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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ミルト・ジャクソンのジェントルファンキー

2009-04-04 09:47:08 | Jazz

Opus De Jazz / Milt Jackson (Savoy)

いよいよ新年度、新しい職場で頑張る気概に満ちた人が目立ちますね。所謂フレッシュマンというところでしょうか、不景気な現状には、彼等のようなハッスルが必要だと痛感しております。

さて、これは遥か昔、私が社会人となって初めて買ったアルバムです。

そう、あれは、今は無くなってしまった銀座の有名中古店「ハンター」でゲットしたのが、つい昨日のようです。ジャケットは有名カラー版ではなく、地味なモノクロの別物デザインでしたが、アメリカプレスの盤そのものが分厚かったので、こちらを選んだわけです。値段も確か千円だったと記憶していますが、ちなみに、いっしょに売られていたカラージャケットの日本盤は千二百円でしたから、まだ給料を貰っていない自分には、当然の選択だったというわけです。

内容は言わずもがなの名盤ですから、ジャズ喫茶で何回も聴いていまいしたが、それでも欲しくなる魅力が、確かにあるんですねぇ~♪

録音は1955年10月28日、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、フランク・ウェス(fl,ts)、ハンク・ジョーンズ(p)、エディ・ジョーンズ(b)、ケニー・クラーク(ds) という名手揃いで、ブルースとバラードの真髄がじっくりと演じられています。

A-1 Opus De Jazz
 オリジナルはホレス・シルバーが1953年11月に自作自演でブルーノートに吹き込んだピアノトリオのファンキー曲ですから、ミルト・ジャクソンにしてもお気に入りなのでしょう。このセッション以前の1954年6月にホレス・シルバーの助演を得て、ブレスティッジに名演を残していますが、やはり同曲の決定的なバージョンは、これでしょうね♪♪~♪
 ミディアムテンポの弾むようなグルーヴは、ちょっと聴きには単調としか思えないケニー・クラークとエディ・ジョーンズの迷いの無いコンビネーションに支えられ、その軽やかなブルースフィーリングが、たまらない魅力になっています。
 もちろん、これと同じようなノリは、ミルト・ジャクソンがレギュラーだったMJQでも演じられているのは確かです。しかしここでの演奏は、淡々とした中にも野太いグルーヴが感じられ、同時に奥深いジェントルな風情さえ滲んでくるのですが、その原動力はエディ・ジョーンズのしぶとい4ビートウォーキングとハンク・ジョーンズの素敵なピアノタッチじゃないでしょうか。それだけ聴いていても、グッと惹きつけられます。
 そして演奏そのものの仕掛けが、これまたニクイほど! ヴァイブラフォン、フルート、ピアノがソロを回していくアドリブパートは、コーラスを重ねる度に切り詰められていき、終いにはソロチェンジの様相となるのです。
 あぁ、このクールで熱い表現は圧巻ですねっ!
 ミルト・ジャクソンは、これぞっ、モダンジャズのブルースを発散させますし、飄々としてシブイ表現のフランク・ウェスのフルートは、音色そのものがハスキーな感じで高得点♪♪~♪ さらにハンク・ジョーンズのピアノのジェントルな存在感も素晴らしいかぎりです。
 オリジナルではホレス・シルバーが強烈にシンコペイトしていた、些かアクの強いテーマメロディのキモが、こうしてライトタッチで煮詰められていくところに、ジャズの面白さを感じてしまいます。

A-2 Opus Pocus
 これもブルースですが前曲とは一転、ヘヴィなグルーヴが横溢した名演ですから、ミルト・ジャクソンはますますの本領発揮♪♪~♪ 粘っこいウォーキングベースに導かれ、全くの自然体でブルースリックを響かせるヴァイブラフォンのソウルフルな味わいは、本当に格別ですねっ♪♪~♪ まさにブレ無いファンキー&グルーヴィン!
 そしてフランク・ウェスが、ここではディープなテナーサックスを披露してくれますから、嬉しさ倍増! コールマン・ホーキンス直系ともいうべきスタイルは、些か古臭いところが逆に高得点でしょう。というか、実はサブトーンも駆使したテナーサックスの不滅の魅力がたっぷりと味わえます。
 さらに滋味豊かなハンク・ジョーンズの伴奏に趣味の良いアドリブソロも最高で、ファンキーなドロの中の清涼剤というには、あまりにも素晴らしすぎです。

B-1 You Leave Me Breathless
 このアルバムの中では唯一のスタンダード曲で、落ち着いたスローテンポのバラード演奏ながら、流石は名人揃いとあって、セッションの中では一際輝く名演になっています。とにかくテーマ部分からして、各楽器の役割分担の妙、メロディフェイクの素晴らしさが堪能出来ますよ。
 歌心の真髄を披露するミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンは軽やかに舞踊り、フランク・ウェスのフルートはハートウォームな表現を大切にした健実な助演で好感が持てます。
 そしてハンク・ジョーンズのセンスの良さは絶品♪♪~♪ 地味なところが逆に凄いという感じでしょうか、流石だと思います。

B-2 Opus And Interlude
 ちょっとバラエティ番組のギャグオチのようなテーマメロディが、なかなかオトボケのブルースですが、アドリブパートは真正ハードバップの快適さが充満しています。そのミディアムテンポの淡々としたグルーヴは、このセッションならではの味わいでしょうねぇ~♪
 ちなみに既に述べたように、その原動力となっているベーシストのエディ・ジョーンズは、フランク・ウェスと同じく、当時のカウント・ベイシー楽団ではレギュラーを務めていただけあって、生粋のブルースフィーリングとジャズのグルーヴをナチュラルに表現出来る名手として忘れ難い快演が、ここに記録されたようです。
 それゆえに各人の持ち味が存分に披露されるアドリブパートは大充実! これがハードバップの素晴らしさです。

ということで、何れの曲も分かりきった楽しみに満ちた名盤だと思います。そして何度聴いても、決して飽きない傑作じゃないでしょうか。

今時期のウキウキした気分にもジャストミートだと思います。

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カッコイイ、チャーリー・マリアーノ

2009-04-03 12:32:53 | Jazz

Charlie Mariano Plays (Bethlehem)

ジャズメンにはカッコイイ人が大勢いますが、ルックス&プレイが共にスマートでキマッているひとりが、チャーリー・マリアーノでしょう。一時は秋吉敏子と結婚していたことでも有名ですね。

もちろん白人ということで、ウエストコーストジャズの重要なアルトサックス奏者という位置付けも間違いではありませんが、チャーリー・マリアーノはボストン出身という、本来は東海岸派のプレイヤーですから、チャーリー・パーカーからの影響が隠しようもない、元祖ハードバップの人でもありますし、1960年代にはモードやサイケロック風味の新進気鋭も演じていましたですね。

つまり何時の時代も先端の演奏を心がけていた前向きな姿勢が、素晴らしい演奏を残してくれた原動力として、私は感謝するばかりです。そして本日ご紹介のアルバムは、ウエストコーストジャズ全盛期の記録して、実に秀逸な1枚ですが、結論から言えば、本来は10インチ盤として世に出ていた「Charlie Mariano Sextet (Bethlehem BCP1022)」を拡大12インチLPとして再発する時に、新録の演奏を加えているところから、2種類のバンドの個性が楽しめるというわけです。

その内訳は、まず前述の10インチ盤セッションの録音が1953年12月21日、メンバーはチャーリー・マリアーノ(as)、スチュ・ウィリアムソ(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、クロード・ウィリアムソン(p)、マックス・ベネット(b)、スタン・リーヴィー(ds) という素晴らしい6人組!

一方、追加されたセッションの録音は1955年7月11日、メンバーはチャーリー・マリアーノ(as,ts)、ジョン・ウィリアムス(p)、マックス・ベネット(b)、メル・ルイス(ds) という、こちらはワンホーンでのハードバップ的な魅力が楽しめます。

A-1 Chloe (1953年12月21日録音)
 シブイ歌物の隠れ名曲として、ボーカルバージョンが数多残されていますが、インストならば、これが名演! 
 ちょっと陰鬱な3管のアンサンブルから一転、溌剌としたメロディ展開には開放感がいっぱいという魔法がニクイところ♪♪~♪ もちろんアドリブ先発のチャーリー・マリアーノはスマートな歌心に直観的なドライブ感が冴えまくりですよ。フレーズの語尾を端折り気味にするところは好き嫌いがあるかもしれませんが、それが逆に鋭角的というか、如何にもカッコイイ白人ならではの感性だと思います。
 またハートウォームなスチュ・ウィリアムソン、爽快なフランク・ロソリーノ、スイングして止まらないクロード・ウィリアムソンという共演者達の熱演にも、短いながらスカッとさせられます。

A-2 You Go To My Head (1953年12月21日録音)
 これはいきなりアルバムのウリとなった、チャーリー・マリアーノがワンホーンの決定的な名演です。初っ端から良く知られたスタンダード曲のメロディを自在にフェイクし、それでいて原曲の味わいを一際輝かせるという、まさに歌心の匠の技♪♪~♪
 じっくり聴けば、そのフレーズは相当に幾何学的な細かい技の集合体だと思いますが、それを歌心に上手く変換したというか、このあたりがチャーリー・マリアーノの優れた個性じゃないでしょうか。
 スローなテンポをグイノリのビートで演じるリズム隊も、地味ながら見事です。

A-3 S' Nice (1953年12月21日録音)
 如何にもウエストコースジャズがど真ん中の颯爽とした快演! アップテンポで繰り広げられる華麗なるバンドアンサンブル、躍動的なリズム隊のグルーヴも意外ほどに太く、もちろん各人のアドリブは素晴らしい限りです。
 特にチャーリー・マリアーノのアルトサックスが、まさにチャーリー・パーカー直系のフレーズとノリ! そのストレートなジャズ魂は尊いとしか言えません。またモゴモゴしているようで実はスピード感がたまらないフランク・ロソリーノが、良い味だと思います。

A-4 Manteca (1955年7月11日録音)
 これは新たに加えられたカルテットの演奏で、曲はディジー・ガレスピーが書いたラテンジャズの聖典♪♪~♪ それをチャーリー・マリアーノがテナーサックスで図太く吹きまくっています。
 それはウエストコーストという先入観からすれば違和感もあるのですが、時代は既にハードバップが主流でしたから、これも「あり」だった思います。
 個人的には大好きなジョン・ウィリアムスのピアノも、力強いタッチでシャープなフレーズを弾いてくれますし、ドラムスとベースがビシバシで、なかなか痛快!

