もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 022 東田直樹「跳びはねる思考」(イースト・プレス:2014) 感想3+

2014年11月16日 01時44分56秒 | 一日一冊読書開始
11月25日(土): 明日の沖縄知事選挙、翁長候補頑張れ! 沖縄県民、頑張れ! 辺野古基地、断固反対!

219ページ   所要時間 2:25     図書館

副題:「会話のできない自閉症の僕が考えていること」

著者22歳(1992生まれ)。千葉県在住。会話のできない重度の自閉症者でありながら、文字盤を指差しながら言葉を発していく「文字盤ポインティング」やパソコンを利用して、援助なしでのコミュニケーションが可能。13歳のときに執筆した書籍『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール)において、理解されにくかった自閉症者の内面を平易な言葉で伝え、注目を浴びる。

2ヶ月ほど前、NHKで自閉症の息子を持つイギリスの著名な作家が、著者13歳の著書によって息子を理解する目を開かれたと言って、著者を訪ねて来るドキュメントを見ていたので、図書館で目にした時、即借りることにした。感想は、微妙、優れた詩集を手にした印象である。詩集を味わうには、俺の速読による読書は馴染み難いのだ。

著者は、「線ではなく点となる時間の概念の違い」「挨拶の困難」など、自閉症者特有の障害に関する理解を求める面と、「居場所の大切さ」「人とのつながりの大切さ」「共に苦しんでくれる親への感謝」「外見による誤解への異議申し立て」「自然への親和性」など、正常かつ高い感性と表現力の両面がある。

著者のような高機能自閉症者が、外見だけで知的に低く判断され、子ども扱いされ、知的好奇心を伸ばす機会を奪われることへの苦しさへの理解を求めている。

書かれている文字の量は多くないが、詩句のように切れ味のよい繊細で洗練された言葉が、かなりの確度で心に響く。さまざまな気付きを与えてくれる。

詩集のような本なので、解読・コメントするのは難しいが、ふだん持ち歩いて折に触れ気に入ったフレーズを繰り返して覚えると良い感じだ。一方で、すぐには同意しづらい言葉も散見された。これも、詩集と同じで、気に入った詩や詩句を覚えればよいのであって、本書の全てを崇めて覚える必要はないのだ。

目次:
第1章 僕と自閉症:僕と自閉症/刺すような視線/障害を抱えて生きること/夏が来るたび/挨拶/植物/空いっぱいの青
①「壊れたロボット」のような体と向き合いながら。
第2章 感覚と世界:笑顔/乗り物/目/水が恋しい/フラッシュバック/観察/言葉/デジャブ
②音楽が、僕に言葉を運んでくれる。
第3章 他者とともに:悪い人間/涙/話せない僕の望み/絆/人の話を聞く/質疑応答/広くて狭い僕の世界
③自分が望むように、学びたかった。
第4章 考える歓び:罰/心配性/雨/新幹線の雨/夕日/空っぽな心/想像上の僕/よりどころ
④海外で初めての講演を終えて。
第5章 今を生きる:人生/苦しみ/必然と偶然/魂/失敗/自己の確立/別れと始まり
根源的な人間の豊かさ  佐々木俊尚

・時間は、過ぎ去っていくものです。限られた時間を有効に使うには、過去の時間まで未来につなげる工夫が必要なのだと思います。/けれども、僕にはそれができないのです。/僕にとっての記憶は、線ではなく点のようなものものだからだからです。十年前の記憶も昨日の記憶も変わりはありません。/失敗したこと自体は覚えていても、いつ、どんな失敗をして、自分がどうしなければいけなったのか、記憶がつながらないのです。22ページ
・僕の望みは、ただ抱きしめて「大丈夫だよ」と言ってもらうことでした。そうしてもらうことができて初めて、人間としての一歩を踏み出せたのです。/幸せな大人になれたのは、家族のおかげです。/僕が流した涙と同じくらい、家族も泣いてくれたことを、僕は忘れません。102ページ
・母は僕が泣くと「つらかったね」「悲しかったね」と言って、よしよししながら抱きしめてくれました。父や姉から、泣くなと注意されたこともありません。母の腕の中で、泣きたいだけ泣くことができたのは、本当に幸せでした。/僕の望みは。気持ちを代弁してくれる言葉かけと、人としての触れ合いだったと思います。/どんな自分も受け止めてもらえるという体験ができたからこそ、僕は壊れずに生きてこられたのでしょう。106ページ。
・僕は、相手のためだという理由で、好き勝手な意見を伝えるよりは、その人の悲しみや苦しみに、ただ寄り添うほうが、大切なこともあると感じています。/話すことよりも、聞くことのほうが難しい気がします。/話せない自閉症者は、人の話を聞くだけの毎日です。/そういう人は、知能が遅れていると思われがちですが、そうとは言い切れません。/人の話を黙って聞く、こんな苦行を続けられる人間が、世の中にどのくらいいるでしょう。116ページ
・必然と偶然は、まるで正反対のような感じですが、実はとても近い考え方ではないかと思います。/なぜなら、両方とも物事が起きてから、どうしてそうなったかの理由をあとづけするものだからです。その結果、自分にはどうしようもなかったのだと、という答えを導き出そうとします。188ページ

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