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2022.9山梨・湯村温泉を歩く

2023年06月17日 | 旅行
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 湯村温泉の北は湯村山の丘陵地で、南麓に塩沢寺(えんたくじ)が建立されている。宿から数分なので参拝した。
 湯村温泉を流れる湯川に架かった延命橋を渡ると、塩沢寺三門が構えている(写真)。温泉で養生し、仏に帰依すれば延命するということだろうか。
 塩沢寺は、808年に空海(774-835)が開山、955年に空也(903-972)が開祖、と伝えられている。
 空海は唐に渡ったあと806年に帰国するが、20年の留学期間を2年に切り上げたことから数年、太宰府に留め置かれ、京都・高雄山寺に入ったのは809年である。開山とされる808年は太宰府にいたはずだから、つじつまが合わない。となると弘法大師湯村温泉開湯も疑わしくなる。
 空也開祖も気になる。955年は空也52歳ぐらい、梓澤要著「捨ててこそ空也」(book547参照)によれば、そのころは京都・鴨川近くの道場で十一面観音像、守護諸尊像の造立、大般若経 600 巻の書写、新たな道場の建設(のち西光寺と呼ばれる、現在の六波羅蜜寺)で多忙を極めていた。塩沢寺まで行脚に出る余裕はなかった、と思う。
 推測だが、空海、空也の門弟、弟子、ゆかりのある人が806年ごろ湯村温泉を見つけて念仏を唱え、955年ごろ堂を建て、後世の人が開山空海、開湯弘法大師、開祖空也と話が大きくなったのではないだろうか。弘法大師空海、空也と聞けば御利益が高まりそうである。大事なことは、無心に信じることであろう。
 
 三門右手前に剪定された松が水平に伸び出している(前掲写真)。鶴が羽を広げ飛び出そうとしている形に剪定されていて、舞鶴の松と名づけられている。甲府三名松に上げられているそうだ。
 三門は間口3間の楼閣で、阿吽の仁王がにらんでいた。年代などは記されていない。
 山門で一礼し、見上げると石段の先に地蔵堂が建つ(写真)。間口4間、奥行き3間、銅板葺き寄棟屋根で、組物などの建築様式から室町時代末期とされ、国の重要文化財に指定されているが、近年の研究で江戸時代初期と推定されている。
 堂内には、弘法大師を模したとされる高さ1.5mの地蔵菩薩坐像が安置されている(写真)。岩盤を削って台座にした石像で、室町時代の造立である。
 またまた推測だが、弘法大師空海開山、開湯の伝承をもとに、信心深い方が地蔵菩薩坐像を彫り、雨ざらしでは申し訳ないと信心深い方が地蔵堂を建てたのではないだろうか。
 合掌する。


 地蔵堂の境内右手に湯村山遊歩道入口の案内板が立っている。(ここからも湯村山に登れたのだが)、湯村山散策マップには旅館明治あたりに湯村山入口、山頂まで30分と記されていたので、旅館明治まで下ってから、遊歩道を歩き始めた。
 塩沢寺あたりの標高が300m、旅館明治あたりの標高は290m、湯村山山頂は446mだから標高差は150mほどである。
 歩き始めの遊歩道は舗装されたなだらかな勾配で、竹林、雑木林も手入れされていた(写真)。鳥のさえずりを聞ききながら、フィトンチッドphytoncide=森の精気を吸い込む。
 山頂まで15分の案内板を過ぎる。途中で、近道になりそうな、石がゴロゴロした急な道を選ぶ。大雨のときは水の流れ道になりそうだ。
 近道を何度か歩き、20数分ほど経ったころ、石垣らしい積み方の遊歩道に出た(写真)。大小入り乱れた石が無造作に積まれている。
 ほどなく標高446m湯村山山頂に着いた。遊歩道入口から25分ほどだった。
 武田信玄(1521-1573)の父・信虎(1492-1574)が、1519年に躑躅ヶ崎の館を築き(現在の武田神社、「2022.9山梨・武田神社を歩く」参照)、甲斐の統治を強固にするため、1523年、湯村山山頂に山城を築いたそうだ。
 山頂からは甲府盆地一帯を見渡すことができ、今日は雲に隠れているが富士山も遠望できる立地である(写真)。戦国時代の武将は地形を読み、戦略、流通にかなった場所に城、館を配置しようとしたことが理解できる。
 甲府盆地を眺め、夢の跡になったつわものの歴史を思い、遊歩道を下る。
 石がゴロゴロ、急な近道を何度か歩き、山神の社あたりで分かれ道を選んで下ると塩沢寺の境内に出た。往復とも誰ともすれ違わなかった。往復50分ほどで、弘法大師空海の伝承に触れ、武田家の戦略、興亡に思いを馳せられる散策になった。
 宿に戻り、次は甲府駅近の舞鶴城公園=甲府城跡を目指す。
(2023.6)

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