A-5 It's You Or No One (1955年7月11日録音)
 そしてこれまたスタンダード曲を素材にした大名演!
 チャーリー・マリアーノは、ここでもテナーサックスを吹いていますが、お馴染みのメロディを最初はベースとのデュオでフワフワと演じ、次いで快適なドラムスとベースを呼び込んでからは、もう素朴なフェイクと美メロのアドリブが桃源郷♪♪~♪
 如何にも白人らしいグルーヴが演奏全体に横溢し、弾むようなリズム隊の楽しい快演もありますから、このアルバムの中では一際素敵な仕上がりになっています。
 数多ある同曲のジャズバージョンでは十指に入るほどの出来だと思うのですが、いかがなもんでしょうか。ジョン・ウィリアムスのアドリブも出来すぎですよ♪♪~♪

B-1 Three Little Words (1953年12月21日録音)
 これも有名スタンダード曲のウエストコースト的な展開が、如何にもの快演になっています。とにかくアップテンポで一糸乱れぬバンドアンサンブル、爽やかにして痛快なアドリブの連発、さらに気持ち良すぎるリズム隊の飛び跳ねビート♪♪~♪
 ここではフランク・ロソリーノの高速スライドワークが冴えたトロンボーンが強烈ですよ。

B-2 Green Walls (1953年12月21日録音)
 チャーリー・マリアーノが書いた、ちょっと新主流派っぽい進歩的なオリジナル曲です。3管のアンサンブルやヘヴィなビートを叩き出すリズム隊を聴いていると、本当に1960年代のブルーノートを想起させられるんじゃないでしょうか。
 それはアドリブパートの雰囲気にも継続され、浮遊感が全面に出たチャーリー・マリアーノのアルトサックスが実に新しく、ちょいと迷い道の他のメンバーとは一線を隔した感じですねぇ。
 曲調としてはウェイン・ショーターとかグラチャン・モンカーあたりが出てきそうな……。

B-3 Give A Little Whistle (1955年7月11日録音)
 一転して、これは明るく楽しい演奏で、バンドメンバーの掛け声とか弾んだ4ビートが痛快ですから、溜飲が下がります。
 チャーリー・マリアーノはテナーサックスで真っ向勝負ながら、幾分ぎごちないところが結果オーライでしょうか。素直な歌心は、相当に良い感じだと思います、
 またジョン・ウィリアムスがホレス・シルバー調のシンコペーションをモロ出しにした伴奏とアドリブで、本当にたまりませんよ♪♪~♪ ドラムスとベースの楽しげなところも高得点だと思います。

B-4 I Should Care (1955年7月11日録音)
 チャーリー・マリアーノのアルトサックスが、せつせつと歌いあげるテーマ演奏だけで完全降伏です。素材はもちろんお馴染みのスタンダード曲とはいえ、テーマよりも素敵な美メロのフェイクが出たりします。
 あぁ、演奏時間の短さが、なんとも勿体ないかぎりです。

B-5 My Melancholy Baby (1953年12月21日録音)
 オーラスも胸キュン系スタンダードの楽しい演奏で、ここではフランク・ロソリーノが参加していない所為か、かなりストレートな仕上がりです。
 つまりチャーリー・マリアーノの快調なアドリブが全面的に冴えまくり! 無理を承知で比較すれば、アート・ペッパーのような「愁い」よりは、もっと「素直な泣き」というか、しかし決して「嘘泣き」ではない心情吐露が良い感じなんですねぇ~♪
 スチュ・ウィリアムソンのトランペットも同様に素直な歌心を追求していますし、リズム隊もストレートな4ビートに徹していますから、一足早いハードバップという雰囲気です。

ということで、異なるセッションを強引に抱き合わせたわりには、違和感の無い名演集だと思います。

ちなみに同時期のレコーディングとしては、ベツレヘムにもうひとつ残された名盤「Charlie Mariano」がワンホーンの決定的な名演ですから、どちらが好きかは十人十色ながら、個人的はこちらを聴くことが多いサイケおやじです。

シンプルな歌心が楽しい「It's You Or No One」が、本当に好きなんです♪♪~♪

ハードなイメージのジャケットも、チャーリー・マリアーノのカッコ良さにはジャストミートだと思います。

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キャノンボールの最強バンド映像

2009-04-02 12:12:15 | Jazz

Cannonball Adderley Sextet 1962-63 (Jazz Shots = DVD)

これも最近入手した復刻映像♪♪~♪

さて、モダンジャズが最も幸せだった時代は1960年の前後数年間だったと、今更ながらに思います。

例えば白人ではチェット・ベイカーやディブ・ブルーベックのバンドが大ブレイクし、黒人ではジャズメッセンジャーズやマイルス・デイビスがメジャーと契約し、さらにセロニアス・モンクが白人中心のファンにウケ、スタン・ゲッツがボサノバでブームを巻き起こすといった、本当に素晴らしい状況でした。

キャノンボール・アダレイが率いたバンドも、その中で大活躍! 本日ご紹介のDVDは、1962年~翌年にかけて出演したテレビでのライヴショウを纏めたブツです。

メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ナット・アダレイ(cornet) の兄弟を中心にユセフ・ラティーフ(ts,fl,oboe)、ジョー・ザビヌル(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という全盛期のセクステットで、映像は全てモノクロです。

☆1962年11月、ロスでの収録:約27分
 01 Theme & Announcement
 02 Jessica's Birthday
 03 Primitivo
 04 Jive Samba
 05 Work Song
 06 Closing Theme & Announcement

 これは今までにも度々パッゲージ化されたアメリカの人気ジャズ番組「Jazz Scene U.S.A.」のリスマターで、結論から言えば画質&音質は過去最高のAランクです。
 オスカー・ブラウン Jr. のセンスの良い司会もさることながら、途中でインタヴューに応じながら、最後には番組を仕切ってしまうキャノンポール・アダレイが、なんとも憎めません。スタジオにはシングルヒットとなった「African Waltz」が入ったアルバムもディスプレイされ、おそらく番組への出演も、そのおかげかもしれません。
 肝心の演奏は、まさにそうした当時の勢いがそのまんまという凄い充実度で、バンドアンサンブルも鮮やかな「Jessica's Birthday」はアップテンポの痛快なハードバップ! ウネリを伴って豪快にドライヴしまくったキャノンボール・アダレイのアルトサックスが、とにかく強烈です。
 そしてタイトルどおり、原始的なモードを使った感じの「Primitivo」は、重厚にして緻密なバンドのアンサンブルと各メンバーのアドリブが深淵にして真っ黒! 竹笛やオーボエを神妙に吹奏するユセフ・ラティーフも印象的ですし、ジョー・ザビヌルのピアノが実にディープな心情吐露♪♪~♪ もはや単なるファンキーバンドから脱却したグルーヴの凄味が如実に出ていると感じます。
 しかし、やっぱりこのバンドはファンキーで陽気なノリが本来の魅力でしょうねぇ。それがお馴染みの「Jive Samba」と「Work Song」の2連発で最高潮♪♪~♪ ルイス・ヘイズのドラミングも実に爽快で、様々なビートをゴッタ煮とした美味しさが満喫出来ますよ。
 全篇を通して音質はモノラルミックスですが、各楽器のバランスも良く、キャノンボール・アダレイのアルトサックスは激しく咆哮し、ナット・アダレイやユセフ・ラティーフが持ち味を発揮すれば、ジョー・ザビヌルは相当に危なくっているとはいえ、まだまだ髪の毛があった時代の力演を披露していますし、サム・ジョーンズの堅実なプレイやルイス・ヘイズの上手さにも脱帽されると思います。

☆1963年7月、東京で収録:約55分
 07 Jessica's Birthday
 08 Brother John
 09 I Can't Get Started
 10 You And Night And The Music
 11 One Note Samba
 12 Work Song
 13 Scotch And Water
 14 Tengo Tango
 15 Trouble In Mind
 16 Jive Samba

