■死神のブルース / The Taste (Polydor / 日本グラモフォン)
日本盤シングルの最も素晴らしいところは、常にピクチャースリーヴが付いているところだと思います。
これは当たり前の様でいて、実は海外ではその仕様の方が珍しく、かなりの有名歌手&グループであっても、通常のシングル盤であれば、素っ気無い穴あきの紙袋にレコードだけが入れられて売られるのですから、その穴の部分から見えるレーベルのデザインと記載文字だけで選ばれる楽曲というのも、何か味気無いものを感じてしまいます。
さて、そういうところを鑑みて我国の場合は、殊更洋楽であれば印象的な邦題との兼ね合いでジャケットデザインが決められる事もあるんでしょうか、なかなか素敵なブツが山の様に残されている事は言うまでもありません。
本日ご紹介のシングル盤も、まさにその中のひとつ!
と、サイケおやじは思い込んでいるのですが、それと言うのも所謂二コパチではないグループショットが如何にもニューロックのバンドらしく、また紫系の印刷、さらにはオリジナルタイトルの「Born On The Wrong Side Of Time」を「死神のブルース」とやってしまった(?)邦題の潔さ!
しかも日本グラモフォンの吉例「Art Rock」のお墨付きが輝かしいでしょう♪♪~♪
ですから、レコード屋の壁にこれがディスプレイしてあれば、絶対に気になる事は必定であって、発売された昭和44(1969)年以来、サイケおやじは絶対に欲しいブツの筆頭格でありました。
しかし、これは言い過ぎの非礼は覚悟の上なんですが、肝心の中身は全く精彩の無い歌と演奏……。
実は主役のテイストは「第二のクリーム」としてイギリスでは華々しく売り出されたブルース系のハードロックバンドで、メンバーはロリー・ギャラガー(vo,g)、リチャード・マックラケン(b)、ジョン・ウィルソン(ds) という3人組ですから、その音楽性は既に述べたとおり、クリームの路線を狙っています。
しかし残念ながら、その出来は決して良いとは言えず、結果的にブレイクしないまま、解散しています。
それでもロリー・ギャラガーだけは独立して後、大輪の花を咲かせている事からもご推察のとおり、テイストが残した4枚の公式LPを聴けば、ロリー・ギャラガーと他のメンバーの力量の差が如何ともし難い現実が……。
さらにこの「死神のブルース / Born On The Wrong Side Of Time」は、テイストが本格的にポリドールと契約を結び、メジャーデビューする以前、インディーズで別のメンバーと共にロリー・ギャラガーが吹き込んだものという真相があり、なんとっ! 前述のメンバー構成は大手レコード会社との契約の条件だったという説もあります。
つまり制作側は、もっと実力のあるリズム隊を用意した上で、ロリー・ギャラガーの才能を売り出そうとしていたと思われます。
しかし、それでもテイストのアンバランスは解消されなかったのですから、逆に言えば、それだけロリー・ギャラガーの力量が突出していたのです。
閑話休題。
で、この「死神のブルース / Born On The Wrong Side Of Time」は、そういう経緯があったとしても、堂々とテイストのデビューアルバムに収められている事からして、マネージメントもレコード会社も、その曲を書いて、主役を演じているロリー・ギャラガーを売りたかったのが本音!?
ファンやリスナーにとって、そういう推察は易いでしょう。
楽曲そのものに強く滲む、所謂アイリッシュモードが絶妙の哀愁に感じ取れるあたりは、魅力と言えない事もありません。
ただ、それでもキメのリフが些か弱く、また、中間部の思わせぶりも新鮮味が薄く、それゆえにエレキ&アコースティックで作られたギターサウンドは相当のカッコ良さがあるのに、イマイチの印象しか残らないのではヒットに結びつくはずもありません。
少なくとも日本で、このシングル盤が売れたという事実は無いと思われますから、欲しいのに買えなかったサイケおやじの気持は如何ばかりか!?
そのあたりを御察し願えれば幸いでございますが、そうして時が流れ、1980年代も終りの頃、偶然にも地方出張した時に立ち寄った某中古レコード店の壁に、これを発見!
一瞬、夢じゃ~~なかろうか!?
そう、思ってしまうほどの奇蹟に遭遇してしまえば、それなりの値段が提示されていたとしても、躊躇出来るほどサイケおやじは人間が出来ていません。
もちろん既に当時は、その中身のショボさも熟知していたんですが、それでもゲットさせられてしまうのは、偏にジャケットの雰囲気の良さです。
ちなみに発売元の日本グラモフォンの洋楽シングルは、そのジャケットデザイン&企画にバラツキがあり、こういう秀作もあれば、トホホの実例が多々ある事は以前にも書きました。
そのあたりの謎も何時かは解き明かされる日が来るんでしょうかねぇ~。
全くレコード世界の楽しみは尽きません。
コメントありがとうございます。
大ホールよりも、小ホールが似合う外タレってのも、確かにいましたですね。
昔、ストーンズの前座で名前を売ったジョージ・サラグッドの来日公演は、新宿のロフトあたりだったと記憶しているんですが、なかなかジャストミートしていましたよ。
さて、肝心のロリー兄貴の気さくな人柄は各方面で伝えられていますが、晩年にはギターも我が国のグヤを使っていましたから、日本贔屓なのかもしれませんよ。
言葉については、所謂アイリッシュ訛ってやつかもしれませんね(微笑)。
友達のお姉さんが観にいってました。
感想をたずねると「気の良いお兄さんって感じね。」
…と、いっておりました。
最初ロリーさんはステージの上手から颯爽と登場し
手を振りながら下手へと消えていっちゃったんだそうです。
みんなが「???」になってると
「イッツ・ジョーク!」とか言いながら戻ってきて
演奏が始ったんだそうな。
ところでロリーさんの「サンキュー!」は「アンキュー!」って聞こえますね。