OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ここから始まるオブリヴィオン・エクスプレス

2010-10-10 16:44:45 | Rock Jazz

Brian Augers Oblivion Express (Gohst Town / RCA Victor)

ブライアン・オーガーがトリニティを解散させ、新たに結成したオブリヴィオン・エクスプレスのデビューアルバムが本日のご紹介です。

ご存じのように、ブライアン・オーガーはモダンジャズを基本にしつつも、R&Bやロックの分野に斬り込む活動を繰り広げていたイギリスのキーボード奏者ですが、それにしてもこれまでに発表してきた作品群は、イノセントなジャズ者にも充分満足出来る内容に仕上がっていたと思います。

それは元祖フュージョンという分類になるのかもしれません。しかし1971年に発売されたこのアルバムは、時期的に全盛期だったプログレと既に確立されていたロックジャズの幸せな結婚♪♪~♪

メンバーはブライアン・オーガー(key,vo) 以下、ジム・ミュレン(g,vo)、バリー・ディーン(b,vo)、ロビー・マッキントッシュ(ds) という顔ぶれですが、サイド各自が後に他の有名バンドに移籍して活躍したのは言わずもがなの実力者揃いです。

A-1 Dragon Song
 ジョン・マクラフリンの作曲と言われるだけあって、非常にハードで妥協の無い演奏が繰り広げられています。
 とにかくヘヴィなテーマアンサンブルから全開するドラムスの暴れ、いきなりマクラフリン節しか出さないギター、どっしり構えたベースという役割分担の明快さも素晴らしいかぎりなんですが、やはり圧巻は鬼気迫るブライアン・オーガーのアドリブソロ! それはオルガンの限界に近い音使いも含めて、実に前向きで熱いエモーションに満ちています。
 そしてバンド全体でゴリ押しするロックジャズ本流の勢いは、まさにこの時期のイギリスでしか表現されることの無かった異形のグルーヴでしょう。
 これをロックとするか、プログレと形容するかは、リスナーが十人十色の感性でしょうが、オプリヴィオン・エクスプレスという先進的なバンドが提示した新しいジャズという括りもあるかと思います。
 尤も、既にそんな分類に拘る必要が無いほど、ブライアン・オーガーの音楽的方向性は固まっていたのでしょう。これぞっ、アルバムの幕開けに相応しい熱演!

A-2 Total Eclipso
 前曲のムードを引き継いだような演奏ですが、こちらはグッとテンポを落とし、ダークでミステリアスな感性を強く狙ったようです。
 そしてジム・ミュレンのギターが大活躍するアドリブパートでは、しかし決してバックのアンサンブルが伴奏に留まらないインタープレイ的な味わいも強く、中でもロビー・マッキントッシュのドラミングが凄いですよ♪♪~♪
 肝心のブライアン・オーガーはエレピやシンセ、そしてアコースティックなピアノを多角的に用いての奮闘を聞かせてくれますが、やはりオルガンによるアドリブが一番熱くさせてくれますねぇ~♪
 11分超の長尺演奏ですが、聴き終える頃には宇宙空間に浮遊している自分を感じるサイケおやじです。

A-3 The Light
 アップテンポでブッ飛ばすハードロック調の演奏で、メンバーのボーカル&コーラスも全面に出ていますが、極言すればディープ・パープルがロックジャズしてしまったような痛快さが魅力です。
 つまりブライアン・オーガーのオルガンがジョン・ロードしている感じなんですが、それは全くの逆! 失礼ながらジョン・ロードよりも、ずぅ~~っと先鋭的なアプローチが極めてジャズ寄りだと思います。
 ただし最終パートは凝り過ぎかもしれませんねぇ。
 まあ、これは聴いてのお楽しみということで……。

B-1 On The Light
 いきなり痛快なファンキーロックの演奏で、ボーカル&コーラスのパートがあまり印象に残らないのは残念ですが、インストパートのカッコ良さは唯一無二! 特にジム・ミュレンのギターが爽快にして熱血! あぁ、こんなに弾けたらなぁ~~~。
 そしてもちろん、ブライアン・オーガーのオルガンが追従を許さぬ大疾走ですから、たまりません♪♪~♪
 いゃ~、こんなアップテンポを完璧にやってしまうメンバーの力量は凄過ぎます。 

B-2 The Sword
 う~ん、またしてもハードに燃え上がる演奏で、ここに強力なボーカリストが入っていたらディープ・パープルも真っ青だったでしょうねぇ~♪ とにかくリフはシンプルにしてカッコ良く、痛烈なギターのアドリブは憧れの早弾き大会ですよ♪♪~♪ そしてドラムスのタイトな暴れは言うまでもないでしょう。
 ですからブライアン・オーガーのオルガンが嬉々としてアドリブに突入すれば、どうにもとまらないという山本リンダ現象! ボケとツッコミのひとり漫才的な部分も含めて、流石に凄いと思います。
 ちなみに学生時代のバンドで、この曲のリフを練習した前科があるんですが、結果は無残な迷い道という告白を……。

B-3 Oblivion Express
 そしてオーラスのアルバム&バンドタイトル曲は、初っ端から叩きつけるようなイントロに導かれ、以降は思わせぶりなロックジャズとハードプログレがゴッタ煮となった展開が続きます。
 と、書いてしまえば、既にご推察のとおり、ここからはエマーソン・レイク&パーマー=ELPの如き印象が打ち消しようもないでしょう。同時期にELPの傑作アルバム「タルカス」が世に出たのも、今となっては運命のいたずらとしか言えません。
 実は後にブライアン・オーガー自身が告白したところでは、ELPの出現とキース・エマーソンのキーボード&シンセの使い方には少なからず衝撃を受けたそうですから、さもありなん!?
  しかし、それはそれとして、ここでのブライアン・オーガーとオブリヴィオン・エクスプレスの演奏は、やっぱり凄いですよ。特にギターソロが出る場面はELPでは決して求められないものですし、意識的にジャズから離れようとするブライアン・オーガーのオルガンは終盤のエフェクト処理も含めて、かなり暴虐の展開を聞かせてくれます。

ということで、結論から言えば、このアルバムは思惑ほど売れなかったそうですし、それは既に述べたとおり、ELPという強力なライバル(?)の出現が大きな痛手(?)だったのかもしれません。

そして次作アルバム「ア・ベター・ランド」では、英国フォーク&ポップスのプログレ的展開という、いやはやなんともの迷い道に踏み込んでしまうわけですが、リアルタイムのこの時点では正解と断じます。

もちろんサイケおやじは傑作「クローサー・トゥ・イット」を聴いて後、つまり後追いで接したアルバムですから、それはオブリヴィオン・エクスプレスがあれこれ試行錯誤を重ねていた事を知ったうえでの結論ですし、ブライアン・オーガーに対する思い入れも強いものが……。

そのあたりを踏まえて、ブライアン・オーガーを初めて楽しまれようとする皆様には、このアルバムが推薦盤になるのかもしれません。

フュージョンよりはロックジャズ、そしてハードプログレなモダンジャズとして、実にストレートな醍醐味が凝縮された1枚だと思います。

コメント (2)
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