OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

凝縮されたエリック・クラプトンへの憧れ

2012-06-17 15:28:58 | Rock

Eric Clapton (Atoc)

未だ評価の定まらないというか、好き嫌いが賛否両論を左右するような存在感こそ、エリック・クラプトンの最初のリーダーアルバムに相応しい!

と、本日もいきなりの独断と偏見の書き出しではありますが、少なくともサイケおやじにとっては、ちょうど高校生となり、ついにエレキギターを手にした頃の憧れがぎっしりと詰まった愛聴盤なのです。

 A-1 Slunky
 A-2 Bad Boy
 A-3 Lonesome And A Long Way From Home
 A-4 After Midnight
 A-5 Easy Now
 A-6 Blues Power
 B-1 Bottle Of Red Wine
 B-2 Lovin' You, Lovin' Me
 B-3 I've Told You For The Last Time
 B-4 Don't Know Why
 B-5 Let It Rain

もちろん、皆様もご存じのとおり、このアルバムがリアルタイムで世に出た1970年、その評判は決して芳しいものでは無く、特に世界中のファンが望んでいたギターの神様としての威厳威光も何処へやら……。

皆が期待する、あのクリーム時代の狂熱的なギターソロや鋭いリフがほとんど無いに等しいという噂はそのとおりですし、何よりも今日では「スワンプロック」と認識されているスタイルの先駆けにしても、当時は中途半端なブルースロックの変形???

なぁ~んていう情報が先入観念になっていたんですよっ!

おまけにその頃は未知数だったエリック・クラプトンのボーカリストとしての力量にも疑問符が打ち消せず、また、これ以前に例のブラインド・フェィスでの些かのヘタレもマイナスに作用していました。

ところがレコード屋の壁に堂々の新譜として飾られている、実に雰囲気満点のレコード現物、そのジャケ写にギター共々登場しているエリック・クラプトンの落ち着いた佇まいは、十代だったサイケおやじには、まさに神様!

なにか昔の絵画に描かれているキリストの如き神々しささえ、感じられたですねぇ。

しかも後に「ブラウニー」と呼ばれていた事を知る、神様に寄り添うギターへの憧れも強かったわけです。

あぁ~~、聴きたいなぁ~、欲しいなぁ~、このLPがっ!

心底、そう思いつめるサイケおやじに非情だったのは、もちろん当時の個人的経済状況の厳しさであり、さらに前述したような悪評(?)が優先していては、サイケおやじの周辺に誰一人、このアルバムを所有しているどころから、しっかり聴いた者さえいない始末……。

そんなこんなの、ど~にもならない欲望が高じていたわけですから、高校入学時に速攻で入会させてもらった所謂ケイオンのバンド組のアンケートにあった「聴きたいレコード」という回答欄に、「エリック・クラプトンのソロアルバム」と書いてしまったのは、あながち若気の至りではありません。

すると一途な思いは必ず通じるわけで、それからしばらく後、先輩が調達貸与してくれのがアメリカ盤ではありましたが、切望していた件のブツ♪♪~♪

いゃ~、それを手渡された時の高揚感は、今も忘れていませんし、実際、自宅でそれに針を落す瞬間のワクワクドキドキした気分は、大袈裟ではなく、人生の大切な宝物になっているほどです。

しかし同時に先輩が、「つまんねぇ~から、あんまし、期待すんなよ」と忠告してくれた一言は、既に刷り込まれていた前述の評判を裏書きされたようで、些か悪い予感もあった事は否めません。

そして……!?

まず、ド頭の「Slunky」が如何にも途中でミスって止めました……、的なR&B風のテナーサックスがメインという短いインストで、エリック・クラプトンのギターにしても、バリバリ弾きまくるというよりは、合の手中心主義???

なんだぁ~~、これっ!?

う~ん、悪い噂は、本当だったのかぁ~~~!?

