昔どなたかが、
「数ある機械の中で一番人間に近いのは、蒸気機関車だ!」と誇らしげに言った。
確かにアントンKもそう思う。近代的な車輛達とは違って、うんと個性丸出しだし表情も豊かだ。それは煙や走行音から来る動感と言えるかもしれない。ある時は軽やかに目の前を通り過ぎ、またある時は上り坂を苦しそうにあえいで全身全霊の姿を我々に見せる。十人十色と人を言うが、蒸機に関しても全くその通り。あれだけ全国にいたD51だってそれぞれの運転テクニックが必要だったと聞く。機嫌の良い時と悪い時があるなんて、まさに人間そのものに思えてしまうのだ。そしてそんな蒸機に人生を懸けた人達も未だに多く存在することも事実なのだ。
復活蒸機しか知らないアントンKでも、その走りを見たり聞いたり、そして諸先輩方の武勇伝を聞いたりすることで、蒸機の素晴らしさが伝わるが、これが伝われば伝わるほど蒸機現役時代が恋しくなってしまうのだ。やはり音楽と同じで、写真や映画では伝わらない世界がある。まさにそこにいることに意味があり身体で感じるのだ。体験することがいかに大事なことかが再認識できる。一枚の写真から、そんな想いが少しでも伝わるようになるには、まだまだ修行が足りない。自分自身そう思う。蒸機の動感を読む。新たな課題がいつも立ちはだかっている。
掲載写真は、冬の磐越西線のSL会津路号。出発からいきなりの25‰に全開で挑む雄姿。
2000-02-06 9232レ D51498 JR東日本/磐越西線:東長原にて