 これは来日時に東京のTBSで収録のスタジオセッションで、前述したバンドに加えて黒人女性歌手のトニ・ハーパーが同行しており、「You And Night And The Music」と「One Note Samba」の2曲を歌っています。
 もちろん演奏はいずれも絶頂期の証明になっていますが、残念ながら画質はB……。それでも今まで出回っていたブートビデオよりは多少、マシでしょうか。ただし音質は相当に改善されています。
 演奏内容では、特に気になるトニ・ハーパーがリズム隊だけの伴奏で個性的な歌唱を聞かせてくれますが、ここは十人十色の好き嫌いかもしれません。
 個人的には後半の「Work Song」からが圧巻で、特にアダレイ兄弟が抜けてバンドメンバーに花を持たせたような「Trouble In Mind」が、ユセフ・ラティーフのディープなオーボエとジョー・ザビヌルの思わせぶりなピアノの名演で印象的♪♪~♪
 ちなみにユセフ・ラティーフはアドリブの中に中近東系のメロディやスケールを使うので、サイケおやじには苦手のひとりなんですが、このバンドの中では同様の試みも許容範囲だと思います。と言うよりも、実は凄い実力者だと痛感させられました。
 それとジョー・ザビヌルがビル・エバンスとウイントン・ケリーの中間のような、実に好ましい正統派ジャズピアノを披露して、好感が持てます。前年の映像と比較して、ますます存在感が薄くなっている髪の毛も……。
 肝心の主役、アダレイ兄弟は流石の大看板! キャノンボール・アダレイが「I Can't Get Started」のバラード演奏で兄貴を貫禄を示せば、ナット・アダレイは得意の作曲能力を遺憾無く発揮し、特にタンゴのファンキー的解釈という「Tengo Tango」では陽気なグルーヴが大爆発! その導火線となっているのがナット・アダレイというわけです。
 既に述べたように画質は良くありませんが、演奏そのものは秀逸ですから、十分に楽しめると思います。

☆1963年3月24日、スイスでの収録:約19分
 17 Jessica's Birthday
 18 Angel Eyes

 これが個人的にはお目当てというか、今まで全く観たことが無かった映像です。
 やはり同じバンドによる欧州巡業中にスイスで収録されたスタジオセッションで、画質&音質は一部で乱れもありますが、満足出来るAランク♪♪~♪
 ちなみにフィルムスタートのテーマにはキャノンボールらしく大砲のアニメを使い、そのバックには、やはりヒットしていた「African Waltz」が流されるというあたりが、なかなか当時の流行を物語っているのかもしれません。
 肝心の演奏は「Jessica's Birthday」が前記のパターンと同様に熱演! これが本場のハードバップだっ! というバンドの矜持が感じられますよ。
 そして緻密なアレンジを用いた「Angel Eyes」が、ユセフ・ラティーフの素晴らしいフルートを前面に出した名演♪♪~♪ 素直なテーマメロディの吹奏に寄り添うリズム隊ではジョー・ザビヌルが優しく、それでいてミステリアスなコード選びの伴奏で高得点ですし、主役を与えられたユセフ・ラティーフの丁寧なメロディフェイクも良い感じでしょうか。失礼ながら怪人的な風貌とは正反対のジェントルな演奏が、なかなか魅力的♪♪~♪ 十八番の唸り声奏法も憎めません。

ということで、全盛期だったキャノンボール・アダレイとそのバンドの真髄が楽しめると思います。とにかく各メンバーが物凄い実力者だったんですねぇ~♪ 特にユセフ・ラティーフは個人的には先入観があって、イマイチ好きになれないプレイヤーなんですが、ここでの真摯なジャズ魂には圧倒されてしまいました。

またウェザーリポートでのジョー・ザビヌル以前の姿を見せてくれる本人のピアノも魅力的で、やはり並々ならぬ才人の証明でしょう。

サム・ジョーンズとルイス・ヘイズという、真正ハードバップのリズムコンビが真髄を堪能させてくれるところも楽しく、もちろんアダレイ兄弟は手抜き無し! 演目がダブったりするとはいえ、そこはアドリブの世界ですから、それぞれに素晴らしいお楽しみが用意されています。

モダンジャズがもっとも大衆的だった当時の勢いが、ここに復刻されたのは喜ばしいですね。次は続く時期のロック&ファンキー時代を、ぜひとも観たいものですね。

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ピーターソンとクラーク・テリーの絶品スイング

2009-04-01 12:16:54 | Jazz

Oscar Peterson Trio + One (Mercury)

ジャケットをご覧なれば、ここでの「+ One」がクラーク・テリー!

この人は大変な実力者で、デューク・エリントン楽団の看板を務めていたこともありますし、マイルス・デイビスに影響を与えたとか、あるいはセロニアス・モンクと共演レコーディングをやっても圧倒的な存在感を示してしまったか、さらに自己のビックバンドを率いて活動していたこともあるという、そのわりにはイマイチ、我が国では人気がありません。

そのあたりは本国でも同様だったらしく、それを嘆いたオスカー・ピーターソンの熱望によって、この共演アルバムが作られたという真相もあるようです。

録音は1964年8月17日、メンバーはオスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、エド・シグペン(ds) という、ご存じ「黄金のトリオ」にクラーク・テリー(tp,flh,vo) が客演したカルテット♪♪~♪ ちなみにこれは、オスカー・ピーターソンがヴァーヴからマーキュリーへと移籍した最初の作品と言われています。

A-1 Brotherhood Of Man
 初っ端からオトボケファンキーなクラーク・テリーのトランペットが印象的ですし、続くオスカー・ピーターソンの唸り声もしぶとい、実に強烈なアドリブが既に最高です。あぁ、このアップテンポでグルーヴィなノリこそが、モダンジャズ最高の楽しみですねっ♪♪~♪
 そしていよいよ本領を発揮するクラーク・テリーのラッパの響きも絶好調! 強烈なハイノートからエグイばかりのフレーズ展開は痛烈にファンキーです。
 バンドとしての纏まりも素晴らしく、各人の至芸に酔わされてしまいますよ。短い演奏ですが、まさにアルバム冒頭には、これしか無い!

A-2 Jim
 小粋な歌物スタンダードをハートウォームに展開していくオスカー・ピーターソンのトリオが実に良い雰囲気を作り出すテーマ部分から、本当に和んでしまいます。適度にファンキーで歌心優先主義のメロディフェイクは、流石は名手の証でしょう。
 そしてミュートトランペットとフリューゲルホーンを持ちかえで交互に吹き分けるクラーク・テリーが十八番の妙技には、ジャズを聴く喜びがいっぱい♪♪~♪ これは左右の手に各楽器を持ち、ワンフレーズ毎に瞬時の吹き替えという、なかなかエンタメ系の技なんですが、決してお遊びではなく、リアルファイトです。
 それはここでの歌心のあるアドリブを聴けば納得でしょう。ミュートがマイルス・デイビスの元ネタであるという事実にも、嬉しくなりますよ。

A-3 Blues For Smedley
 オスカー・ピーターソンのオリジナルというファンキーなブルースには、クラーク・テリーのオトボケミュートがジャストミートの快演です。とにくかテーマアンサンブルからアドリブに入っていくところで、既にジャズの楽しさが横溢ですよ。クラーク・テリーの肉声を活かしたラッパの響きは、決して悪ふざけだとは思いません。
 そしてオスカー・ピーターソンのアドリブが、これぞ真髄の「黄金のトリオ」でしょうねっ! 落ち着いたレイ・ブラウンの4ビートウォーキングにタイミングが素晴らしいエド・シグペンのドラミングが、全く素晴らしいと思います。
 メンバーの凄い実力がしっかりと記録された、これも名演でしょうねぇ~♪

A-4 Roundalay
 ちょっと神妙なイントロからジワジワと滲みだしてくるモダンジャズの濃厚なムードは、ブルーノートあたりの新主流派のイメージさえ漂う隠れ名演です。とにかくクラーク・テリーの温故知新なプレイが最高ですよ。フレディ・ハバードやリー・モーガンでさえ、このファンキーで静謐な表現は、手の届かない世界じゃないでしょうか。
 そしてオスカー・ピーターソンがじっくり展開されるバンドのグルーヴに逆らうように、強烈な早弾きと強引なスクランブル! それに呼応して楽々と山場を作ってしまうドラムスとベースのコンビネーションも強い印象を残します。特にレイ・ブラウンのペースワークが強烈に前衛ですよっ!
 聴くほどに、このメンバーの実力とヤバい世界に圧倒されると思いますが、それは難しさよりも、楽しさが優先されているあたり、特筆物です。

A-5 Mumbies
 前曲のシリアスムードから一転、これもクラーク・テリーがウリにしている、言語明瞭なれど意味不明という独特のボーカルが楽しすぎます。
 これは文章よりも、とにかく聴いていただくしかない至芸なんですが、しいて言えばタモリのハナモゲラ語の元ネタとでも申しましょうか♪♪~♪ ここでは軽いゴスペル調も心地良い、実にスイングしまくった演奏で、オスカー・ピーターソン以下のトリオもノリノリですよ。