というのが、その瞬間の偽らざる告白です。

ところが聴き進んでいくうちに、本質的にはR&Bが好みというサイケおやじの趣味嗜好に合っていたのでしょう、アルバム全体から放たれる粘っこいピート感、あるいは当時はその正体を知る由も無かった所謂ゴスペルフィーリングや南部ソウルサウンドの熱気等々が、グリグリに迫ってきたんですねぇ~♪

そこでまず最初にシビれたのが、A面ラストのカッコE~ロッキンソウル「Blues Power」で、思わせぶりなイントロから一転、どっしりと粘っこいリズムパターンに煽られるように力んで歌うエリック・クラプトン! その現実だけで、何か血沸き肉躍る衝動が溢れてくるんですが、加えて鋭いギターによるオカズはブルースロックを凝縮したかの如きテンションの高さだと痛感させられましたですねぇ~♪

またB面初っ端の「Bottle Of Red Wine」が、これまたシャップルビートでノリノリのブルースロックでありながら、明らかにブリティッシュでは無い、ソウルっぽいグルーヴが実に新鮮でしたし、もちろんギターソロも最高の極みですっ!

しかも、前評判では懸念されていたエリック・クラプトンのボーカルにしても、そんなに酷くは無いよなぁ~~、という印象ですから、後は自ずと素直に聴けてしまったのが本音です。

中でも特にソウルっぽい「Bad Boy」や「Don't Know Why」における堂々とした感じは、もしかしたら居直りかもしれませんが、決して卑屈ではないと思いますし、絶対の自信を持っているはずのギターが案外とさりげない分だけ、尚更に惹きつけられるんですよ♪♪~♪

また、このアルバムでは共に演奏を作り上げている助っ人の存在感も非常に強く感じられ、特にブラインド・フェィスのアメリカ巡業では前座をやっていたデラニー&ポニー、そのバックバンドのメンバーだったカール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ボビー・ホイットロック(key) という、まさに後のデレク&ドミノスのレギュラー陣はもちろん、ボビー・キーズ(ts)、レオン・ラッセル(p,g)、リタ・クーリッジ(vo) 等々、所謂スワンプロックの立役者が挙って参加しており、裏ジャケットに掲載の集合写真も壮観の一言!

ただし、今では歴史になっているそうした美しき流れの証明作になったライプ盤「デラニー&ポニー&フレンズ・オン・ツアー」は、もちろんサイケおやじがこのエリック・クラプトンの初リーダーアルバムを聴けた時点で既に我国でも発売されていたんですが、リアルタイムでは書いているような客観的なポイントは全然掴めておらず、正直に告白すれば、ギターの神様が長いアドリブソロをやってくれないのは、バックがニューロックでは無いからだっ!?

なぁ~んて、マジでピントがズレまくった解釈をしていたんですから、お笑い下さいませ。

ちなみに収録曲は「After Midnight」と「Lovin' You, Lovin' Me」除いて、エリック・クラプトン本人がレオン・ラッセル、あるいはデラニー・ブラムレットと共作した事になっていますが、そのデラニー・プラムレットが意図的にクレジットを当時の妻だったポニー名義にしているあたりは、後の離婚騒動を思えば意味深でしょうか?

しかし、まあ、それはそれとして、オリジナル楽曲の質は決して低くありません。

特に今や「クラプトン・クラシックス」のひとつになっている「Let It Rain」は、如何にもブリティッシュなバンドアレンジや素晴らしいギターソロも含めて、全く何時までも聴いていたい名曲名演だと思います。

それと、完全に「らくしない」アコースティックギターをメインに歌われる「Easy Now」が、これは親友のジョージ・ハリスンからプレゼントされた? と思わざるをえない胸キュンフィーリングがたまりません。なにしろ歌い方そのものがジョージ節になっているんですからねぇ~、憎めませんよ♪♪~♪

その意味で「Easy Now」をB面に、このアルバムからシングルカットされた「After Midnight」は、今や有名人となったJ.J.ケイルの作品というのも、なかなか深淵な企画のような思えますが、ここでのスピードのついた演奏は、そのゴスペル風味を提供するコーラス隊の存在も抜群のスパイスとなって、明らかに新しいエリック・クラプトンがお披露目されています。

ただし、そうした部分がすんなりとファンに受け入れらなかったのは事実であり、極言すれば、背信行為!?

