京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

『3・11を心に刻むブックガイド』

2014年02月18日 | KIMURAの読書ノート
『3・11を心に刻むブックガイド』(一般書)
草谷桂子 著 子どもの未来社 2013年11月

東日本大震災からまもなく3年を迎える。あの震災後、さまざま関連する図書が出版された。
それを1冊にまとめ、紹介しているのが本書である。

第1章 絵本で伝える3・11
第2章 児童文学からみる3・11
第3章 科学の本から3・11を検証する
第4章 マンガで読む3・11

章立てから子どもたちに伝えるための本を集めていることが分かる。
しかしそれはもちろん子どもだけのものではなく、大人が読んでも、いや大人が読むからこそ向き合える本が数々含まれている。
例えば、長谷川義史が描いた『東北んめえもんのうた』(佼成出版社 2012.03)は表紙からもページをめくってもおちゃらけた雰囲気のもつ絵本である。
しかし、背景の細部には東北ゆかりの宮沢賢治や柳田国男、伊達政宗、野口英世などの人物が描かれており、それがその人物だと理解するにはかなりの知識が必要であり、また彼らを描いた作者の意図と心のうちは大人でなければ理解するのは難しいであろう。
本書は決して子どものために「役立てる」というわけではないことをここに強調しておきたい。

本書の多くは震災後に関連本として新刊として刊行されたものというのは当然であるが、震災以前に出版されて、震災後に新たに復刊・重版となったものも含まれている。
つまり、震災とは関係のないところで、出版されたはずなのに、震災が起こり、改めて手にすると、震災後だからこそ、そこに本当の重要性に気がついたと言うわけである。
その中より2冊を引用しながら紹介する。

『うみねこいわてのたっきゅうびん』
(関根栄一・文 横溝栄一・絵 小峰書店 2012・05復刊)
うみねこに依頼された卵を、八戸から宮古まで運ぶことになったキツネのたっきゅうびん屋さん。卵はていねいに包装されて、三陸鉄道で運ばれます。道中で、いろいろな人間に化けたキツネが次々に飲み込み、タマゴはリレー方式で大切に目的地に運ばれます。1990年10月初版の本ですが、東日本大震災で被災した三陸鉄道復旧支援のために復刊されました。震災前の三陸リアス線の自然の美しさが味わえます。(p15)

『いのちの時間』
(ブライアン=メロニー・文 ロバート=イングペン・絵 藤井あけみ・訳 新教出版社 1998.11)
あとがきによると、訳者はヒューストンでチャイルド・ライフ・スペシャリストになるための研修を受けているとき、エイズ末期の五歳の男の子がこの絵本を読んでいる場面に出あい、リアルな生物たちの絵とタンタンとした語り口に圧倒されます。この絵本は、短い美しい詩と、ていねいに描かれた絵で、さまざまな動物たちの、それぞれの「いのちの時間」について静かに語りかけています。 ~中略~ 3・11以降重版されて、注目されている絵本としてご紹介しました。(p34)

本書1冊に紹介された本だけでは語りきれない震災。しかし、ここを再度起点にしてまだまだ終わりを迎えない震災について深く見据える必要があるだろう。 
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『子どもの貧困と教育機会の... | トップ | 蓮華寺の雪 »
最新の画像もっと見る

KIMURAの読書ノート」カテゴリの最新記事