B-1 Mack The Knife
 ジャズ者ならば皆、心ウキウキのスタンダード曲ですから、このメンバーの演奏にも抜かりはありません。絶妙のドライヴ感がたまらないオスカー・ピーターソンのイントロから、クラーク・テリーのミュートトランペットが最高のメロディフェイクを聞かせれば、ツボを押さえたレイ・ブラウンのペースワーク、そしてエド・シグペンが素晴らしいドラミングで、がっちり脇を固めていきます。
 既に述べたようにクラーク・テリーのミュートはマイルス・デイビスに影響を与えたことが明瞭ですし、途中では十八番の駆け足スタイルも鮮やか♪♪~♪ そして終盤でのオスカー・ピーターソンとのコンビネーションも白眉だと思います。
 
B-2 They Didn't Believe Me
 相当にシブイ雰囲気のスタンダード曲ですが、初っ端から華麗なオスカー・ピーターソンのピアノがスローテンポで美しくメロディをフェイクしてくれるだけで、なんか幸せな気分になりますねぇ~♪
 そして途中から寄り添ってくるベースとドラムスに乗っかる感じで、実に素直にメロディを吹いてくれるクラーク・テリーのフリューゲルホーンの美しさ! この感情表現の奥深さには完全降伏です。
 決して派手なところが無いのに、これほど秀麗な演奏はないと思えます。

B-3 Squeaky's Blues
 これもバンドメンバー各人が秘術を尽くした即興のブルース演奏!
 繊細にして躍動的なクラーク・テリーのミュートトランペットが素晴らしく、途中では十八番のマーブルチョコレートのフレーズも出しまくり♪♪~♪
 またエド・シグペンのタイトにスイングするドラミングが、もう最高! ですからオスカー・ピーターソンも豪快なドライヴ感に徹した物凄さですし、土台を固めるレイ・ブラウンの奮闘も流石だと思います。
 これ、その現場に居たら歓喜悶絶で、失神寸前でしょうね。
 
B-4 I Want A Little Girl

 そして一転、これは私の大好きな演奏で、温故知新の極みつき演じるクラーク・テリーのラッパの響きが、実に琴線にふれまくりのメロディしか吹かないのです。
 ゆったりとしたテンポながら、相当に強いグルーヴがファンキーな味わいを醸し出していますし、オスカー・ピーターソンもじっくりと構えて熱い心情吐露!
 ですからラストテーマへと繋げていくクラーク・テリーの匠の技もイヤミ無く、大団円のハイノートが痛烈にヒットして、あぁ、良いなぁ~~~♪

B-5 Incoherent Blues
 オーラスはA面ラストを飾っていたクラーク・テリー流儀のハナモゲラ語が、スローブルースで楽しめるという、実に味わいのボーカル曲です。
 この、オトボケなフィーリングがマジに凄いという世界は、クラーク・テリーを聴く楽しみのひつでしょうねっ♪♪~♪ パックのリズム隊が相当に真剣なのが、かえって不思議な可笑しみなのでした。

ということで、これも名盤の中の大名盤! 特にクラーク・テリーの諸作中では一番に聴き易く、楽しいアルバムだと思います。

もちろんオスカー・ピーターソンにとっても代表作でしょうし、円熟していた「黄金のトリオ」の絶頂期が記録されたセッションでもあります。とにかくゲストを加えても、バンドの一体感が最高のコンビネーションで輝きまくっているのです。

メッチャクチャに不景気の新年度スタートではありますが、こういう屈託のないスイング感こそが、今の世相や仕事には必須だと、心に誓うのでした。

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ローランド・カークの涙は溢れて

2009-03-31 10:34:16 | Jazz

The Inflated Tear / Roland Kirk (Atlantic)


ローランド・カークの数あるリーダー作の中で、恐らくは一番に安定感のある、つまり普通に聴いて違和感の無い名盤が、このアルバムじゃないでしょうか? 実際、ガイド本でも推薦されることが多いように思います。

なにしろローランド・カークという天才は、ジャズという定義に縛れない自由な感性が強く、それは盲目という現実との関連は否定出来ないでしょう。それゆえにリスナーは妙に構えてしまうことも、また否定出来ません。

このジャケ写からも強い印象を受けてしまう、様々に独自考案した管楽器の同時吹きとか、他にもいろんな楽器を自在に操るという、ちょいとゲテモノ系の演技演出も、聞かず嫌いの要因だと思います。

しかし、一端虜になったが最後、全てを聴かずに死ねるかの代表選手かもしれません。そしてこのアルバムは、その入口には最適で、演目も1曲を除いてローランド・カークのオリジナルです。

録音は1968年11月30日、メンバーはローランド・カーク(fl,ts,Manzello,strich,cl,etc.)、ロン・バートン(p)、スティーヴ・ノボセル(b)、ジミー・ホップス(ds) という当時のレギュラーバンドに、ディック・グリフィン(tb) が部分的に参加しています。

A-1 The Black And Crazy Blues
 陰鬱な、ちょっとニューオリンズあたりの葬列の音楽みたいなメロディが印象的ですが、ローランド・カークはソプラノサックスが猫の鳴き声のように響く、おそらくはマンゼロという楽器を吹いているのでしょう。とにかく、その切々としたメロディの魅力が心に滲みこんでまいります。
 ロン・バートンのブルースロックな、如何にも粘っこいピアノもイヤミがギリギリの素晴らしさ♪♪~♪ 終盤ではローランド・カークの得意技という複数管同時吹きによるホーンのハーモニーが被さってきますから、このハートウォームな雰囲気は最高です。
 ちなみにローランド・カークは自分の葬式には、この曲を演奏して欲しいと遺言していたか……。さもありなんの感涙です。

A-2 A Laugh For Rory
 冒頭には短く、ローランド・カークの愛する息子の声が入っているとおり、フルートによる子供向けの曲のような、ちょいとキュートなメロディが印象的です。
 しかしそれが一転、アドリブパートに入っては躍動的な4ビートでウネリの至芸を披露してくれるんですねぇ~♪ 唸り声を巧みにフルートの音色とシンクロさせるあたりは、もっと聴いていたいと思うほどです。
 またロン・バートンの正統派ジャズピアノの疾走も良い感じ♪♪~♪

A-3 Many Blessings
 野太いテナーサックスが咆哮する、ジャズの中のモロジャズ演奏!
 幾何学的なテーマアンサンブルを経て突入するアドリブパートでは、あの息継ぎ無しにジルジルと吹きまくる、ローランド・カークの超人的な大技が満喫出来ますし、なによりも真っ向勝負の姿勢が最高です。
 ロン・バートンのピアノも極めて真っ当なスタイルを追求していますが、それはドラムスやベースも同様ですから、ローランド・カークの真の実力が認識されると思います。 
 
A-4 Fingers In The Wind
 これが信じられないほどに静謐で美しいメロディの隠れ名曲♪♪~♪ それをフルートでじっくりと奏でてくれるローランド・カークが神様に思えるほどです。背後を彩るロン・バートンのピアノが、これまたイヤミのギリギリという十八番がニクイほどです。
 う~ん、それにしても、ここで遺憾なく発揮されるローランド・カークの美しき感性は、所謂ビューティフル♪♪~♪

B-1 The Inflated Tear
 アルバムタイトル曲は最初、ちょっと前衛的な打楽器やベースの絡みが危ない雰囲気ですが、それが終わるとローランド・カークが複数管同時吹きで重厚なハーモニーを響かせ、じっくりとした悲しいメロディを提供してくれます。
 いったい、どんな楽器を吹いているのか分からないのが悔しいほど、それは哀切の「歌」なんですねぇ……。そして複数管同時吹きによるアクセントの上手い使い方とか、本人の激情が迸ったような叫び声的な台詞云々!
 完全に作り物の世界かもしれませんが、これもジャズとして充分に楽しめると思います、。

B-2 The Creole Love Call
 収録曲中、これだけがデューク・エリントンの有名なオリジナル曲です。そしてローランド・カークとバンドは、作者の意図を大切にした南部風のムードやゆったりしたジャズの味わいを徹底追及! もちろんローランド・カークは複数管同時吹きで絶妙のエリントンハーモニーを再現し、リズム隊も素晴らしいジャズの本質を演じてくれます。
 あぁ、この和みとジャズを聴く喜びの満喫感♪♪~♪ 様々な楽器を吹きながら、しぶといアドリブをやってしまうローランド・カークにも脱帽ですし、それゆえにカルテットとは思えないバンドカラーが見事ですねっ♪

B-3 A Handful Of Fives
 アップテンポの躍動的な演奏で、ソプラノサックス系の音が出るマンゼロという楽器を使い、モード系のアドリブに専心するローランド・カークに激しく対峙するリズム隊という構図は、完全にジョン・コルトレーンのバンドを模倣しているようです。
 というか、これは「愛のある」パロディ?
 ちなみにローランド・カークは、この手の演奏をライブの現場では定番にしていたほどのエンタメ系でもありますが、もちろんそれは真摯なジャズ魂の発露でしょうね。そう思う他は無いほどに楽しいです。

B-4 Fly By Night
 これまたジョン・コルトレーン風のモード系バンド演奏で、ディック・グリフィンのトロンボーンが加わっている所為でしょうか、ちょいとブルーノートの新主流派っぽい雰囲気です。
 特にロン・バートンのピアノは小型マッコイ・タイナー! そしてベースはレジー・ワークマン、ドラムスはジョー・チェンバース? という目隠しテストの結果が出たとしても、あながちミスとは……。
 もちろんローランド・カークはテナーサックスで熱演です。

B-5 Lovellevelliloque
 なんだか意味不明の曲タイトルですが、演奏そのものはアップテンポの正統派モダンジャズですし、モードを使いながら、独特の痙攣フレーズを連発して山場を作るローランド・カークは、ここでもジョン・コルトレーンに帰依しているようです。
 それはロン・バートン以下のリズム隊にしても同様なんですが、ここまでの流れをジョン・コルトレーンの「物真似ごっこ」と決めつけては、ミもフタもないでしょう。素直に聴いて熱くさせられる名演だと思いますが……。

ということで、終盤の3曲はちょっと同一の雰囲気がマンネリ気味とはいえ、なかなか正統派として楽しめアルバムだと思います。それはローランド・カークの資質を尊重しながら拡大解釈したとしか思えないジョエル・ドーンのプロデュース、それを信頼して好きなことをやってしまったローランド・カークの潔さという、上手い成功例じゃないでしょうか?

