OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

クインシーの爽快ライブ盤

2008-12-22 12:01:19 | Jazz

Quincy Jones & His Orchestra At Newport '61 (Mercury)

クインシー・ジョーンズは既にして歴史に名を刻む、大衆音楽の大御所ですが、常にクールでヒップな音楽を追求するその姿勢は、単にシャリコマとは決めつけられないと、、私は思っています。

それはジャズやR&B、そしてポップスからフュージョンやブラコンに至るまで、その時代の最もカッコイイ音楽を作り出した現場主義の活動から、「良いとこ取り」の要領の良さも指摘されるところです。

しかし結局はクインシー・ジョーンズがやるから、カッコイイ音楽になったという逆説的な言い訳も至極当然じゃないでしょうか。つまりクインシー・ジョーンズが手を染めた音楽こそが、リアルタイムで最も勢いがあったジャンルだと思うのです。

さて、このアルバムはモダンジャズが最高にヒップだった1960年代初頭、実際にクインシー・ジョーンズが率いていたビックバンドによるライブ盤♪

録音は1961年7月3日、ニューポートジャズ祭のステージから、メンバーはリズム隊がパディ・ポウン(p)、レス・スパン(g,fl)、アート・デイビス(b)、スチュ・マーチン(ds) という、これも知名度よりは現場主義の実力者達! そしてブラス&リード陣にはジョー・ニューマン(tp)、ジミー・ノッティンガム(tp)、カーティス・フラー(tb)、ブリット・ウッドマン(tb)、メルバ・リストン(tb)、ジュリアス・ワトキンス(flh)、ジョー・ロペス(as)、フィル・ウッズ(as)、ジェローム・リチャードソン(ts,fl)、エリック・ディクソン(ts,fl)、パット・パリック(bs) 等々の超一流が参集した豪華なバンドになっています。

ちなみにこのオーケストラは、もちろんメンツは流動的ながら、1960年初頭から実際に欧州やアメリカ各地を2年ほど巡業していたのですから、纏まっていながら自然体に躍動するライブ演奏は流石の名演ばかりです。

A-1 Meet B.B.
 ジョー・ニューマンのミュートトランペットがジャズの楽しさを満喫させてくれる、素晴らしくグルーヴィな演奏です。
 ちなみにタイトルの「B.B.」とは、欧州をメインに活躍していた黒人トランペッターのベニー・ベイリーの事で、クインシー・ジョーンズは1958年にスウェーデンを訪れた時、地元のビックバンドにベニー・ベイリーをフィーチャーして、この曲を吹き込んでいます。
 しかし、それにしても、ここでのライブバージョンのタイトでワイルドな演奏は圧巻! ジョー・ニューマンのアドリブソロも、テーマメロディやバンドアンサンブルを巧みに活かしたキメが全く見事で、このあたりはアレンジ譜との兼ね合いから計算されつくしたものかもしれませんが、ここまで自然体で演じてしまうのは、やはりジョー・ニューマンがレギュラーを務めていたカウント・ベイシー楽団では得意技でしたし、またクインシー・ジョーンズも同楽団にアレンジを提供していたという因縁も味わい深いところです。

A-2 The Boy In The Tree
 クインシー・ジョーンズがスウェーデンの映画のために書いたサントラ音源からの実演で、恐らくはフィル・ウッズのアルトサックスと、誰かわからりませんが、情緒いっぱいのフルートが思わせぶりを演じる導入部からして、グッと惹きつけられます。
 そして一転、バンドはグイノリのグルーヴでガンガンに突進するアンサンブルに移り、ここでもジョー・ニューマンのトランペットが白熱のアドリブを聞かせてくれるんですから、気分がどこまでも高揚していきます。
 バンドメンバーや観客からも、そうした様子がダイレクトに伝わってくる、実に生々しい演奏だと思います。フィル・ウッズが我慢しきれずに絡んでくるあたり、またビシバシのやけっぱちドラムスも良い感じ♪

A-3 Evening In Paris
 あまりにも有名なクインシー・ジョーンズのオリジナル曲で、1953年にライオネル・ハンプトン楽団の一員として訪れたパリの印象から作られたメロディは、ハードボイルドな哀愁がたっぷり♪♪~♪ それをここではフィル・ウッズが激情のアルトサックスでじっくりと、そして熱く吹いてくれるんですから、もう、辛抱たらまん状態です。
 バックではフルート主体の彩やトロンボーンをメインとした膨らみのあるアンサンブルも素晴らしく、まさにクインシー・ジョーンズならでは分かり易い味わいが楽しめますよ。
 ちなみにこの曲は前述した1953年のパリ録音、そして1956年に制作したクインシー・ジョーンズのリーダー盤「This Is How I Feel About Jazz (ABC)」でも吹き込まれていますから、聴き比べも楽しいところだと思います。

