OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

秋の日のソニー・ロリンズ

2011-10-10 15:35:21 | Jazz

Sonny Rollins Play For Bird (Prestige)

この年齢になると起床してから体調が全般に良いなんてことは滅多にありませんが、今日は珍しく爽快な気分で体力&気力も充実しているのでしょうか、朝っぱらから王道モダンジャズが聴きたくなりました♪♪~♪

そして取り出したのが、本日の1枚です。

一応はソニー・ロリンズ名義のリーダー盤になっていますが、実態は当時のマックス・ローチのバンドかと推察されるメンバーはケニー・ドーハム(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、ウェイド・レッグ(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) という強力布陣!

ちなみに録音は1956年10月5日とされているところから、マック・ローチがクリフォード・ブラウンとリッチー・パウエルを不慮の事故で失った後に再編したバンドという憶測を適用すれば、セッション全体の纏まりの良さも納得されます。

そしてアルバムタイトルどおり、ソニー・ロリンズ以下のメンバーはモダンジャズを創成しながら、前年に逝去した天才アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーに捧げるべく、このセッションに臨んだと言われているウリも決して虚説ではないと思いますが、それよりも全篇から楽しめるハードバップならではの魅力を堪能出来る名演集になっています。

A-1 Medley:
     I Remember You
(featuring Sonny Rollins)
     My Melancholy Baby (featuring Kenny Dorham)
     Old Folks (featuring Wade Legge)
     They Can't Take That Away From Me (featuring Sonny Rollins)
     Just Friends (featuring Kenny Dorham)
     My Little Suede Shoes (featuring Wade Legge)
     Star Eyes (Quintet)
 LPのA面全てを使ったメドレー形式の演奏は、何れも生前のチャーリー・パーカーが好んでプレイした演目ということで、流石にバンドのコンビネーションは手慣れた中にもグルーヴィ♪♪~♪ この感触こそが、黒人ジャズの真髄というところでしょうか。
 しかも、ここでは企画の勝利というか、それぞれに主役が設定され、一応の注釈は入れておきましたが、メンバー各々が十八番とする個人芸の冴えを楽しめる流れも嬉しいところで、まずはソニー・ロリンズがチャーリー・パーカーの代表的なブルース演奏だった「Parker's Mood」の一節を絶妙のイントロに配し、続けて歌物スタンダード「I Remember You」のテーマメロディを悠然と吹奏するだけでツカミはOK! もちろんアドリブパートは変幻自在のローリン節が真っ盛りですよ♪♪~♪
 当然ながらリズム隊のハードドライヴな質感は言わずもがな、次曲への転換も絶妙であり、それはケニー・ドーハムが歌心優先主義のフェイクを堪能させてくれる「My Melancholy Baby」で早くも頂点に到達していると思います。
 あぁ、このなんて事のない「間」の取り方は、ちょい聴きにはバランスを失っているようにも感じられますが、そこは百戦錬磨のメンバー揃いですから、侮れません。マックス・ローチとのソロチェンジも含めて、極めてナチュラルなノリが良い感じ♪♪~♪
 そしてウェイド・レッグが主役のピアノトリオによる「Old Folks」が快適に演じられる時、本来は曲メロに仕込まれた哀愁の追求を期待するファン心理を逆手にとられた快感が絶妙!?
 ちなみにウェイド・レッグは公式録音ではチャーリー・パーカーとのレコーディングは残していないと思われますが、そのビバップ保守本流のスタイルは素晴らしいの一言ですねぇ~♪ そこはかとないピアノタッチの質感や歌心の奥深さに直結したコード選びも、全くサイケおやじの好むところです。
 また、そういう伴奏があればこそ、ソニー・ロリンズも安心して派手なプレイに邁進出来るのでしょうか、続く「They Can't Take That Away From Me」では相当に飛躍したリズム感で驚愕のアドリブフレーズを綴りますし、俗に「燻銀」と形容されるケニー・ドーハムにしても「Just Friends」では、なかなか溌剌とした存在感を示してくれますよ。
 ただし、ここまでの流れでは、テンポがミディアムで一様に変化が少ない所為でしょうか、要所でマックス・ローチのドラムスがブレイク的な短いソロを挟んでいます。そして、それが幾分煮詰まったところでラテンビートを入れた「My Little Suede Shoes」がピアノトリオで演奏されるあたりに、ちょいとした上手い仕掛を感じられれば、それは狙いどおりという事でしょうか……。
 しかし最終パートの「Star Eyes」はクインテット全員の合奏から、王道ハードパップのお手本のような4ビートジャズが堪能出来ますよ。
 まあ、正直言えば、もっと熱くなって欲しいのが本音ではありますが、こうしたリラックスムードのモダンジャズを27分ほどぶっ続けて演じてしまいながら、最終的にダレさせないのは容易ではないと思うばかりです。
 ちなみにマックス・ローチのリーダー盤には同様の企画として「プレイズ・チャーリー・パーカー」という人気LPがあって、そこでは相当にイケイケの演奏が繰り広げられていますので、聴き比べも楽しいかと♪♪~♪