それゆえに受け止められない部分も、確かにあると思います。しかし、そのちょっと突き抜けた感性は、やはりジャズ者の琴線にふれるでしょう。

ちなみにローランド・カークのライブは素晴らしく、それに接するとスタジオ録音が虚しくなるとまで言われますが、私は体験したことがありませんし、確かにライブ盤に記録された熱いギグは魅力的ですが、スタジオレコーディングも、ある意味で完成された独特の世界が、どんなアルバムにも表出されていると思います。

その強烈な存在感ゆえに、なかなか虚心坦懐に聴けないローランド・カークの作品中、これは例外的にストレートな仕上がりじゃないでしょうか。名盤扱いもムベなるかな!

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ウェス・モンゴメリーの凄い映像集

2009-03-30 11:46:52 | Jazz

Wes Montgomery All Stars Live In Hamburg 1965 (Jazz Shots = DVD)

最近の復刻は特に映像物でも活況らしく、ついにこんなブツまで登場! 昨日発見して、速攻でゲットしてきました。

内容はウェス・モンゴメリが1965年に招かれた欧州巡業の日々から、メインはタイトルどおりにドイツでのテレビショウという、超お宝映像がモノクロで約33分♪♪~♪ これは以前、死ぬほど画質の悪いブートビデオで出回っていたこともありますが、今回は一応、オフィシャルということで、画質は良好♪♪~♪

そしてボーナストラックとして、これはお馴染み、同年のイギリスにおけるテレビショウからウェス・モンゴメリーのカルテットによる演奏が約35分入っていますが、既に他メーカーでDVD化済み映像のリマスターです。

さらにもうひとつ、これもブートビデオでは定番という、アメリカでの1967年のテレビショウから1曲がオマケです。

☆1965年4月28日、ドイツでのテレビショウ
 メンバーはウェス・モンゴメリー(g)、ハンス・コラー(as)、ジョニー・グリフィン(ts)、ロニー・スコット(ts)、ロニー・ロス(bs)、マーシャル・ソラール(p)、Michel Gaudry(b)、Ronnie Stephenson(ds) という超豪華! 結論から言うと、主役はウェス・モンゴメリーとは言いながら、他のメンバーの見せ場も存分に用意されいますし、既に述べたように画質はAランク♪♪~♪ カメラワークも、こちらが見たいところを、しっかりと映し出しています。

01 Blue Grass
 三々五々、スタジオに参集してくるメンバーは普段着姿で、英語、ドイツ語、フランス語がゴッタ煮の会話から、既に和気藹々の良い雰囲気です。チューニングでのスケール練習で、物凄いフレーズをさらりと演じるのはマーシャル・ソラール!
 そして始まるのが、ロニー・ロスが書いたシビレるハードバップの隠れ名曲で、躍動的なリズムに乗っかって痛快なサックス陣の合奏にはワクワクさせられますよ♪♪~♪
 さらにアドリブパートでは、軽い感じのウェス・モンゴメリーは挨拶代わりかもしれませんが、続くロニー・スコットは本気度の高い熱血節ですし、ハンス・コラーは本来のクールスタイルから激情派に転向していたツッコミを披露!
 しかし後を引き継ぐロニー・ロスのバリトンサックスは自分で苦しんでいるようですねぇ……。う~ん、不調なのか……? と思っていると、ジョニー・グリフィンが不滅のブッ飛ばし! マーシャル・ソラールが十八番のスクランブルなピアノも強烈です。
 そして最後にはウェス・モンゴメリーのオクターブ奏法がドラムスを翻弄するソロチェンジですよっ♪♪~♪ 映像では、いとも簡単に物凄いギターワークを演じるあたりに、ますます仰天させられます。ドラマーも必死ですが、間髪を入れずのラストテーマの合奏も最高!
 各人のアドリブは短いのですが、このカッコ良さ! その密度の濃さにシビレがとまりません♪♪~♪

02 On Green Dolphen Street
 これはマーシャル・ソラールがメインのトリオ演奏で、モダンジャズでは良く知られたスタンダード曲を素材にしながら、綿密なアレンジやキメが怖いほどに決まっているところから、このトリオは当時のレギュラーだったのかもしれません。
 アップテンポでの激しい3者の絡み、マーシャル・ソラールの唯我独尊というメチャ弾きは好き嫌いがあるかもしれませんが、ドラムスとベースもヤバイほどに真摯なジャズ魂を発散させた名演だと思います。
 それを見ているサックス陣のニンマリ顔も印象的ですね♪♪~♪ このあたりは映像作品の良さでしょう。もちろんカメラワークも秀逸ですよ。

03 Blue Monk
 前曲から続くスタジオ内の良い雰囲気は、ウェス・モンゴメリーのギターの合の手とか、メンバー間のジョークや笑い声がなかなかのお楽しみでしょう。
 そして始まるセロニアス・モンクの有名オリジナルは、ジョニー・グリフィンが主役を務めるワンホーン演奏♪♪~♪ もしも作者がその場に居たら、ちょっと激怒かもしれないテーマのフェイクも、実はグリフィン節の一部分という熱血が、たまりません。
 剛直なビートで煽るリズム隊も素晴らしく、硬質なハードバップのブルース大会を見事に演出してくれますから、ウェス・モンゴメリーもセンスの良い伴奏のオカズ入れ、さらには短音弾きからオクターヴ奏法へと盛り上げていくアドリブが、その映像で確認すると本人のニンマリ顔も印象的です。う~ん、親指だけの弾き方とか左手の運指とコードの押さえ方が、実に興味深いですねぇ~♪ これも映像作品の楽しみだと思います。
 それはマーシャル・ソラールのピアノやベースが選ぶコードの妙、さらにタバコで一服というウェス・モンゴメリーのシブイ仕草♪♪~♪ 何度観てもシビレます。

04 Last Of The Wine
 曲間の笑いとかチューニングが、この演奏前にも印象的ですが、特にウェス・モンゴメリーが弾いてしまうバラード系歌物フレーズの一節が良い感じ♪♪~♪
 そして始まるのが、ロニー・ロスが書いた典型的なモード曲で、例えば「So What」調の雰囲気ですから、作者本人の苦しんだバリトンサックスに続いて、実に軽やかに飛翔していくウェス・モンゴメリーのギターが鮮やかです。実際、映像で確認出来るフレーズの運指を見ているだけで、ギター好きならば血が騒ぐでしょう。こういう天才にはモードもフリーも関係無いというジャズ魂が凄いと思います。
 また独特の浮遊感が魅力というハンス・コラーのモード吹きも痛快至極! 背後から襲いかかってくるサックス陣のリフも楽しく、続くマーシャル・ソラールのピアノにしても、恐ろしいばかりのテクニックに裏打ちされたドライヴ感が凄すぎ!
 締め括りのフレーズを軽々とやってしまうところから、繋ぎのバラードをちょこっと聞かせるウェス・モンゴメリーも憎めませんね♪♪~♪

05 West Coast Blues
 そして最後はウェス・モンゴメリーが書いたワルツビートのブルースで、重厚なサックス陣の合奏を従え、自然体のハードバップフレーズを連発する作者のギターは、やっばり凄いですねぇ~♪ 特に親指ピッキングだけで、これだけの強いアタックと音色のコントロールを演じてしまうのは驚異的だと思います。十八番のオクターブ奏法も冴えまくりですよ。
 映像で確認して気がつくのは、その軽い雰囲気というか、決して力まない弾き方が吃驚するほどです。

ということで、今回の発掘はここまでなんですが、映像では曲の終りに、まだまだ続きがありそうな雰囲気です。なんか楽しい余韻がニクイですよ。

画質&音質が共に良好ですから、これはぜひともご覧くださいませ。

☆1965年3月25日、イギリスでのテレビショウ
 これは既に度々パッケージ化されてきたソースで、人気ジャズ番組だった「JAZZ 625」からの発掘モノクロ映像♪♪~♪ 当然ながら画質はAランクですし、カメラワークも健実です。
 メンバーはウェス・モンゴメリー(g)、ハロルド・メイバーン(p)、アーサー・ハーパー(b)、ジミー・ラブレイス(ds) という、この欧州巡業ではレギュラーのバンドですから、演奏の纏まりやアドリブの充実度には安定感が抜群ですよ。

