■恋のテクニック c/w 太陽は涙が嫌い
/ Gerry & The Pacemakers (Columbia / 東芝)
我国における往年の洋楽には、当然のように邦題がつけられたヒット曲が多数あります。
もちろん英語や諸外国の言葉に不慣れな日本人にとっては、これが原題よりも馴染み易かったわけですし、はっきり言えば歌詞の内容は理解出来なくとも、邦題のイメージと楽曲の醸し出すムードが一致すれば、それはそれでOK!
ですからレコード会社の制作担当者は、如何に素敵な邦題を捻り出すかも、なかなか重要な仕事だったんでしょうねぇ。
本日ご紹介のシングル盤は両面とも、そうした思惑がズバリ、直球ど真ん中のヒット曲でした。
演じているジェリー&ペイスメイカーズはリバプール出身ということで、ビートルズと契約していたブライアン・エプスタインのエージェントに所属していました。メンバーはジェリー・マーズデン(vo,g)、レス・マクガイア(p)、レス・チャドウィック(b)、フレディ・マーズデン(ds) という4人組ですが、バンド名からもご推察のとおり、一座のスタアは些かアクの強いキャラクターのジェリー・マーズデン!?!
しかしバンドの纏まりはR&RやR&Bのグルーヴをきっちり演じられる素晴らしいもので、その実力は残された音源を聴けば明らかなんですが、同時にエンタメ系の親しみ易さも兼ね備えていたところから、忽ち人気グループとなりました。
それはライプの現場だけでなく、1963年の公式デビュー以来、次々に放たれたヒットシングルを聴くだけでも、その明快な魅力が堪能出来ると思います。
このシングル盤は、おそらくは日本での最初の1枚かと思われますが、まずA面の「恋のテクニック」は、原題が「How Do You Do It」として、イギリスでは1963年春のデビューヒット♪♪~♪ 曲調は典型的なマージーピートというか、ちょいと胸キュンのビートルズっぽい味わいがたまらないところです。そして今日では明らかになっているように、この曲はビートルズのデビュー曲候補にもなっていたほどの傑作!
しかし職業作家の手になる歌ということで、レコーディングが終っていながら、ジョン・レノンの頑強な反対によってオクラ入り……。それが現在では「アンソロジー第1集」に収められ、堂々と聴けるようになってみれば、このジェリー&ペイスメイカーズが如何にビートルズのアレンジを流用しているかが確認出来ますよ。
ただし、こちらは間奏でのピアノとリズム&ビートの兼ね合いが、なかなかジャズロックっぽくて、サイケおやじは大好きです。また、微妙にツッパリなジェリー・マーズデンの歌い回しも、ヒットして当然の成り行きだと思います。
ちなみに、この日本盤シングルは昭和39(1964)年の発売なんですが、ここで「ハウドュユードゥイット」なんて曲名だったら、如何にも中学校の英語の授業みたいで、イメージ悪かったでしょうねぇ。これは絶対、「恋のテクニック」で正解でした。
一方、B面「太陽は涙が嫌い」の原題は「Don't Let The Sun Catch You Crying」ですから、これまた邦題が絶妙でした。しかも一部では、ジェリー&ペイスメイカーズの最高傑作とまで言われている泣きのパラードですからねぇ~♪ 自作の強みを活かし、せつせつとした曲メロを程好い思い入れで歌うジェリー・マーズデンとバックのジャズっぽい伴奏、大袈裟なようでいて、実は控えめなストリングスという仕上がりも抜群ですから、少年時代のサイケおやじは、かなりラジオで聞かされた記憶があります。
もしかしたら、リアルタイムの日本では、B面の方がウケていたのかもしれません。
一応、本国イギリスでは1964年初夏に大ヒットしたシングルA面曲でしたから、さもありなんでしょう。
そして邦題が、歌と曲の雰囲気にぴったりなんですよねぇ~♪
ということで、ジェリー&ペイスメイカーズをロックの歴史云々で語るとすれば、リバプールではビートルズのライバルバンドだったという事実だけかもしれません。しかしヒット曲愛好家にとっては、なかなか琴線に触れる歌と演奏を残してくれたグループとして、今も忘れられていないと思いますよ。サイケおやじにしても、このシングル盤は印象が強く残っていた所為で、実は昭和52(1977)年に中古でゲットしたものです。
現実的には、1966年末にジェリー・マーズデンがミュージカルスタアに転身したことからバンドは解散していますが、残された楽曲と音源は絶対に集大成されるべきレベルのものばかり!
またサイケおやじが1980年代に入ってからイギリスで接した某テレビショウには、すっかりバラエティ系タレントに転向していたジェリー・マーズデンが出演していましたが、それでも番組内で2曲ほど歌ってくれた時には、ちゃ~んと往年の味わいを大切にしていましたですねぇ~♪ 一流の芸人として、流石だと思いましたよ。
現在では時代遅れの感も強いジェリー&ペイスメイカーズの再評価を、強く望むばかりです。
「太陽は涙が嫌い」を使うCMは無いもんでしょうか。