アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

小泉和裕のフランクを聴く

2017-10-25 12:00:00 | 音楽/芸術

今日も友人のお誘いを受け都響の定演に出向いてきた。

今年9月まで改修工事で閉館していたサントリーホール。リニューアルして今回初めてだったが、特に大きく変わったことはない。ホール内の床や座席が補修されているようにも思うが、一目で変化がわかるのはお手洗いが増設されて広くなったことぐらいか。

さて今回のメインプロであるフランクの交響曲。アントンKは実演は大昔に聴いたきり恵まれていない。どちらかというと好みの楽曲ではないので、進んで足を向けなかったのだ。フランスの作曲家(出身はベルギーとのこと)で、ロマン派の作曲家にも関わらず、実際演奏に触れたのは、随分と後年になってから。チェリビダッケのレパートリーでもあったことから耳にするようになったが、その魅力を見出すには至らなかった。あまり心地の良くない転調が頻繁に現れ、どこか聴いていて道に迷ってしまった感覚になる。これは好みの問題だとは思うが、同じ転調でもブルックナーのようにどうしてならないのか?そこには人間界とはかけ離れた壮大な広がりを感じるではないか。

そんなイメージを持っていたフランクだが、この日の演奏は、全体を通して各声部が見通しが良く、オケも好演だったように感じている。テンポ感でいったら遅めで重厚な印象であり、メリハリが強く楽曲の頂点では、トゥッティの音圧が凄い。もちろんこれは、指揮者である小泉和裕が要求していることだろうが、それがどこか空虚な音なのである。綺麗にバランスされているのだが、FF(フォルテッシモ)では気持ちが乗っていない駄音に聞こえるのだ。総じて感じたことは、指揮者とオーケストラとの気持ちの上での距離を感じていた。淡々とした指揮振りにオケは無表情で就いていくといった感覚を覚えたのだ。そこには、意思の疎通があまり感じられず、温かみより冷たさを感じてしまったのだ。音楽が熱く大きくなってきても、淡泊でクールに演奏は進行する。オーケストラの音色から、指揮者の体温を感じないと言ったらわかりやすいか。数年前に、小泉氏のブルックナー演奏を聴き、やはり同じような感想を持ったが、このスタイルがおそらく彼の演奏スタイルなのだろう。いわゆるこれが小泉和裕の独自性ということになるのだろうが、残念ながらアントンKを熱くし独自の世界へ連れていくような演奏スタイルではなかった。昔カラヤンが来日しベルリン・フィルを振った時の印象である、独裁者的な凄みを今回の小泉和裕氏から感じたことも記しておく。

今回のオーケストラである都響は、技術的にも他の在京オケと同じく近年稀にみるレベル向上を確認できる。今やこの都響に限らず、どこのオケも朝比奈時代とは正直雲泥の差があり、我々ファンもその個性を見出すことが難しくなりつつある。こんな万能になったオーケストラも、指揮者によって大きく印象が変わってしまう訳で、ますますオーケストラと指揮者との相性が重要になることを再認識させられた。

2017-10-24  東京都交響楽団第841回定期演奏会B

バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112

フランク 交響曲 ニ短調

指揮 小泉和裕

コンマス 山本 友重 

アリーナ・イブラギモヴァ (vn)

サントリーホール