06 West Coast Blues / Theme
07 Yesterdays
08 Jingles
09 'Round Midnight
10 Twisted Blues
11 Full House
12 West Coast Blues / Theme

 上記の演目の中では、じっくりと歌心を醸成していく「Yesterdays」や「'Round Midnight」が、今や語りつくされた名演ですが、強烈なグルーヴが噴出した「Jingles」でのウェス・モンゴメリーこそが、最も真髄だと思います。とにかく流麗な短音弾きのフレーズ展開からオクターヴ奏法、さらに白熱のコード弾きと展開される怒涛のアドリブは圧巻! それが良好な映像で確認出来るのですから、長生きはするもんです。
 共演者では基本はモード節ながら、実にセンスの良いハロルド・メイバーンが熱演ですし、若気の至りも好ましいハービー・ハーパー、ロックやR&Bの味わいも秘めたジミー・ラブレイスの4ビートドラミングが、やはり本場の底力でしょう。
 お目当ての「Full House」は、あの名盤テイクに比べれば軽い感じですが、それでもウェス・モンゴメリー独特の開放感のあるアドリブ展開には、美メロのフレーズが満喫出来ますし、中盤からのオクターヴ奏法の乱れ打ち、そして終盤のバンドアンサンブルが、実に楽しいです。
 映像全体としては、既発のブツよりも映像がイマイチ劣化している部分もありますが、なによりも、あのフレーズはこうやって弾いていたのか!? という両手の使い方を見せてくれるウェス・モンゴメリーは凄い人!

☆1967年6月、アメリカのテレビショウ
 大ヒットアルバム「A Day In The Life (CTI)」に関連したテレビ出演の映像で、当時はテレビトラックと呼ばれていたカラオケのオーケストラをバックに、ウェス・モンゴメリーが短い演奏を聞かせてくれます。

13 Windy

 もちろんこれは尻切れのフェードアウト演奏になりますが、ウェス・モンゴメリーのアドリブはスタジオバージョンとは完全に異なる、その場のリアルな生演奏だと思います。
 ただし画質はB……。しかも以前に出回っていたブートビデオではカラー版もあったはずですが、ここではモノクロというのが残念です。

ということで、なかなか貴重で楽しめるDVDだと思います。

ちなみに曲のチャプターは、ジャケット裏解説に従ってここに記載しましたが、実際は「06」からがボーナストラック扱いとなり、チャプター番号が「01」からの仕切り直しになっていますから要注意でしょう。しかし普通に鑑賞するには、何ら問題はありません。

こういうブツが突然に発売されるのは大歓迎♪♪~♪

そして、これを観ても、同じように弾けるわけではありませんが、ついついコピーしたくなって、ギターを抱えてしまうのでした。

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実直派カーメル・ジョーンズ

2009-03-29 09:20:46 | Jazz

Jay Hawk Talk / Carmell Jones (Prestige)

ジャズ喫茶の人気盤になる条件として、ちょっと知名度の低い実力者の派手なリーダー盤といういことになれば、本日ご紹介のアルバムも、そのひとつでした。

リーダーのカーメル・ジョーンズは1960年頃から西海岸で活躍していた黒人トランペッターで、ビックバンドの一員として、あるいは自己名義のアルバムも出している実力者でしたから、ついに1964年になってホレス・シルバーのバンドレギュラーに抜擢され、ニューヨークへと進出することになったようですが、同バンドでの素晴らしい演奏は名盤「Song For My Father (Blue Note)」に、しっかりと記録されています。

で、このアルバムは、ちょうどその当時に吹き込まれたリーダー作で、録音は1965年5月8日、メンバーはカーメル・ジョーンズ(tp)、ジミー・ヒース(ts)、バリー・ハリス(p)、ジョージ・タッカー(b)、ロジャー・ハンフリーズ(ds) というバリバリの面々です。

A-1 Jay Hawk Talk
 当時流行の典型的なジャズロック演奏ですが、ジョージ・タッカーのハードエッジなペースワークを要にした、かなり硬質のグルーヴが心地良い限り!
 そしてカーメル・ジョーンズのトランペットが真っ黒なモダンジャズの真髄を聞かせてくれますよ♪♪~♪ なんというか、エグイ分かり易さなんですねぇ~♪
 するとジミー・ヒースが、これまた過激なツッコミに下品なフレーズ展開という熱血的な素晴らしさ! それに乗っかってしまったようなバリー・ハリスの戸惑いも結果オーライというか、それもこれも、ジョージ・タッカーの強烈な存在感ゆえだと思います。
 尻切れとんぼ気味のラストテーマの潔さも印象的ですね。

A-2 Willow Weep For Me
 そして、せつせつと真っ黒に演じられブルース歌謡の名曲が続きます。テーマメロディを素直にフェイクしていくカーメル・ジョーンズは、やはりクリフォード・ブラウン系の名手の自覚が見事!
 続くバリー・ハリスも本領発揮の地味~な良さが滲み出る名演ですし、ここでもエグイばかりのジョージ・タッカーが、激烈なペースワーク!
 全体はシンプルな演奏に仕上げられていますが、ハードバップの王道が楽しめます。

A-3 What Is This Thing Called Love
 これも有名なスタンダード曲にして、モダンジャズではクリフォード・ブラウンの決定的な名演がありますから、カーメル・ジョーンズも神妙に全力を尽くした快演になっています。
 ストレートなテーマアンサンブルからジミー・ヒースがジルジルと吹きまくるテナーサックスの真っ向勝負! 初っ端からハッスルしまくったリズム隊の痛快4ビート! そして懸命に前向きなアドリブを披露するカーメル・ジョーンズの果敢な挑戦!
 全てが正統派ハードバップとして、好感の持てる演奏だと思います。

B-1 Just In Time
 これまたリー・モーガンの隠れ名演が残されている軽やかなスタンダード曲ということで、カーメル・ジョーンズにしても自信に溢れたテーマ吹奏から、既に熱いものが感じられます。そしてアドリブパートに至っては、流麗なフレーズ展開で、完全なる歌心優先主義を披露するのです。
 また露払いを務めるジミー・ヒースのテナーサックスも正統派のイキイキとしたものですし、バリー・ハリスの余裕たっぷりにスイングするピアノも最高♪♪~♪

B-2 Dance Of The Night Child
 カーメル・ジョーンズが書いたマイナー調のファンキー曲で、ハードエッジなアクセントが冴えたリズム隊のキメが、テーマメロディをさらに熱いものにする快演が、これです。
 アドリブ先発のバリー・ハリスも、そのあたりは心得たハードドライヴな節回しが最高ですし、グイノリにして強靭なジョージ・タッカーのペースワークにも、グッと惹きつけられるでしょう。
 そしてカーメル・ジョーンズが渾身のファンキートランペット! クリフォード・ブラウン直系のフレーズに加え、ちょっと硝煙反応に近いような、独自の個性もしっかりと聞かれますよ。続くジミー・ヒースのダークなテナーサックスも高得点!
 さらにお待ちかね、ジョージ・タッカーの剛球ペースソロが凄いです! そのまんまの雰囲気で繋がっていくラストテーマのカッコ良さも、実にたまりませんねっ♪♪~♪

B-3 Beepdurple
 これも当時の流行だったラテン系ハードバップですが、アドリブパートはアップテンポの正統派4ビート♪♪~♪ この軽やかなノリをしっかりと熱くしていくジョージ・タッカーのペースも、一際に強い印象を残します。
 そしてカーメル・ジョーンズのトランペットが伸びやかに歌うんですねぇ~♪ ホレス・シルバーのバンドでは同僚のドラマーだったロジャー・ハンフリーズとのコンビネーションもバッチリですから、禁断のブラウニーフレーズの連発も大歓迎です。
 さらに熱烈前進のジミー・ヒース、ビバップ魂を継承しているバリー・ハリス、トドメの地響きペースソロを披露するジョージ・タッカーと続くアドリブの痛快さは、演奏全体をグングンと熱くしていくのでした。

ということで、演目の流れにメリハリの効いたA面、如何にもハードバップど真ん中のB面というアルバム構成は人気盤の必要十分条件を満たしていますから、ジャズ喫茶では鳴りだした瞬間にお客さんが飾ってあるジャケットを思わず見てしまう情景が日常茶飯事でした。

確かアナログ盤時代は日本未発売だったんじゃないでしょうか? そのあたりもジャズ喫茶の人気盤の必須条件でしょうねぇ。現在のCD化の状況は不明ですが、聴けば忽ち気のなること、請け合いです。

ちなみにカーメル・ジョーンズはこの後、欧州へと活動の拠点を移してしまい、現地でも幾つかの録音を残していますが、結局は短かったニューヨーク時代が最高の輝きだったと思います。そのあたりはブッカー・アーヴィン(ts) やチャールズ・マクファーソン(as) との共演盤等々にも鮮やかに記録されていますので、いずれは取り上げる所存ですが、こういう実直派が本場の第一線では、必ずしも満足に活動出来なかった当時の状況の厳しさは……。

後頭部ショットのジャケットも暗示的ですねぇ。

しかしそういう人こそが、ジャズ者には気になる存在として、残された演奏はいつまでも聴き継がれるものでしょう。このアルバムも、そのひとつと確信しています。

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ホーキンス&ウェブスターの最高タッグ

2009-03-28 12:23:17 | Jazz

Coleman Hawkins Encounters Ben Webster (Verve)

昨日はトロンボーンの素敵な協調盤を取り上げましたが、その後、私は自分で刺激され、こんなアルバムまで聴いてしまったです。

コールマン・ホーキンスとベン・ウェブスターは、ジャズが本当にジャズらしくなった1930年代からの大御所テナーサックス奏者として、何時の時代に聴いても最高のプレイヤーでしょう。モダンだ、モードだ、というジャンルなんて、この2人がひとつの音を出した瞬間に虚しいものへ変わり果てるのですから!

