都響の定演に行ってきた。
今日の指揮は、ミヒャエル・ザンデルリンク。アントンKの年代では、父のクルト・ザンデルリンクの方が、今まで数々に名演に触れてきた実績がある。もっともミヒャエル・ザンデルリンクは、あまり自分と年齢が変わらないから当たり前か。
さて上野の文化会館。ここは森に囲まれ、雰囲気も最高。また駅からのアプローチもよくて、駅前の横断歩道を渡るといつも胸がワクワクしてしまう。最近こそ御無沙汰になってしまったが、昔、ここへ入り浸っていた時代が懐かしい。まあ昭和の時代は、クラシックを聴くといえば、上野と決まっていたからな。とにかくこの東京文化会館にはよく足を運んだもの。もちろん、忘れられない演奏会も多々思い出せるのも、何だか歴史を感じて少し嬉しくなる。エントランスからホールまでの雰囲気も昔と変わらずホッとする。石に囲まれた厳かな落ち着きのある雰囲気が、自分の集中力を高めてくれる。
今日は都響の定期だから、常連さんも多いのか、随分と華やいだ雰囲気でどこか活気があった。聴衆もだいたい8~9割といったところ。今晩のプログラムでここまで入れば上出来ではないだろうか。
前半は、ショスタコーヴィッチのチェロ協奏曲の第1番。馴染みのない楽曲だが、相変わらずお茶らけたこの作曲者のおとぼけと、反対に暗く重い深い部分が交錯しあっという間の30分だった。またソロのチェリスト、スタドレルのいう若いプレーヤのテクニックには驚かされた。チェロという楽器は、人間の心に一番染みてくる音色を奏でることができるのではないかと思えるくらい、深い音色を奏し感動をおぼえた。
後半は、チャイコフスキーの第1番。あまり実演では接したことのない楽曲だが、こうして聴いてみるとなかなかの聴きごたえのある楽曲ということが再認識できた。まあそこは、チャイコフスキー、派手な音色にホールは包まれることを良しとする聴衆たちはさぞ満足だったのではないか。
さて、ミヒャエル・ザンデルリンクの指揮振り。父であるクルト・ザンデルリンクは、チャイコフスキーも好んで演奏したという記憶があるが、父の重厚な音色とは一線を画す、もっときめの細かい解釈だった。緩急を自在に操り、時にはゆっくり、そしてここぞと言うときには、思いっきりアクセルを全開にする解釈。自己主張は激しいが、楽曲にマッチしているため、違和感は皆無。今までアントンKが聴いてきた第1番のイメージを少し変えてしまうくらいの譜面の読みが深い。それに着いていったオケも素晴らしい。さすが都響と言いたい。第2楽章の物悲しいObやClの音色の素晴らしさは絶品であり、ティンパニの豪快な打音は最後まで耳に残った。
指揮者としては、まだお若い部類のミヒャエル・ザンデルリンクだが、今後ますますの活躍を期待したい。
東京都交響楽団 第798回定期演奏会A
ショスタコーヴィッチ チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 OP107
チャイコフスキー 交響曲第1番 ト短調 OP13 「冬の日の幻想」
指揮 ミヒャエル・ザンデルリンク
チェロ アレクセイ・スタドレル
上野 東京文化会館大ホール