B-1 Kids Know
 ソニー・ロリンズのオリジナル曲で、しかもマックス・ローチとのコンビネーションから生み出されるワルツタイムの演奏とあって、リアルタイムでは意欲的なスタイルであったと思われます。
 しかし後追いで聴く我々にとっては、実に和みの王道ハードバップに他ならないでしょう。
 ミディアムテンポで余裕すら感じさせるテーマ合奏からバンドの纏まりは素晴らしく、重心の低いリズム隊のグルーヴも変拍子なんて事に拘る姿勢よりは、むしろモダンジャズ本来のビートを大切にしている感じです。
 それはソニー・ロリンズのアドリブが変幻自在ではありますが、決して暴走する事のない抑制気味の結果であったり、続くケニー・ドーハムの予定調和感が今となっては物足りないと思う、それこそリスナーの我儘に直結するものかもしれません。
 しかし、ここでの「ゆったりフィーリング」は決して「微温湯」では無いはずで、まさに名人芸の成せる技とサイケおやじは神妙に聴いています。
 ちなみにマックス・ローチのバッキングやソロには相変わらずの厳しさや怖さがモロ出しですから、共にリズム隊を形成するウェイド・レッグとジョージ・モロウも緊張している雰囲気が!? そのあたりも滲んでいるように思います。

B-2 I've Grown Accustomed To Your Face
 オーラスはご存じ、ミュージカル「マイ・フェア・レディ」から人気曲をソニー・ロリンズがワンホーンのカルテットで吹奏してくれる、これまた嬉しい演奏です。
 あぁ、この野太いテナーサックスの音色と豪快な節回しで披露されるメロディフェイクの妙は、流石に天才の証明! グッと凝縮したフレーズを次の瞬間に解放する十八番の手口は、ソニー・ロリンズでしかありえませんねぇ~~♪
 伴奏のリズム隊も、それゆえの安定感を要求されるわけですが、流石はマックス・ローチというブラシの冴えが、ゆるやかなドライヴ感を作り出しているのも凄いと思います。

という事で、実はアルバム全篇が同じようなテンポの演奏ばかりなので、両面を通して聴くと些か飽きるという本音も否定出来ません。

しかし再生時間が20分前後というアナログ盤LPの特性からすれば、これがなかなかちょうど良いんですねぇ~~♪

特にA面のホンワカした心地良さは、もちろんハードバップらしいイントネーションとハードエッジなリズムも「お約束」として秘められていますから、絶品ですよ!

秋晴れの休日には、かなりジャストミートな1枚と再認識しております。

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4 コメント

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Unknown (TK)
2011-10-10 21:23:41
テナーサックスというとやはりロリンズのトーンが頭に浮かびますねぇ、私はコルトレーンが好きだったんですが。
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音色と個性 (サイケおやじ)
2011-10-11 15:29:58
☆TK様
コメントありがとうございます。

音色の魅力というか、サウンドの要は一流ミュージシャンの証だと思います。
それぞれのプレイヤーに特有の音色が個性となってしまうのが、インスト系演奏者の宿命でしょうね(微笑)。
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賛否両論の1枚? (care a lot)
2014-08-23 06:26:53
僕はこのアルバム、好きなんですけど、嫌い、と言う人も結構いますよね。全体的に元気がないと言うか…。録音時に「盛り上がったらダメだぞ」とロリンズが指示したのかな(笑)、と勘繰ってしまう程、
淡々としてますね。
そこが味といえば味ですね。これはカセットで聴いていたので、これ読んでCD欲しくなりました。
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十人十色 (サイケおやじ)
2014-08-24 14:57:44
☆care a lot様
コメント、ありがとうございます。

当時のアルバムはジャズに限らず、大衆音楽ならば基本はオムニバスだと思っています。
好き嫌いは避けられないのが娯楽の世界ではありますが、そこはロリンズとローチという二大天才のプレイに免じて、虚心坦懐に楽しみましょうよ♪
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