結局のところ当時、こういう音楽を素直に聴けたのは、案外とソウルファンだったのかもしれませんし、少なくとも往年のクリームの夢よ、もう一度と期待する正統派ロック好きには不完全燃焼だったという気持は、サイケおやじにも納得されました。

それは既に述べた先輩からの「つまんねぇから」云々が、真に正鵠を得ていたわけで、実は相当に気に入ってしまった自分の本音なんか、これで正しいのか?

という自問自答に繋がったわけですが……。

今となっては信じてもらえそうもない真相のひとつとして、決定的な傑作名盤「レイラ」が、リアルタイムの我国では、それほど評判にもならず、売れ行きもイマイチだった事実は軽くないでしょう。

多分、それは後追い、あるいは再発見として、デュアン・オールマンが在籍していたオールマンズの人気沸騰、さらにはデュアン・オールマンの突然の訃報があって以降の「レイラ」神話誕生かと思うばかりです。

最後になりましたが、サイケおやじがデラニー&ポニーの「オン・ツアー」に夢中になったのは、このアルバムが好きになっていた下地があったからだと自覚しております。

そしてもちろん、相互作用としての両者愛聴盤化も必要十分条件! あえてバーゲンではありましたが、輸入のアメリカ盤を買ってしまったのも、最初の印象を大切にしたいがゆえの事!

しかし、今でも達せられないのは、ジャケ写に登場しているブラウニー=サンバーストのフェンダー・ストラトキャスターを入手する夢で、これは死ぬまでにはなんとかしたいという、人生の目標のひとつになっています。

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8 コメント

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Unknown (TK)
2012-06-17 17:35:05
ECはこの時期から70年代のレイドバック時期までが好きです。
評判の悪いレインボーコンサートも大好き。
80年代以降のものは残念ながら興味持てません。
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生クラプトン (サイケおやじ)
2012-06-18 10:08:27
☆TK様
コメント、ありがとうございます。

レインボーコンサート、実は最高じゃ~ないかっ!? そう、思っていますので♪
クラプトンのレイドバック期、本音はユルフンムードのスタジオ盤よりも、ライブ音源が好きですねぇ~♪ 疑似レゲエも、それなら許せます(笑)。

あとデジタルサウンドに埋もれたクラプトンは惨めですが、映像作品の「24ナイツ」は、何気なく見ているうちに惹きつけられてしまう、流石のギターソロは強烈!

まあ、例のアンプラグドは、ふっふっふっ。
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EC (トモアキーニ)
2012-06-18 21:03:11
以前から興味はあったのですが、僕はこのレコードは30代になってから買いました。
それでも熱心に聴いたわけではないのですが、彼のアルバムでは好きな1枚です。
他は「レイラ」「安息の地を求めて」です。

「レイラ」はタイトル曲があまりにも有名で、僕自身はちょっと聴く気にはなりませんが、「レイラ」を除いた他の楽曲はスワンプロックの到達点では?と思っています。
もちろんデュアンの参加による効果もありますが、それらをひっくるめてやはり傑作かなぁと。

でも一番シビレタのは、「レイラ」には収録されず、デュアンの「アンソロジー」の方に収録された「ミーン・オールド・ワールド」(だっけ?)という、ECとデュアンのスライドギター炸裂のナンバーです。

「ミーン~」はその後「レイラ・セッションズ」に収録されたのでしょうか?
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レイラに向かう道 (サイケおやじ)
2012-06-19 14:34:17
☆トモアキーニ様
コメントありがとうございます。

多くのファンが「レイラ」に向かってしまうのは必然だと思いますよ。
サイケおやじにしても、「レイラ」のアルバム本篇はもちろん、アウトテイクも全て凄いと思っていますし、曲単位では「恋は悲しきもの」が一番好きではありますが、ドミノスの連中がエリック・クラプトンを盛り立てている様子が、最高の聴きどころと思うほどです。

