛藤がそこにはあった。3部「英雄の伴侶」に入ってからの崔氏の独奏は、まさに神がかっていたのではないか。それはまるで人間の声そのものに聴こえたのだ。あの大きなホールに彼の音色だけが響き渡り、多くの聴衆を巻き込み虜にしている様は、オーケストラ音楽の醍醐味を存分に感じて、その一体感に深く感動してしまったのだ。崔氏の演奏にもさらに新しい発見が多発していて、アントンKの集中力も息切れしそうなくらい。特にマーラーのようなグリッサンドの強調は度肝を抜かれ、強弱緩急が絶妙で、ここだけ聴いても駆け付けた甲斐があったと言えるだろう。実演でしか味わえない感覚を今回も享受し、心に染みわたる鑑賞になったのである。
2つのオケのソロ・コンマスでおられる崔分洙氏だが、最近彼の活動にも変化が見られ広がりを見せていることが、ファンであるアントンKにはとても嬉しく勇気づけられる。先月鑑賞したショスタコの弦楽チクルスの圧倒的な豪演や、コンチェルトやソロでの活躍は、今のアントンKの心の支えとなっている。今後も可能な限り実演に触れ、音楽の真実を味わいたいものだ。
The Symphony Hall x 関西4オケスペシャルコンサート
大阪フィルハーモニー交響楽団
ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調 OP.67 「運命」
R.シュトラウス 交響詩「英雄の生涯」 OP.40
指揮 尾高 忠明
コンマス 崔 文洙
2023年1月29日 ザ・シンフォニーホール
(掲載画像はこの演奏会には関係ありません)
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