■The Who Live At Leeds (Track)
ライプアルバムにはジャズもロックもR&Bも、とにかく分野を問わない魅力があって、選曲の妙にはベスト盤的な趣向があったり、あるいは全くの新曲だけで構成された意欲的な作品、はたまた契約履行の成り行きで作られてしまった云々、とにかく話題性が尽きません。
もちろんそこには録音の良し悪しも含めて、演じる側の事情がリアルに封じ込められているのがファンにとってはお目当てですから、中途半端は許されないのです。
極言すれば、海賊盤まがいの劣悪な録音でも、中身のパフォーマンスが素晴らしければ全てが良い方向に作用しますから、ブート業者にとっては決定的な大義名分であり、またオフィシャルレコード会社側にすれば、切り札的な意味合いがあると思われます。
さて、本日の1枚は、そうした様々な思惑が見事に一致した奇蹟の名盤といって過言ではありません。
まず演じているザ・フーにとっては、世界有数のライプバンドとしての実直な姿を記録した成果であり、それに接することの出来ないファンにとっては溜飲が下がると言うよりも、初めて真実に触れたような幸せな気分にさせられる、まさにザ・フーの魔法にどっぷり♪♪~♪
しかもジャケットからもご推察のように、その体裁が当時の海賊盤を強く想起させるデザインというのも洒落が利いています。
A-1 Young Man Blues
A-2 Substitute / 恋のピンチヒッター
A-3 Summertime Blues
A-4 Shaking All Over
B-1 My Generation
B-2 Magic Bus
これまでも度々書いてきたように、サイケおやじは少年時代からザ・フーが大好きでしたが、それはラジオの洋楽番組か、乏しい小遣いの中でようやく買っていたシングル盤で楽しむのが精いっぱいでした。
しかしそうした音楽マスコミによれば、ザ・フーのライプステージは他のバンドや歌手の誰よりも凄い!?! そういう情報があったのです。そして今や伝説の若者向けテレビワイドショウ「ヤング720」で流されたザ・フーのライプフィルムからは、それが真実だと直感されましたですねぇ~。
ちなみにその映像は、これまた伝説となっている1967年のモンタレーポップフェスティバルのライプから、映画として記録されている場面のさらなるダイジェストだったんですが、ドラムセットはひっくり返す! ギターやアンプはぶっ壊す! それでいて演奏はカチッと纏まった轟音系! という当時の我国GSには絶対ありえない世界でした。しかもレコードで楽しめるザ・フーの類稀なるポップス性とは完全に異なる印象だったのです。
う~ん、凄いステージとは、これだったのか!?
と思わず震えたサイケおやじではありましたが、さりとて現在と違ってビデオやDVDがありませんでしたから、唯一の望みはライプアルバムなんですが、ザ・フーの場合はそれも出ていませんでした。
そして満を持して昭和45(1970)年に発売されたのが、この「狂熱のステージ」と邦題が付いたライプ盤! サイケおやじにとっては、初めて買ったザ・フーのLPでもありましたから、その感激は更に大きいとはいえ、まずはA面ド頭「Young Man Blues」からして衝撃的なギターのキメ、炸裂するドラムスとハードにドライヴするベースの暴れが圧巻でした。
もう、ほとんど各人が好き勝手にやっている感じの中、なんとか曲を纏めているのがロジャー・ダルトリーの歌いっぷりという有様なんですよねぇ。しかしブレイクを多用した演奏が少しずつ形を整えていくにつれ、カッコ良すぎるピート・タウンゼントのギターは痛快だし、大蛇のウネリのようなジョン・エントウィッスルのペースとキース・ムーンの乱れ打ちドラムスが最高のロックビートを提供してくれますから、血が騒ぎます。
このあたりの遣り口は、ボーカルのシャウトの仕方も含めて、レッド・ツェッペリンと似ているんですが、もちろんザ・フーが本家! またイエスも、このあたりを真似ながらプログレに進化した真相も含まれています。
それは極めてポップな「恋のピンチヒッター」を、こんなドカドカ煩いハードロックで演じてしまうという暴挙にも明らかでしょう。キメのコーラスワークの素晴らしさは唯一無二ですよ。
また、そうしたR&Rがど真ん中の本質は、エディ・コクランの「Summertime Blues」とジョニー・キッドの「Shaking All Over」という、爆裂カバーバージョンに引き継がれ、本物のハードロック桃源郷を現出させるのです。
ご存じのように、この2曲はシングルカットされ、恐らくは我国でのザ・フーの最大のヒットになったほど、リアルタイムのラジオからは流れまくりでしたよ♪♪~♪ とにかく熱いです!
しかし更にヤバイのがB面の大熱演で、「My Generation」は説明不要のロックアンセムですが、激しいハードロックに徹しながら、中間部には例のロックオペラ「トミー」からの抜粋もハイライト的に混ぜ込んで、劇的に演奏を構成していく15分近い大熱演!
