京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

『子どもの貧困と教育機会の不平等』

2014年02月01日 | KIMURAの読書ノート
『子どもの貧困と教育機会の不平等~就学援助・学校給食・母子家庭をめぐって』(一般書)
鴈咲子 著 明石書店 2013年

2012年にユニセフが発表した先進35カ国での子どもの相対的貧困率において、日本はワースト4位の14.9%であり、日本における貧困層が拡大されていることはかなりメディアでもとりあげられるようになった。しかし、まだまだその認知度は低いように思われる。本書では現在の日本の子どもたちが置かれている現状を様々なデータから報告している。

本書の特徴としては「様々なデータ」が著者におけるアンケート調査ではなく、厚労省や文化省そして、各自治体のものを使用している点である。そこから何が見えてくるのかという分析とともに、今の日本には何がかけているのかという指摘にまでそれは至っている。

まず最初に、このデータを見て気がついたことがある。国や自治体はこのようなデータを得ていながら、国民はその数字やデータというのをあまり知らないということである。インターネットや役所などに行けばきちんと公表されている。しかし、それはあくまでも意識してそれを見に行かなければ届かない距離のように感じる。そもそも、どのような内容のものが統計として取得しているのかすらわからない。実際本書には東京都福祉局が、ひとり親世帯に生活保護制度利用の有無を調査しているが、「制度を知らない」という回答が年収100万円未満では7.8%となっている。しかし、「その他・無回答」は「制度できない理由がよく分からない」(つまり、申請はしたものの却下され、それ以後していない)というのが含まれているという。結果的にこれは「制度を知らない」のと同じであると著者は指摘している。また、全国の自治体に「就学援助に関する教職員向け説明会」を行ったかどうかを調査したところ(回答率60%)、「行っていない」という自治体が約70%にのぼっていることが分かる。これらからだけでも、いかに国民にデータや制度などをアナウンスしていないか分かるが、本書ではこれ以上に赤裸々な状況が綴られている。

また、第6章では、「母子家庭の母にとってのパートタイム労働」について取り上げられている。ここは、正直母子家庭だけの問題ではなく、パートタイム労働をしている家庭全てにあてはまる内容となっている。実際、私も今年、このパートタイム労働の年収においてとても腑に落ちない出来事に遭遇しあたふたしてしまった。本来ならセーフティーネットとなるはずの社会保障が、社会保障となっていないだけでなく、生活に不可欠な「収入」の足をひっぱり、更には生活保護からの脱出(自立)の機会すら奪ってしまう結果となっていることがここでは思い知らされることになる。

本書は昨年刊行されたということもあり、これまでない内容が一つ盛り込まれている。それが、第7章「災害と子どもの貧困」である。東日本大震災からまもなく3年が経つ。あの時その地域の避難所にとどまった人たちは、映像にてかなり映し出されたが、首都圏を避難の場所として移動した人たちの様子がここでは記されている。子どもを抱える家庭では首都圏の避難所で何が起こっていたのか、著者の言葉を借りれば「子どもの剥離状態」がそこにあったのである。「剥離状態」とは何かは本書を実際に手にして、理解してほしい。

日本は1994年「子どもの権利条約」に批准した。これは法的拘束力を持つ国際法として、国連加盟国が共有すべき原則、即ち国家や文化、時代背景に関係なく、人類社会に生まれたすべての子どもに適用されるべき原則が成文化されたものである。しかし、批准後3回の勧告を国連子ども権利委員会から受けている。著者は、子どもは「今」置かれた状況を大人になった時に「当たり前」と思ってしまう。だからこそ、「今」子ども達が置かれた状況を改善しないことには、次世代を担えないと伝えている。

先日、東京都知事が辞任した。5000万円をめぐる問題であった。その額は、給食費(1年間分)を支払えない子、約1250人分となる。この日本で給食だけが命綱の子もかなり多くいるのが現実である。つまり、この額で1250人の東京都の子どもが救えるのである。次回都知事になる人はこの人数の重みを考えて欲しい。
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