で、このアルバムは、その2人が共演しての熱いジャズ魂が、最高の形で記録された人気盤♪♪~♪

録音は1957年10月16日、メンバーはコールマン・ホーキンス(ts)、ベン・ウェブスター(ts)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、アルヴィン・ストラー(ds) という極上のバンドです。

A-1 Blues For Yolande
 オスカー・ピーターソンがリードするリズム隊がニューオリンズ風のR&Bグルーヴを設定した後、巨匠2人のテナーサックスが堂々のブルースリフを吹いてくれる、ただそれだけで大満足してしまう演奏です。あぁ、このゆったりとして懐の深い、これぞっ、ジャズ本来の魅力に酔わされますねぇ~♪
 そしてコールマン・ホーキンスの力んだ節回しに続いては、ベン・ウェブスターのマイルドなシビレ節! このアドリブの似て非なる個性の饗宴にはテナーサックスの真髄が、間違いなく潜んでいると感じます。

A-2 It Never Entered My Mind
 モダンジャズではマイルス・デイビスの名演が決定版して良く知られたメロディも、ベン・ウェブスターがこの曲の真相を明かしたような最高のメロディフェイクを聴いてしまえば、尚更に感銘するほかはありません。
 実際、ここでのソフトな情感の溢れる泉の如きインスピレーションは極上♪♪~♪ それに続くコールマン・ホーキンスの男気の吹奏にも、ハードボイルドな感傷がたっぷりと表現されていますから、あぁ、こういう生き様は男の憧れでしょうか……。
 こういう人に、私はなりたい!
 ラストテーマの消え入りそうな心情吐露も、ベン・ウェブスターの十八番にして余人の真似出来る境地ではないでしょうね。リズム隊のシブイ助演も全篇で味わい深いと思います。

A-3 La Rosita
 キャバレームードのラテン曲ですが、ここまでソフト&ディープに演奏されたのも、この2人ならではの幸せな結末でしょう。とにかくリズム隊の全て分かっているサポートも素晴らしく、テーマアンサンブルからコールマン・ホーキンスのメロディフェイクの雰囲気の良さは畢生です。硬質なサブトーンが冴えまくりですよっ♪♪~♪
 そして、そこに寄り添ってくるベン・ウェブスターの存在感も流石の一言! もうここだけで全てが最高としか言えません。
 またアドリブパートでの4ビートの力強さは、グルーヴィなミディアムテンポのお手本ですから、ここも侮れませんねぇ。 

B-1 You'd Be So Nice To Come Home
 モダンジャズの演奏ではアート・ペッパーが最高とされる有名スタンダードですが、どっこい、このベン・ウェブスターのメロディフェイクには完全に脱帽させられるでしょう。
 オスカー・ピーターソンが作りだす小気味良いイントロから続くテーマ演奏こそが、この曲の最も美味しい部分を見事に抽出したものだと思います。じっくりと弾んだリズム隊のスイング感も抜群ですから、御大のアドリブも流石の素晴らしさですよ♪♪~♪
 そしてオスカー・ピーターソンの思わずニヤリのアドリブから、いよいよ登場するコールマン・ホーキンスが、何時もの力みを控え目にしつつも、実にハートウォームな存在感♪♪~♪
 それゆえにラストテーマのアンサンブルでは、ますます心がジンワリと温まってくる大名演だと思います。
 
B-2 Prisoner Of Love
 これがまたテナーサックスによるジャズの魔法に酔わされるという、決定的な名演です。意図的にスイングビートを強調したリズム隊も分かっていますし、御大両巨匠がサブトーンと歌心、任侠と男気の共演という、まさに昭和残侠伝! いやいやそんな泥クサイもんじゃないですね。スマートでジェントルな良さもたっぷりという、ハードボイルドのジャズ的な展開とでも申しましょうか、最高です。
 ちなみに先発でテーマメロディをリードしていくのがコールマン・ホーキンス、ラストテーマをしぶとくフェイクするのがベン・ウェブスターだと思いますが、そんな些細なことは、演奏全体の大きな魅力の前に関係ないでしょう。

B-3 Tangerine
 通常はアップテンポでの演奏というスタンダード曲も、この両巨頭にかかってはスローテンポの歌心優先主義というムードがたまりません。オスカー・ピーターソンの伴奏も最高に味の世界ですよ♪♪~♪
 コールマン・ホーキンスが抑えた気味に感傷的なメロディを綴れば、ベン・ウェブスターは十八番のマイルドなサブトーンが魅力全開♪♪~♪ このたっぶりとした表現は、まさにベテランの貫禄とは一概に決めつけられない奥深さが凄いと思います。
 ふふすすすぅ~、というテナーサックスの魅力が、ここに極まっていますね。
 
B-4 Shine On, Hervest Moon

 この大らかなノリこそが、アルバムの締め括りに相応しいという、素敵なスタンダード曲の大人の解釈♪♪~♪
 少しずつ強いグルーヴを作りだしていくリズム隊に気持ち良く乗っかってしまう2人の巨匠という、実に憎めない展開が楽しいですねぇ~♪ 穏やかさと力みのバランスも秀逸だと思います。

ということで、キャリア的にはコールマン・ホーキンスが先輩という位置付けではありますが、お互いの尊敬の念が滲み出たハートウォームな雰囲気は最高! ベン・ウェブスターにしても決して二番煎じでは無い、堂々の個性を見事に発揮していますから、慣れ合いなんてこともありません。

大物対決にありがちな肩透かしも全く無いですし、セッション全体の凄味や緊張感が見事にリラックスした良い感じに収斂しているのです。

ちなみにこの時のレコーディングには他にも凄い演奏が残されていて、それは他アルバムやSP盤等々に分散収録されいますので、要注意でしょう。そこには一人舞台のワンホーン演奏もあるのですが、おそらく最近の復刻CDならば上手く纏められているんじゃないでしょうか?

とすれば、これはぜひとも聴いていただきたい名盤の中の大名盤♪♪~♪

実は告白すると、このアルバムの存在を知った当時の私は、ギンギンのガチンコバトル盤だと思い込んでいたのですが、一聴して、このシブイ男の世界にKOされた過去があります。 ぜひ、どうぞ!

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春の和みのJ&K

2009-03-27 12:32:40 | Jazz

K + J.J/ Kai Winding & J.J. Johnson (Bethlehem)

同一楽器プレイヤー同士のバンドの演奏といえば、ジャズでは対決バトル物がお決まりですが、しかし中には飛びぬけて素晴らしい協調性を重んじたグループも確かにありました。

例えば本日の主役たるカイ・ウィンディングと J.J.ジョンソンの2人は、共に優れたトロンボーン奏者ですが、彼等が1954年秋頃から組んでいたレギュラーバンドも、そのひとつでした。

もちろんお互いを意識したライバル的なアドリブ合戦は、その端緒となったライプ盤「An Afternoon At Birdland (RCA)」にも記録されいるとおり、熱いものがあります。しかし基本は、対決よりもアンサンブルの面白さとかアドリブとアレンジの両立という、非常にスマートな楽しさが魅力だったと思います。

さて、このアルバムは、そうした長所が遺憾なく発揮された代表作でしょう。

録音は1955年2月26&27日、メンバーはカイ・ウィンディング(tb,arr)、J.J.ジョンソン(tb,arr)、ディック・カッツ(p)、ミルト・ヒントン(b)、ウェンデル・マーシャル(b)、アル・ヘアウッド(ds) という素晴らしいバンドです。

 A-1 Out Of This World
 A-2 Thou Swell
 A-3 Lover
 A-4 Lope City
 A-5 Stolen Bass
 B-1 It's All Right With Me
 B-2 Mad About The Boy
 B-3 Yes Sir, That's My Baby
 B-4 That's How I Fell About You
 B-5 Gong Rock

上記のような演目のアレンジはA面が J.J.ジョンソン、B面がカイ・ウィンディングということで、似て非なる資質が上手く別れて楽しめるようになっています。

もちろん演奏では両者のトロンボーンが素晴らしいアドリブの競演を聞かせてくれますが、そのスタイルは小刻みなフレーズを使い、メカニカルなキメを多用するのが J.J.ジョンソン、闊達で躍動的なのがカイ・ウィンディングという聞き分け方を、私はしています。

ただし私有のこのアルバムはモノラルミックスですから、そこに拘ると、ちょいと素直に楽しめません。ゆえに本日は曲毎の文章は割愛した次第です。

演奏そのものに仕込まれたアレンジの妙、ハーモニーの魔法、トロンポーンという楽器特有のホノボノ感と爆裂熱血の豪快な音の楽しみ♪♪~♪ そういうものに身も心も自然の委ねられてしまう傑作トラックばかりだと思います。

例えば冒頭の「Out Of This World」は良く知られたメロディのスタンダード曲ですから、ここでのアンサンブルは尚更に楽しめるわけですが、それを見越したかのように、明確なアドリブパートが現れないという潔さ!

