アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

L.フォスターのブラームス・プロ

2018-11-18 07:00:00 | 音楽/芸術

新日本フィル定期公演トパーズシリーズ、ブラームス・プログラムを聴いてきた。

少なくともアントンKが、ブラームスのみの演奏会に出向くのはいつ以来だろう。もしかしたら、朝比奈隆のチクルスまで遡ってしまうかもしれない(1990年代)。実演での話だが、あの時もオケは新日本フィルだった。若い頃は、まだブラームスの良さがわからず、どこか湿り気の多いグレーなイメージを持っていて、聴いていたのは第1第2の交響曲と、ヴァイオリンコンチェルト、いくつかの管弦楽曲、それにピアノ曲くらい。それが、一番苦手だった第4交響曲のチェリビダッケの演奏に触れ突然開眼し、いつの間にか鑑賞レパートリーが増えていった。以降歴史的名演と言われたCDも買いあさり、それまでの印象が随分と変わった。別の機会にこの辺の話も触れておきたいが、今回のフォスターの演奏は、そんな歴史的名演を振り返るような、実に落ち着いた的を得た演奏に感じた。

前半にピアノ協奏曲第2番が置かれていたが、ブラームスのピアノ協奏曲は、協奏曲の中でも重量級であり、日本でも演奏機会が少ないはず。4楽章構成で50分を越える楽曲だから、まるで交響曲のように思えるし、実際曲想ががっしりしていて重いのだ。フォスターの解釈は、奇手を狙わず正攻法であり、各声部のデュナーミクが明確に示され、よってメリハリが浮き出ており、これぞブラームスの響きというポイントがいくつも散見できた。今回のピアノニスト、モーグもオケに負けてはいなかった。抒情的なフレーズは、実に気持ちが入り、オケとの全奏では、強烈な響きを持って主張し、一つの大きな世界がそこにはあったのだ。

後半の交響曲第2番でも同じことが言えるだろう。雑念は皆無であり、伝統的な演奏スタイルのもと、アントンKもどこかじっくり安心して音楽に身を置くことができたように思っている。楽章が進むごとに指揮者、オーケストラ、そして聴衆とに一体感が生まれ、音楽がホール全体を飲み込んでいくことがわかる。そしてそれが終楽章で全開、解き放たれたのだった。熱く高く高揚しコーダに向かって、フォスターはアクセルを踏み、さらに炎を燃え上がらせたのだった。

新日本フィルも、指揮者フォスターの指示を率直に受け止めており、低弦部の主張は明確で図太く安定感がある。もちろんコンマス崔氏の雄弁さはピカイチで、弦楽器群のけん引にとどまらず、指揮者とともにオケ全体を引っ張っていたのは言うまでもない。また今回は、コンチェルトでチェロのトップ奏者の何とも深い祈りのような音色に心打たれたことも記述しておきたい。

 No.597 新日本フィルハーモニー交響楽団 トパーズ

ブラームス  ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 OP83

ブラームス  交響曲第2番 ニ長調 OP73

(アンコール)

ブラームス  間奏曲 OP119-2

指揮   ローレンス・フォスター

ピアノ  ヨーゼフ・モーグ

コンマス 崔 文洙

2018-11-16      すみだトリフォニーホール