もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

5 037 宮本延春「オール1の落ちこぼれ、教師になる」(角川文庫:2006)感想4

2015年12月10日 23時47分06秒 | 一日一冊読書開始
12月10日(木):  

255ページ    所要時間 2;25    ブックオフ108円

著者37歳(1969生まれ)。

読むのは2度目。大きな文字の文庫本だ。小学校・中学校できついいじめを受け、勉強をする意味を感じられなくなり、オール1、九九すら二の段までしか言えず、漢字も自分の名前しか書けない、英語はbookのみ。中学を卒業するとすぐ働き、16歳、18歳で養父母と死別、天涯孤独となるが唯一の得意の少林寺拳法で知り合った国立大生の彼女の応援もあって、23歳で観たNHK「アインシュタインロマン」シリーズで突然物理学への憧れに目覚める。物理学をやるために大学進学を志し、定時制高校に通い、途中勉強に打ち込むため全日制の理科実験助手になる。信じられないほどの勉強への打ち込み方で、学校の先生を中心に多くの人々の協力を受けて、3年間で定時制高校を卒業して、勢いで名古屋大学理学部に現役合格してしまう。

読んでいて感じたのは、著者の学力は確かに低かったが、知能が低い訳ではなく、目標がはっきりしてそれに向かって取り組めば、やはり著者は17歳前後の高校生ではなく、23歳の大人のパワーを持っていて奇跡のような学力を身に付けることができたということ。つまり、本書は大人による受験勉強物語なのだ。そして、奇跡を実現する上で彼を支えてくれる人々との出会いがすごく重要だったということだ。それにしても著者の奥さんはえらい!

センター試験を受けた著者の勉強の方法論は理にかなっていてかなり有効だと思う。これで8割弱の点を取ったそうだ。お粗末なびりギャルの話よりもよっぽどリアルで実のある話だ。何よりも、受け身なびりギャルと違って、著者は完全に自立した状況で意志的・創造的な受験勉強を行っている!感想は3+にするか迷ったが、総合点として4にしておいた。それ以上の評価は厳しい。

本書の文章は、初めての著作と思えないほど読みやすく整っている。さすがに名古屋大学に9年間在籍していたのは、伊達ではない。ただ本書の中で著者が述べる生徒観・教師像は非常に青臭いのが気になったが、よく読めば彼が大学を出て教師になったのが36歳、そして本書を書いたのが37歳である。教職歴1年数か月! いじめられていたオール1の自分だからこそ生徒の身になる教育ができると言うのは、ちょっと早計で傲慢過ぎるだろう。教職に対する決意表明と受け止めるべきかもしれないが、文面からは「自分はすべてわかっている」としか読めない。ある意味、勘違いの書にもなっていると思う。

2007年、教師2年目の著者を「内閣教育再生会議」の委員に起用した第1次安倍内閣の教育に対する意識のおぞましいまでのお粗末さを感じてしまう。歳は食ってても教職1年ちょっとの人間を日本の教育の代表ともてはやす感覚は未熟で浅ましいとしか言いようがない。まあこれは著者のせいではないが…。

【目次】:第1章 オール1の落ちこぼれ先生ーオール1先生の授業/第2章 どん底の十代で考えたことー“いじめ”と“学校嫌い”/第3章 アインシュタインとの出会いーアインシュタインと彼女/第4章 定時制高校での猛勉強ー目標は超難関大学/第5章 オール1から大学受験へー大学受験/第6章 なぜ勉強するのかー大学生活/第7章 オール1教師の学習法ー落ちこぼれの勉強法

紹介文:中学校の通知表は「オール1」。中3の時の学力は、漢字は名前しか書けず、英語の単語は知っているのがBOOKだけ。数学の九九は2の段までしか言えない、落ちこぼれが編み出した「オール1」からの勉強法。いじめ、ひきこもりのどん底からアインシュタインのビデオに触発されて一念発起。中卒で働きながら猛勉強して超難関の国立大学に合格。奇跡の教師になるまでの涙と感動の物語を紹介した話題のベストセラー。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 151209 55万PV超:琉球新報... | トップ | 151211 1年前:141211内田... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

一日一冊読書開始」カテゴリの最新記事