マジョルカピンク

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どぶ

2017-07-25 18:25:00 | 映画
ファイターズ9年ぶりの釧路開催で地方開催試合8戦全敗て・・とほほ。
道東の小さな市にファイターズが来るなんて、街はお祭り騒ぎだったでしょうに。カワイソウ。
絶賛泥沼のファイターズに捧げる映画レビューです。

1954年公開。新藤兼人監督作品「どぶ」
戦後の横浜鶴見区をモデルに、かっぱ沼に集う社会の最底辺のそれこそどぶの中を這いずり回るようにして生きる人々の群像劇。
社会派新藤兼人監督の面目躍如といいましょうか。社会からはじき出された、貧民窟のようなところでその日暮らしをする底辺の人々の生きざまがリアルに描かれていて興味深いです。白黒の画面からでも匂ってきそうな汚さや惨めさ。昔の日本は良かったと懐古厨は言うけれど、こういう圧倒的に貧しい当時の暮らしぶりを見ると、今の日本人が昔戻ったって暮らせやしないでしょう。ここから日本は徐々に復興し好景気に沸くはずなんだけど、この作品を見た限りこの社会の底辺にいるような方々にはこの暮らしから抜け出せそうな手掛かりは全く見えません。絶望だけ。
持病のある娼婦がその貧民窟に住み着きはじめてから、悲惨な死を迎えるまでの物語なんですが、頭が少しアレな人ゆえの陽気さや若さと美貌で一時この貧民窟にも明るさや不思議な一体感にようなものが生まれるので、おや貧しいけれどみんな仲良く頑張ろう、的な人情悲喜劇なのかと思ったら、やはり一筋縄にはいかず後味は悪かったですね。貧しさと荒んだ生活ゆえに、結局ここに住む人たちの心も荒んでおり、一人の無垢な心の娼婦が犠牲になったというわけです。
この作品、フェリーニの「道」と同じ年に制作されたとのことですが、話といい構成といいなんだか似ているんですよね。主役の女性の物語の立ち位置やたたずまいなども似てて本当に不思議。
ともに第二次大戦で深い傷を負った国同士。戦後はみな貧しく、生きていくのに綺麗ごとではすまない苦しい時代があったと思います。その荒んだ惨めな生活の中に現れた一筋の光のような無垢な女の魂も、目の前の生活や打算のために葬られてしまうという共通のテーマ。2人の鬼才は同時期に同じようなテーマに興味を持ち、映画にしたのですね。
この娼婦を演じるのが監督の生涯のパートナーであった乙羽信子さん。大熱演でした。
上手いだけじゃなく情熱やスピリッツを感じさせる体当たりの演技で、魅了されました。
この娼婦を部屋におき、カモにする男が宇野重吉さんなんですがこちらもすごく魅力的。昔の役者さんは輝いてるわ。
ついでに言うと「道」でジェルソミーナを演じた女優さんもフェリーニの奥さまだった人。偶然の一致が面白いです。