目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

田部井夫妻の生き方が詰まった『てっぺん』

2017-07-31 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『てっぺん 我が妻・田部井淳子の生き方』田部井政伸(宝島社)

理想的な生き方のお手本を見せてくるそんな本。田部井淳子さんは、亡くなるまでやりたいことを、とことんやり抜いた。ガンに冒されたからといって、何の遠慮もない。執念の女性だ。講演の依頼も断らず、ラジオの出演もこなし、東日本大震災で被災した東北の高校生たちとともに富士山に登る。私はまだ亡くなる前のテレビ出演の記憶が生々しいせいか、いまだ死んだということが信じられない。

私以上に著者である旦那さんも同じことを書いていて、2階の寝室からリビングに下りてくると、まだ淳子さんの気配を感じるのだという。それが長年連れ添った夫婦というものなのだろう。

本の中で登場してくる回想で、最も印象深いのは、やはりエベレストの女性初登頂のときの話だ。家を不在にしたのは、半年以上。この当時では、主婦が子どもや亭主を放ってそんな長期間家を留守にするというのは考えられない時代だ。もしかしたら、今もそうなのかもしれないが。非常に理解のある政伸さん。お互いの夢の実現のためには、サポートをし合うという暗黙の了解があったようだ。こんな夫がいたからこその快挙でもある。

政伸さん自身も、結婚前にヨーロッパ3大北壁にチャレンジし、グランド・ジョラスとアイガーを完登している登山家だ。昔は、今以上にそんな山を目指すこと自体がハードルが高かった。お金をどうするか、会社勤めなら、長期の休暇をとらなければ実現不可能だ。ラッキーなことに、勤め先は、世界のホンダ。自由な社風で、そんなことは瑣末なこと、問題なしだったのはホンダらしい。

田部井夫妻の生き方は、山の神と私の理想の姿でもある。ちょっとでも近づけるように見習いたい。

てっぺん 我が妻・田部井淳子の生き方
田部井 政伸
宝島社
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