こんにちは! ただち恵子です

政治と社会、日々の暮らしの小さな喜び。思いつくままに綴ります。

神戸で学んだこと

2011-09-01 06:11:41 | 活動報告
8月の22日・23日、自治体問題研究所の市町村議員研修会に参加した。

多くの刺激を受けて帰ってきたが、ちょうどパソコンの接続ができない状態で、携帯から長い文章を投稿するのは私にとっては、煩わしくそのままにしてきた。

「学ぶ」ということの基本は「独習」「活字を読む」ことだと思っている。
一番、身につくのは「人前で話す」ことを前提に「読む」ことだとも、経験的に思っている。

「聞く」ことは、受身になりがちで、そのときは「いいお話でした」と思ったり、感激したりしても、すぐに忘れてしまうことも多い。しかし、たまには今回のように2日間を日常の様々な用事から離れて「聞く」ことに集中するのも、新たな発見やその後の学習へのきっかけになる。

3日間の講義のなかで、塩崎賢明氏(神戸大学大学院)の「東日本大震災の復興と地方自治体」と題する講演が一番心に残っている。塩崎氏は復興の理念として「被災者の生活を再建することであり、被災地を再興すること」と強調された。一見、あたりまえのこのことが実はとても大切であることは、1時間の講演を通じて胸に落ちる。
神戸の街は美しく整って、「ここで16年前にあの大惨事があったこと」は想像しにくいほどだ。塩崎氏は言う。「しかし、・・・いまだに立ち上がれない人、復興の途中で命を落とした人が少なからずいる。」として、「仮設住宅と復興住宅での孤独死は914人」、「大震災での重傷者が10684人。重症の結果、災害障害者見舞金を受け取ったのはわずかに64人」など。

阪神・淡路の復興事業費16.3兆円のうち、多くが復興とは直接関係のないハード事業に「復興」の名をかぶせたもの。その結果が「光と影」。それを教訓とすれば、東日本大震災で最優先するべきなのは、「鎮魂の森やモニュメントの建設」ではなく、命以外の全てを失った人々の暮らしを再建すること。そのために、場当たり的でない「恒久的な住まい」の再建支援に力を注ぐ重要性も強調された。

今回の研修には、議員に年間30万円支給されている政務調査費の一部を使った。そのため、議長宛に「報告書」を提出している。
以下、そのうち「所見」。


所見

「9月議会を前に地方自治を基礎から一通り学べる」と銘打った、第16回市町村議会研修会(自治体問題研究所)に、この春の市会議員選挙で当選したふたりの同僚議員とともに参加した。5期20年、議会議員として活動をしてきたが、常に「地方自治の基礎」について問い直していきたいと思う。

1日目に「実践報告」された松本市議会の取り組みは、議会基本条例に至る経過のなかで「随時市民の意見を聴取」し、市民参加、市民との連携のもとに進めてきたことを詳細に報告され、おおいに刺激を受けた。「市民に開かれた議会」とは、政治的立場、信条を超えた共通のスローガンになってはいるが、問われるべきはその内実である。本市議会においても、議会改革検討委員会を設置し、基本条例制定に向けての議論が始まっているが、一定の時期に、市民に情報発信しながら、より広い市民とともに条例を考え、創りあげていくことが大切であると痛感した。
2009年4月に施行された松本市の議会基本条例のもと、現在、どのような運用がされているのか、ぜひ現地を訪ねて学ぶ機会を持ちたいと思う。

「東日本大震災の復興と地方自治体」と題する塩崎賢明氏(神戸大学大学院工学研究科教授)の特別講義は、2日間を通じて最も心に残るものだった。東日本の大震災を「過去の関東大震災や阪神・淡路大震災とも異なる特徴を持つ災害」として、その「特徴」についても明らかにしつつ、「阪神大震災における復興の教訓」について特に言及された。1995年の大地震から16年経過し、高速道路・鉄道・港湾施設などのインフラ整備が進み、また「創造的復興のシンボル」とうたいあげた神戸空港の建設が推進された影で、「仮設住宅・復興公営住宅での孤独死が16年間で914人」、また震災障害者やアスベスト被害などおきざりされてきた問題がある。阪神大震災で自ら被災し、その復興の過程をつぶさにみてきた塩崎氏が、復興の理念とするべきは、「何よりも被災者の生活を再建することだ」とする提言は重く、また説得力がある。

2日目の加藤幸雄氏(元全国市議会議長会調査広報部長)による特別講義は、日本の政治制度、自治体の議会制度の歴史、自治体議会、議員の役割について憲法と地方自治法に基づく原則をふまえつつ、全国の具体的事例にもふれながら、「新しい議員像」として今の時代に地方議会に身を置く私たちに厳しくも暖かいメッセージを送っていただいた。氏が講演の結びとされた「目先にとらわれずに、5年先、10年先をみるという先見性が求められる」ということと、私が常に念頭におきたいと思っている「住民の目線にたち、住民多数の合意形成のもとに市政運営がなされるために、住民の代表者としての役割を果たす」ということの整合性を自分自身のなかで保つことは、相当な努力が求められるが、それだけにやりがいのある仕事として探求、挑戦を続けていきたい。

最後の財政問題についての講義、初村尤而氏(社団法人大阪自治体問題研究所)の「地方財政の基礎知識」は、年間の予算循環のプロセスのなかでの決算審査の意義をあらためて明らかにし、具体的な決算認定のポイントについても貴重な問題提起をいただいた。氏は「ポイント」の筆頭に「住民への公約、マニフェストとの関係でみる」という点をあげられた。そういう立場にたてば、決算審査は、行政執行が適正に行われたかどうかをチェックするだけでなく、「予算審議のなかで議員として何を求めてきたのか」、そして「求めたことが的確であったのかどうか」、議会議員としての自らを問い直す機会でもある。
大阪府の橋下知事のもとでの「財政再建」は「収入の範囲で予算を組む」と言ってスタートした。本市の行財政の指針である現行「泉大津経営指針」も「入りを図りて、出ずるを為す」と言い、「歳出ではなく歳入を原点とする方向への転換」を掲げた。私はこうした行財政運営の考え方に、従来から違和感を持ち、機会があればそれを表明してきた。「収入の範囲で・・・」と言っても、自治体の収入は、家計の収入とは異なり、固定的なものではない。事業の選択、実施に伴って収入の増減があり、また、国の施策等の影響でも大きく変わる。
初村氏は、府や本市が掲げる行財政の考え方とは全く異なる財政の論理として「出ずるを量って入るを制す」が基本であると唱える。その端的な実例として、【「収入の範囲で予算を組む」では震災復興事業はできない。】と指摘する。災害によって納税者の担税能力は激減し、一方、行政に対するニーズ、先送りできない課題は逆に激増するのであるから、当然である。
もちろん、今回のような大規模災害はめったにない非常事態ではある。しかし、非常時であるなしに関わらず、「地域の課題を明らかにして、その負担の方法を考える」ことが自治体の役割に照らして常に大原則であるべきであるという指摘は、忘れてはならないと、あらためて思う。「地域の課題」を明らかにすることが、自治体財政を考える時の出発点であり、そこに議会議員として発揮すべき役割があるとも思う。

2日間、集中して学ぶ時間を持てたなかで、多くの刺激、示唆を与えられたとともに、今後の課題も多く残した研修会であった。

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