さらにこれもザ・フーのテーマ曲のひとつである「Magic Bus」が、例えばボ・ディドリーが専売特許の土人のビートを使っているというバンド自らのネタばらしで大団円♪♪~♪
というように、とにかく暴虐のロックライブとしては最右翼の1枚なんですが、その音作りも、当時の他のミュージシャンが出していたライプ盤と比べて、実に強い印象を残します。それはおそらく8トラック程度のアナログテープ録音のはずなんですが、各楽器とボーカル&コーラスの存在感が素晴らしく、それでいて団子状に迫ってくるエネルギーが最高!
まあ、欲を言えば、もう少し観客の拍手歓声が大きく入っていれば……、と思います。
で、この名盤を作るにあたっては、1968年頃から計画があって、絶え間ない巡業の幾つかが実際に録音されていたそうです。ところがバンド側が、常に納得していないというか、それだけ当時のザ・フーが日進月歩の上昇期だった証なんでしょうが、中にはテストプレス盤まで作られてオクラ入りした音源もあるほどです。
幸いなことに、それらの一部はプートとして流出し、聴くことが出来ますが、それゆえに公式ライプ盤のジャケットがブートを模したという結果も泣き笑いかもしれません。
そして結局、本物の需要に迫られたバンド側が、ついに意を決して1970年2月14日、イギリスのリーズ大学でライプ録音を敢行! それを編集したのが、このアルバムというわけです。
もちろん当然ながら、ここに収められているのは、その音源の中の抜粋に過ぎません。
実際のステージでは、当時のザ・フーのウリだったロックオペラ「トミー」の全曲演奏、そしてヒット曲の数々が披露されていたのです。
そしてファンにとっては待望というか、まず1995年にCDリマスターの一環として拡大された14曲入り盤が登場♪♪~♪ さらに近年になって、ついに完全版としてCD2枚組のデラックスエディションが登場していますが、実はそれすらも不完全という真相はさておき、音質のリアルな追及によって、さらに楽しめるようになりました。
しかし、やっぱり最初に熱狂した、このアナログ盤の味わいは格別というのが、当時からのファンの気持じゃないでしょうか。それはザ・フーという稀代のロックバンドが、リアルタイムで示した意気地であり、これをもって次なる高みへと躍進する決意表明をファンが素直に受け止めたことによると思います。
ちなみにザ・フーは、このアルバムの前に今では歴史のロックオペラ「トミー」という2枚組のアナログ盤LPを出していたのですが、当然ながらサイケおやじはリアルタイムでは聴くことが叶わず……。
ですからザ・フーの深淵な企みには、些か乗り遅れたのかもしれませんが、後追いで聴いた時の肩すかしと以降の味わいの深さは、やはりこの「狂熱のステージ」を聴いていればこそだったなぁ、と今は思っているのでした。
『TOMMY』がすこぶる高い評価でしたが、やはりライヴの強みとでもいいましょうか、「SUMMERTIME BLUES」のヒットと相まって、ザ・フーがロック界の中心に躍り出た感がありましたね。
当時、ジャケの素っ気なさに購入を見送りましたが、拡大版CDでこのライヴ盤を堪能しました。しかし収録曲が多すぎて、やはりアナログでのオリジナルフォーマットに収録の6曲がちょうどいいボリュームかな、と思ってしまいました。
厳選された6曲だったんでしょうね。
あとから元々そういうものだと知るのでした(苦笑)
これを完全収録したブートも全編にノイズが入っていたのですが、デラックスエディションではそれが消えていた!
でも曲順がセットリスト通りでないというもどかしさ(笑)
世間での人気とか評価とかには大分差がありますけどね、実際の差というものはほとんど無いです(断言)
ま、"差"ってなんの?という話しですが。
コメント感謝です。
これ以前のライブアルバムって、ペンチャーズの「イン・ジャパン」を別格とすれば、ロクなもんが無かったような……。ブライアン期のストーズのライブ盤もイマイチ、作り物っぽくて……。
ザ・フーはこの後、「無法の世界」のシングル出して、さらに「フーズ・ネクスト」で大躍進! このあたりが全盛期だったと思いますよ。
1枚物アルバム、万歳っ!
コメント、感謝です。
このアルバムのノイズに関しては賛否両論だと思うんですよ。私としては容認派(笑)。
曲順も実際には「トミー」が中盤にあって、後半のバカノリ大会が尚更に熱くなるのが真実でしょうね。おそらく新メディアでの再発は、ブッ通しバージョンになるんじゃないでしょうか。
コメント、感謝です。
業界は売るために差別化を図らないと生き残れない!? と、考えているんでしょうね。
いずれのバンドも音楽的な変遷と人間関係の縺れがあるんですが、やっていることは自分達の好きなことだと思います。それが時には金儲け優先だとしても、です。
まあ、「差」を見つけて喜ぶのも、ファンの宿業かもしれせんね。