そして続く「Thou Swell」では、アップテンポのアドリブ合戦という流れが最高の目論見として秀逸です。

その意味ではB面初っ端の「It's All Right With Me」が、数多残されているジャズバージョンの中でも一際の名演として誉れが高く、実際、シブイ思わせぶりから颯爽としたテーマアンサンブルと名人両雄の躍動的アドリブ合戦が堪能出来ますし、これは以降、例えばカーティス・フラーやジャズテット等々の元ネタ的な演奏としても有名でしょう。リズム隊のシャープな弾け方も良いですねぇ~♪

さらにこのアルバムの魅力となっているのが、スローな演奏で特に顕著な室内楽的なアレンジかもしれません。例えば「Stolen Bass」や「Mad About The Boy」ではリズム隊が陰の主役というか、ベースの働きが侮れません。

またピアニストとして参加のディック・カッツの歯切れの良いプレイは、そうしたアレンジを存分に活かす絶妙のスパイスになっていると思います。もちろん如何にもハードパップな伴奏の中で、キラリと光る知的な雰囲気も良い感じ♪♪~♪

ということで、隅々にまでビシッとキマッた演奏ばかりゆえに、いまひとつのスリルが無いというご不満もございましょうが、楽しくて和やかなムードは天下逸品のモダンジャズ!

ちなみに現行CDには別テイクも収録されているそうですが、もし全体がステレオバージョンだったら、ぜひとも聴いてみたいもんです。

今日はちょいと花冷えしていますが、こういう暖かいジャズは春の和みですね。

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ピアノトリオのハリウッド的名盤

2009-03-26 11:30:01 | Jazz

My Fair Lady / Shelly Manne (Contempoaray)

オードリー・ヘプバーン主演の同名映画が好きだったので、中学時代のサイケおやじにしても、このアルバムは親しみを抱いて聴けました。私的にはジャズ入門アルバムのひとつで、それは当時、我が家に下宿していた叔父さんのコレクションでした。

題材となったミュージカル「マイ・フェア・レディ」はジュリー・アンドリュースをヒロインに、1958年3月が初舞台と言われていますし、このアルバムの録音は同年8月17日ですから、収録された演目の全てがピカビアの新曲だったというのも、今となっては驚異的ですね。つまりリアルタイムではほとんど知られていなかったメロディを魅力的なモダンジャズに変換しつつ、さらに本来の魅力を存分に引き出したというわけですから、ベストセラーは当然でしょう。逆に言えば、このアルバムによって知られた曲もあるほどです。

ちなみにメンバーはアンドレ・ブレヴィン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、シェリー・マン(ds) という強力なピアノトリオですが、アンドレ・プレヴィンは前述した映画版にも関わっていますし、このセッションでも細かいアレンジを担当したのではないかと推察しています。

A-1 Get Me To The Church On Time
 静々と最初のテーマメロディを導くピアノ、そこにガッツ~ンと被ってくるペースとドラムスの衝撃が、いきなりの快感です。そしてそれを合図に、アップテンポの激演が展開されますが、アドリブに入った部分では、アンドレ・プレヴィンが明らかに不調というか、インスピレーションが低迷した雰囲気です。
 しかしそこから少しずつ調子を上げ、終いには狂ったようにドライヴするというのは、見事な演出なんでしょうねぇ~。カウント・ベイシー調のキメにメリハリの効いた硬質なピアノタッチ、直截的なスイング感は両手をフル稼働させた、所謂バカテク派の典型! それがロイ・デュナンの素晴らしい録音で見事に楽しめます。
 そのあたりはシェリー・マンのスカっとするドラミングや実直なリロイ・ヴィネガーのペースワークにも同様に適用され、まさにツカミはOK♪♪~♪

A-2 On The Street Where You Live
 良いムードの求愛の歌が、ここではシンミリとして小粋なスイングで演じられています。とにかくアンドレ・プレヴィンのメロディフェイクが抜群♪♪~♪ 緩急自在のテンポ設定を巧みに作り上げるトリオの纏まりも最高だと思います。
 それはグイノリでグルーヴィなノリ、自意識過剰なファンキーフレーズを弾いてしまうアンドレ・プレヴィンの微笑ましさ、中盤のアップテンポのパートからスローダウンしていくところのキメのフレーズのカッコ良さ♪♪~♪ 何度聴いてもシビレます。

A-3 I've Grown Accustomed To Her Facce
 これはヒギンズ教授のネクラな独白の歌ですから、なおさらにシンミリと胸キュンのメロディが活かされた仕上がりになっています。そして流石はアンドレ・プレヴィンのピアノタッチの素晴らしさが感動的でしょう。
 彩豊かなシェリー・マンのドラミングも芸が細かく、骨太のジャズビートを維持するリロイ・ヴィネガーのペースも地味な良さに溢れています。
 全く歌心を大切した仕上がりですねぇ~♪

A-4 Wouldn't It Be Loverly
 相当にゴスペルファンキーな導入部から、このメンバーでは珍しいほどのハードバップなムードが横溢しますが、原曲は育ちの良くないイライザが本性丸出しで歌う場面でしたから、これがジャストミートなアレンジでしょうねぇ~♪
 しかしそれを知らなくとも、このゴツゴツとしたファンキーさはピアノトリオのひとつの醍醐味だと思いますし、それを可能にしているが、両手を使いきって尚更に強靭なタッチを披露するアンドレ・プレヴィンの物凄さ! 幾分、様式美に陥っているようなところもありますが、それも許せる範疇だと思います。

B-1 Ascot Gavotte
 これが初っ端から豪快にブッ飛ばした名演! オスカー・ピーターソンの黄金のトリオに一脈通じるようなアレンジと演奏のキメは、トリオの一体感も見事です。
 特にシェリー・マンのブラシが痛快ですねぇ~♪ 終盤のソロチェンジは手に汗ですよ、本当に! そして締め括りが「粋」です。

B-2 Show Me
 これまたイライザのオトボケが、このピアノトリオの洒脱な演奏で表現された快演です。 相当に凝ったアレンジが使われていますが、それを全くの自然体で演じてしまう3人の力量には、聴くほどに圧倒されるでしょう。
 あまりにもジャストにスイングするアンドレ・プレヴィンのピアノスタイルは、スイングしていないなようにも聞こえるので、例えばウイントン・ケリーあたりとは対極の違和感も否定出来ませんが、このタイプの演奏では結果オーライだと思います。
 そういう部分を上手くサポートしているペースとドラムスの存在も侮れませんね。

B-3 With A Little Bit Of Luck
 原曲はオトボケ調の楽しい歌でしたが、ここでは思いきったスローなテンポでロマンチックにメロディをフェイクしたトリオの解釈が見事すぎます。実際、この綺麗な旋律を抽出して膨らませたセンスは、最高ですよっ♪♪~♪
 アンドレ・プレヴィンのピアノは歌心の真髄、素敵なピアノタッチを存分に活かした畢生の名演だと思いますし、このアルバムの中でも、特に印象的な仕上がりでしょうねっ♪

B-4 I Could Have Dance All Night
 これはご存じ、このミュージカルの中では最も知られたメロディだと思いますから、トリオの演奏も油断は禁物! 豪快でエグイ表現ギリギリの導入部からテーマアンサンブルの凝った展開、さらにアドリブパートの溌剌としたドライヴ感が決定的です。
 しかしアンドレ・プレヴィンのピアノは、それゆえに硬直した感じがしないでもありません。タテノリ系のスイング感とでも申しましょうか、ガツンガツンと迫ってくるんですが、グルーヴィなムードが無いのです。
 まあ、このあたりは如何にも白人、西海岸派ということなんでしょうが、それゆえに大ヒットだとしたら、さもありなんでしょうか……。

ということで、アレンジと演奏のバランスも秀逸な傑作だと思います。

ただし既に述べたようにアンドレ・プレヴィンのピアノには、同じバカテク派でもオスカー・ピーターソンのようなグルーヴィな雰囲気も無く、またフィニアス・ニューボーンのような強引なドライヴ感も足りていません。

このあたりが黒人系ピアノに親しんだ後には、物足りないと感じるでしょう。

しかし全体のスカっとした雰囲気の良さやきちんとしたアレンジ、さらにキメがきっちり定められた起承転結は、やはり痛快ですし、それを完璧に演じきったトリオの潔さは魅力だと思います。

それがコンテンポラリーだけの明快な録音で作られているのも、まさに大ヒットの条件として、企画から演奏まで一貫したシステムの成功例じゃないでしょうか。

このトリオには他にも、さらにジャズっぽいアルバムが幾枚も残されていますが、やはり当時、世界で一番進んでいたハリウッド芸能界の底力を鑑みれば、これが決定的な名盤と断言致します。

本日も独断と偏見で失礼致しました。

コメント (4)
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