少し投稿時期がズレてしまったが、先々月N響の定期でエッシェンバッハがブルックナーを振ったので聴きに行ってきた。
すでに80歳を過ぎ、もとはピアニストだったエッシェンバッハは、アントンKにとってもピアニストのイメージがあった。70年代頃だから半世紀以上も前になるが、徐々に指揮活動を開始したらしく、海外の音楽週間にも登場するようになり、当時のライブ音源からもその名を聞くようになってきたと思う。ドイツ物中心にレパートリーが広がっていて、ライブ録音を聴く限り、伝統的な演奏スタイルを重視しているように思えて、アントンKの中でもチェックする指揮者の一人だった。クラシック音楽の世界にも、流行の演奏スタイルはあり、新しく編集された楽譜での演奏やオーケストラの編成など、長年同じ楽曲であっても、時代とともに印象が変わるものだ。確かに新しい発見があり、それはそれで楽しい事ではあるが、それも程度問題であり、どこまでが許容できるかは個人的なことでアントンKには、今までちょっと受け入れ難い演奏もあった。現代のデジタル技術で、昔撮影した画像を自分なりに加工変更して楽しむことと同じに感じてしまうのだ。
その点では、エッシュンバッハについては安心して音楽の中に身を置くことが出来る。今回取り上げられたブルックナーの第7交響曲でも、新しい楽譜の影響があるのかもしれないが、伝統的なノヴァーク版の演奏に感じた。プログラムが1曲のみという、ブルックナーを聴くにあたっての構成は好みで良かったが、相変わらずのNHKホールの環境は気の毒に感じてしまったのである。おそらく、アントンKの席が良くなかったと思いたいが、響きがまるで伝わってこないのだ。ブルックナーの音楽を鑑賞する場合、一番重要に思うのは、ハーモニーの美しさつまり響きの響かせ方のように思う。オケの能力が低くたって、響きが心を満たされれば十分満足がいくと考えている。日本一とも言われるN響が、目の前で鳴っていても感動出来ないことが歯痒ったのだ。償いとして、本日のN響アワーにて、この日のライブ映像が放送されるのでしっかり聴き直したいと思っている。