OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

壱萬参千円のO.V.ライト

2009-06-22 11:23:06 | Soul

O.V.BOX / O.V.Wright (Back Beat / Pヴァイン)

いきなり壱萬参千円というシールに目が痛い!

しかし、このボックスには、それだけの価値が十分にあります!

というのが本日の結論です。

主役の O.V.ライトは南部系R&B、所謂サザンソウルの黒人歌手で、少年時代はゴスペルグループで歌い、1964年に俗世のシンガーとしてデビューしていますが、特に大きなヒットは出していません。というか、デビュー曲だった「That's How Strong My Love Is (Gold Wax)」にしてもオーテイス・レディングがカバーしたバージョンのほうが売れてしまったという不運もありました。

しかし、その実力は些かも劣るものではありません。

ただ、本人がマイナーレーベルに所属していた事に加え、悪いクスリでの懲役暮らしとか不摂生な生活というプライベートな問題が、その活動に影響していたと言われています。

そしてサイケおやじがこの素晴らしい歌手を知ったのは昭和53(1978)年で、なんと我が国で全盛期のLPアルバムが一気に5枚ほど発売されたのです。

私はアレサ・フランクリンやオーティス・レディングといったゴスペルルーツのソウルミュージックが大好きということは、これまで度々述べてきましたが、さりとて日本で聴けるサザンソウルのレコードは極めて少ないのが実情でした。

というのも、当時の黒人音楽の主流はオーティス・レディングの早世がきっかけになったかのように、ジェームス・ブラウンはファンク街道まっしぐらでしたし、アレサ・フランクリンにしてもロック風味が強くなり、またスライ・ストーンあたりの新興勢力に加えてモータウン一派にしても、所謂ニューソウルに突き進んでいたのです。

そしてサザンソウルは過去の遺物に転落したわけですが、どっこい、黒人音楽好きには、そのヒューマンな味わい、苦悩と涙と熱血を強く滲ませるボーカルやコーラスの魅力が忘れられられず、ですからマイナーな歌手やグループが掘り起こされるのは必然でした。

もちろんマニアの皆様には説明不要の O.V.ライトにしても、いきなり日本でブレイクしたのが夢のような出来事だったと思いますし、実際、サイケおやじが初めて聴いたアルバム「A Nickel And Nail And Ace Of Spades (Back Beat)」には、完全に後頭部を殴られたような衝撃がありました。

これは1972年に発売されたとする、今や黒人音楽の輝ける遺産ともいうべき大名盤ですが、それにしてもニューソウル全盛期のリアルタイムに、こんなハートウォームで深い魅力が横溢した黒人R&Bのボーカル作品があること自体、それは奇蹟としか言えません。

早速、私が O.V.ライトのレコードを集め始めたのも、また必然でした。

さて、本日ご紹介のボックスは、O.V.ライトのデビュー期から1976年ぐらいまでの録音を集大成した優れモノ♪♪~♪ CD5枚組で、しかもそれぞれが紙ジャケット仕様に加えて、貴重なボーナストラックも満載です。

 8 Man And 4 Women
 Nuckeus Of Soul
 A Nickel And Nail And Ace Of Spades
 Memphis Unlimited
 Treasured Moments - 45's Special Collection

収録は上記の5枚で、最後の「Treasured Moments」は日本編集の貴重演奏集♪♪~♪ まず、これが抜群に最高ですよっ! なにしろデビューシングルの「That's How Strong My Love Is」と、そのB面だった「There Goes My Used To Be」が聴けるだけで、壱萬参千円の価値があると断言します。なにせ、このオリジナルシングル盤の価格は天井知らず、ですからねぇ~。

実はこのボックス、今から20年ほど前にも我が国独占で発売されていますが、その時には前述の2曲が入っていませんでした。

ちなみにサイケおやじは、もちろんそのボックスは買っています。しかしアメリカの某コレクター氏からどうしても譲って欲しいと懇願され、カーティス・フラーの幻盤「ボーン・アンド・バリ (Blue Note)」のオリジナルと交換したという、実に夢のような出来事がありました。というのも、こんな再発は日本では何時でも買えるという気持ちがあったんですねぇ。

ところが現実は厳しく、そのボックスにしてもアッという間に完売しており、その後の再発状況にしても、単品アルバムすら、きちんと出ないのです。これには愕然とさせられました……。

そして昨日、出張帰りに立ち寄ったCD屋に鎮座していた、このボックスを発見! 勇んでゲットしてきたというわけです。

肝心の中身は前述の紙ジャケット仕様CDアルバムが5枚に外&内箱も凝った作りになっていますし、シングル発売だけでアルバム未収録の曲もがっちり纏めてあります。また別テイクや因縁付きのトラックも、親切な付属解説書がありますから、尚更に楽しめると思います。

気になるリマスターも素晴らしく、実は前回のボックスはCD移行初期段階ということもあって、些か物足りなかった音質が、今回は見事にディープソウルの魅力をストレートに伝えてくれると感じます。

個人的には、まずお宝集の「Treasured Moments」に夢中ですね。前述したデビューシングルの両面2曲を筆頭に、ヘヴィなブルースの「Fed Up With The Blues」、熱気が迸る「Treasured Moments」、思わずノケ反る「Heartaches, Heartaches」の泣き落とし、ガサツなグルーヴと魂のボーカルが心に響く「What About You」、そしてガツンガツンに突っ込んでいく「What Did You Tell This Girl Of Mine」と続く、ド頭からの7連発で完全に悶絶されられますよ。

これらは何れも1967年に世に出た名曲・熱唱ですが、その力強くて、しなやかなバックの演奏は、おそらくロイアル・レコーディング・スタジオの所謂ハイ・リズム・セクションがメインで担当しているものと思われます。当然、管楽器はメンフィス・ホーンですよね♪♪~♪

あぁ、何度聴いても最高です!

また、その他の4枚にしても、アナログ盤時代からお馴染みのアルバムになっていますが、特に前述した「A Nickel And Nail And Ace Of Spades」は、ウルトラ級の大名盤だと思いますし、さらに滋味あふれる表現に徹した「Memphis Unlimited」も、やはり手元に置きたい名作でしょう。

ちなみに「8 Man And 4 Women」は2作目のアルバムとされていますが、オリジナル原盤はデビューアルバムの「Only For Tonight」と収録曲の重複があったらしく、ここではそれを上手く併せた編集にしてあるそうです。

そして「Nuckeus Of Soul」はシングル曲中心のプログラムゆえに、ボーナストラックも充実♪♪~♪ 個人的には、O.V.ライトの調子も含めて、些かバラケタ雰囲気に感じられますが、やはり聴く度にシビレるのは必定!

ということで、ジャケットの作りも嬉しいですし、リマスターも秀逸ですから、黒人音楽好きの皆様には、ぜひともゲットしていただきたい逸品です。

最後になりましたが、O.V.ライトは昭和54(1979)年に来日公演があり、私は行けなかったことを今でも悔やんでいます。なんと、翌年には41歳の若さで天国へと召されたのですから……。

そして私は、今朝もこの箱を拝んでいるのでした。

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