ご指摘の「Mean Old World」は、他に2テイクが公式で発表されていて、やはり3テイク全てが捨てがたい魅力でしょうねぇ~♪

本当にこの時期のスワンプロックは唯一無二でした。
返信する
ストラトのハーフトーン (アンディP)
2012-06-23 11:11:14
影響力絶大のクラプトン氏が、レスポールのディストーション・サウンドに続いて広めたのが、このアルバムで多用される、ストラトキャスターによる所謂「ハーフトーン」。良く言えば「繊細でベルのような音」、悪く言えば「か細い音」で、その点でも、旧来のファンから拒否反応を喰らったのではないでしょうか。(リアルタイムで知らないので、あくまで想像)。
ハーフトーンでシャッフルを演奏するこんな映像がありました。
http://www.youtube.com/watch?v=5ZBeerUD-zc
時代は下って81年、ギターはブラッキーに代わってますが、相変わらずオーソドックスで手堅い演奏を聞かせてます。(もう一人の巨匠はやりたい放題状態)。
今は、同じストラトでも、トーンが変わっていると思います。ク氏の好みの変化でしょうか。
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ストラトキャスター (サイケおやじ)
2012-06-23 15:48:58
☆アンディP様
コメント&ご紹介、感謝です。

あくまでも個人的な推察ではありますが、クラプトンがレスポールからストラトキャスターに変えたのは、ジミヘンからの影響かもしれませんよ。レスポールよりもシャープでロックっぽい音を求めたんじゃないでしょうか?
ハイポジションの弾きやすさも言われていますが、クラプトンの場合、4~7フレットあたりでフレーズを作ることが多いので、どうでしょうかねぇ~。

ご指摘のハーフトーンは、まさに3ウェイピックアップならではの裏ワザで、最初は具体的に分からなかったんですが、プロは流石に洞察力が鋭い証ですね。

あとご紹介の映像、懐かしのシークレットポリスマンで、これはビデオ持ってますが、現在自室で行方不明なんで、感涙しましたよ♪

まあ、ペック先生の前ではクラプトンの苦笑いも「絵」なっていますから(笑)。
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謎の微苦笑 (アンディP)
2012-06-24 18:12:18
先輩のおっしゃるとおり。EC氏がストラトに持ち替えたのは、ジミヘンの影響でしょう。アフロヘアまで真似てたくらいですから。
ジミがストラト・メインになったのは、トレモロ・アームが奏法上、欠かせないものになったからではないでしょうか。音的にはストラト+マーシャルで、芯の抜けた様な所謂「ストロー・サウンド」がトレードマークになってましたね。
同じストラト使用でも、結果的にEC氏の方は、ジミヘンとは随分違ったサウンドへのアプローチを行ったものと思えます。個人的には、渋い哀愁路線への切り替えと感じておりますが、如何でしょうか。
それにしても「シークレット・ポリスマンズ」でのEC氏の微苦笑は何を意味しているのでしょうか。「参ったな~。少しは俺の立場も考えてくれよ」といったところでしょうか。
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ジミヘン奏法 (サイケおやじ)
2012-06-25 07:40:30
☆アンディP様
コメントありがとうございます。

なんか久々にギターに熱くなりそうですよ♪

ご指摘のとおり、ジミヘンがジミヘンになれるところにトレモロアーム在り! だと思いますよ、私も。
以下はあくまでも個人的な推測なんですが、おそらくジミヘンは常にアンプのボリュームは最大で、ギターの側で様々なコントロールをやっていたんじゃ~ないでしょうか?
左利きで右利き用のギターを使い、弦を張り替えているんで、トーン&ボリュームがピックアップの上にある位置という利点(?)を活かせたんですよねぇ~、多分。
あと、チューニングがジミヘンの場合は普通よりも低いんですが、これはチョーキングを派手にやらかすためでしょう。必殺技のひとつであったハンマリングとトレモロアームのコンビネーションも、それゆえに凄みもあったという解釈をしております。

いゃ~、ジミヘンのギターの秘密は全く何時までも普遍です♪

最後になりましたが、ペック先生は唯我独尊が決定的個性で、誰も咎めることの出来ない境地ですから、クラプトンも「こいつは変わんないなぁ~」ってところかと(笑)。
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