A-4 Airmail Special
 ベニー・グッドマン楽団の十八番として有名な活劇的な曲を、ここではライブならではのアップテンポでホットな演奏にしています。
 それはカーティス・フラーの急速フレーズが冴えまくりのアドリブから、サックス陣が総出演のソロチェイス、そしてバンドアンサンブルがド迫力です。後半のサックスセクションによる合奏も血沸き肉踊る物凄さですよっ♪♪~♪ クインシー・ジョーンズの指揮と手拍子、掛け声もノリノリで、楽しい限り♪♪~♪
 ちなみにアレンジはアル・コーンですが、これも丸っきり「クインシーの世界」でしょうね。楽しくなければジャズじゃない!?

B-1 Lester Leaps In
 ジャズのテナーサックス奏者の中でも、特に偉大なレスター・ヤングの代表的なオリジナルで、アレンジはアーニー・ウィルキンスですから、躍動的な楽しさは期待を裏切りません。
 今や定番となったリフから続くアドリブパートは、レス・スパンのギターがリードしていきますが、その、ちょいと地味なスタイルも、真空管アンプの如何にもという響きが実に心地良く、聴くほどに味わいが増していきます。リズム隊では他にも、パティ・ボウンのピアノが、そこはかとなくファンキーしていますね♪♪~♪。
 そして続くアンサンブルパートは、明らかにレスター・ヤングが残したアドリブフレーズを再現したものでしょう。そこからエリック・ディクソンが熱血に咆哮するテナーサックスのアドリブに入っていくあたりも、ジャズの楽しさです。

B-2 G'won Train
 このバンドのレギュラーピアニストだったパティ・ポウンが書いたファンキーな隠れ名曲で、フレンチホルンがリードする導入部からマーチビートのテーマメロディに入るという、実に鮮やかなアレンジが秀逸です。
 もちろん作者のパティ・ボウンはファンキーな伴奏で冴えまくりの活躍♪ この人は女性ですが、なかなか侮れませんよ。クインシー・ジョーンズの人選の妙が華やかに証明されたと思います。
 気になるアドリブパートは、ジュリアス・ワトキンスのフレンチホルン、そしてフィル・ウッズのアルトサックスがハードバップど真ん中! バックの力強いアンサンブルも実にファンキーしています。

B-3 Banja Luka
 ちょっと意味不明の曲タイトルは、フィル・ウッズがこのオーケストラで訪れたユーゴスラピアの印象から作ったものだと、原盤裏ジャケの解説にありました。
 しかし、その曲調はハードボイルドな劇伴サントラのようなサスペンス溢れるハードバップで、ジェローム・リチャードソンの正統派テナーサックスとカーティス・フラーのハスキー&ソウルフルなトロンボーンが優良のアドリブですし、気になるパティ・ボウンのピアノはグルーヴィ♪♪~♪ バンドアンサンブルもシンプルながら、メリハリが効いた爽快なノリです。 ただし録音の状態からピアノが引っこんでいるのは残念……。

ということで、なかなかの熱演ライブ盤です。

しかしクインシー・ジョーンズは、この直後にバンドを解散させ、自身はマーキュリーのプロデューサーとしてスタジオの仕事を中心にしていくのです。

その理由は経済的な部分も含めたバンド経営の難しさに加え、大衆音楽の人気がモダンジャズからポップスやR&Bへと移り変わったことにもあるのではないでしょうか? もちろんクインシー・ジョーンズは以降、ポップスではレスリー・ゴーアをブレイクさせ、また自身名義のオーケストラ作品はスタジオミュージシャンを駆使したヒット作を出していきます。また映画音楽の仕事でも素晴らしい成果を残しています。

ですから、このライブ盤はモダンジャズが最高にヒップだった時期のリアルな記録としても楽しめると思います。実際、ここでの爽快な演奏には、聴く度にKOされますねぇ~♪

ちなみに前述のように、録音バランスからピアノの音が小さいのは減点ながら、なかなかシャープな全体のミックス、パンチのある音作りは秀逸で、掲載はモノラル盤ですが、ステレオ盤も捨て難い魅力があると感じます。そしてCDになると、さらにクリアな音質となったリマスターが良い感じ♪

クインシー・ジョーンズのモダンジャズ時代を堪能出来る、実にカッコイイ、名作ライブ盤です。そしてこれが、「クインシーのモダンジャズ決別宣言」とは、決して思いたくありません。

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