仕事は堅実が一番ですが、たまにはギャブル的様相になる事がありますよね。
本日は、ちょっと姑息かなぁ……、と思いつつ、賭けに出て上手く行き過ぎた仕事の成果が! あぁ、後が恐いという感じに……。
まあ、上手くいけば、それで良しとする他はありませんね。
ということで、これでも聴きますか。今日は気分が良いので、ジャケ写を大きく掲載してみました――
■Stretching Out / Zoot Sims - Bob Brookmeyer (United Artists / Jazz Beat)
所謂中間派と称されるモダンスイングの傑作盤をカップリングした復刻CDです。
それは一応ズート・シムズのリーダー盤とされる「Stretching Out」と、ボブ・ブルックマイヤーがリーダーとなった幻の大名盤「Kansas City Revisited」ですから、たまりません♪
録音は両盤ともに1958年であり、セッション参加メンバーもダブリが多いということで、当に兄弟関係だと思います。もちろん演奏の出来は甲乙つけがたいほどに秀逸♪
しかも今回の復刻にあたっては、美女ジャケで有名な「Stretching Out」のデザインを使ったデジパック仕様♪ ちなみにそこに記載のメンバーではナット・ピアースが実は不参加で、本当はハンク・ジョーンズがピアノを弾いているというミステリがありました。実はナット・ピアースは「Kansas City Revisited」に参加しているのです。したがって、今回の復刻2in1で、すっきりと片がついたというわけです。
気になるマスターはステレオバージョンを使用していますが、リマスターも良好です――
☆Stretching Out:1958年12月27日録音
メンバーはズート・シムズ(ts)、ボブ・ブルックマイヤー(v-tb)、ハリー・エディソン(tp)、アル・コーン(ts,bs)、ハンク・ジョーンズ(p)、フレディ・グリーン(g)、エディ・ジョーンズ(b)、チャーリー・パーシップ(ds) という実力者が揃い踏みです。
そして出てくる音は、ズバリ、カウント・ベイシー楽団っぽいカンサスシティのモダンスイング♪ リズム隊の要になっているフレディ・グリーンの天才的なリズムギターが、全てを決している感じでしょうか――
01 Stretching Out
02 Now Will You Be Good
03 Pennies From Heaven
04 King Porter Stomp
05 Ain't Misbehavin'
06 Bee Kay
演目は上記のとおりですが、まず、なによりも演奏全体の雰囲気が極上です。ブルース感覚と主要メンバーが白人という粋なフィーリングが見事に融合し、グルーヴィなソロが続出しています。
そこではズート・シムズはもちろんですが、ハリー・エディソンが素晴らしく好調♪ またボブ・ブルックマイヤーが、良いですねぇ~♪ 例のモゴモゴした音色を活かしきった逆反り的なスイングは絶妙で、これの虜になると逃れられません。
また「Stretching Out」で思いっきり黒~く迫るアル・コーンのバリトンサックスも豪快です。厚みのあるアンサンブルも薬籠中のものでしょう。
それと軽やかな「Now Will You Be Good」や「King Porter Stomp」でのリズム隊の素晴らしさ! ハンク・ジョーンズは何を弾かせても、本当に上手いです。
肝心のズート・シムズは何時ものとおり、快適なスイング感と歌心を披露していますが、個人的には影が薄いような気がしています。と言うよりも他のメンバーが良すぎるんでしょうねぇ~。特にハリー・エディソンが、繰り返しますが、凄い頑張りです♪ 「Bee Kay」でのズート・シムズとの掛け合いには、熱くなりますよ。
そして全体的に、ちょっと西海岸風のモダンなアレンジも最高!
☆Kansas City Revisited:1958年10月23日録音
メンバーはボブ・ブルックマイヤー(v-tb)、ポール・クイニシェット(ts)、アル・コーン(ts)、ナット・ピアース(p)、ジム・ホール(g)、アディソン・ファーマー(b)、オーシー・ジョンソン(ds)、そして2曲だけ参加のビッグ・ミラー(vo) という、こちらも名人揃い! 「Stretching Out」に比べると、ややモダンな響きが強いかと思います――
07 Jumpin' At The Woodside
08 A Blues
09 Blue And Sentimetal
10 Doggin' Around
11 Moten Swing
12 Travin' Light
まず「Jumpin' At The Woodside」が強烈です。これもカウント・ベイシー楽団の当り曲ですから、グイノリビートはお約束! アドリブ先発でポール・クイニシェットがフワフワブリブリという、私の大好物を聞かせれば、アル・コーンはウルトラモダンなスイングで対抗しています。またジム・ホールが絶妙な伴奏とアドリブソロ♪ リーダーのボブ・ブルックマイヤーも決死の覚悟というような豪快なノリで、たまりません。もう、これ1曲で、このセッションの素晴らしさが分かると思います。
それとドラムスのオーシー・ジョンソンが抜群ですねっ! この人には駄演無し! というのが私の独断と偏見ですが、聞けば納得の大技・小技がたっぶり出ます♪
「A Blues」と「Travin' Light」の2曲で歌うボーカリストのビッグ・ミラーは、艶のある黒っぽいスタイルで、小型ジョー・ウィリアムスという感じでしょうか。伴奏陣の軽いノリがぴったりと合っています。
また十八番の「Blue And Sentimetal」でスカスカテナーの真髄を聞かせるポール・クイニシェットは、もちろん素晴らしいですねぇ~♪ 同じくカンサスシティのスタイルが得意なナット・ピアースは、カウント・ベイシーの代役を立派に務め、ニヤリとさせてくれます。
とにかく、こちらも全曲が痛快な演奏ばかり!
ということで、なかなか「味」な復刻CDです。
実は正直に告白すると、所有している「Stretching Out」は盤がキズだらけだし、どうしても欲しい「Kansas City Revisited」のアナログオリジナル盤とは良い出会いが無いので、待ってましたと買ったのが真相です。もしオリジを持っていれば、買わなかったかもしれませんが……。
まあ、これは車の中でも聴けるから云々と言い訳してしまった自分が、毎度の事ではありますが、情けない……。
しかし買ってしまって大正解でした。リマスターも良いし、雰囲気が同じアルバムを聴きとおすと、大抵は飽きるんですが、これはもっともっと同系統が聴きたくなるという、中毒セッション盤です。
この手のモダンスイングがお好みの皆様には、よろしいかと思います。和みについては、言わずもがなでしょうね。