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2023.2香川 地中美術館を歩く

2023年12月11日 | 旅行
日本を歩く>  2023.2香川・直島へ 地中美術館を歩く


 ベネッセハウスミュージアムを出て、ベネッセアートサイトシャトルバスに乗り、地中美術館に向かう。地中美術館は2004年、安藤忠雄氏の設計で、「自然と人間との関係を考える場所」として開館した。建物は瀬戸内の美しい景観を損なわないようにと大半が地下に構築された。地下に自然光を採り入れていて、時間とともに、四季折々に作品や空間の表情が変わっていく。安藤氏はもちろん、アーティストも自然ともに空間が変化することを主題に取り入れているそうだ。
 地中美術館は要予約なので、オンラインで11:45入館2100円の予約を済ませてある。駐車場を併設したチケットセンターがシャトルバスの終点になる。QRコードでチケットを発券し、表道路の坂を上る。
 歩道に沿って池が伸びている。春にはモネの睡蓮を連想させる睡蓮が花開くらしい。左手に安藤忠雄氏を思わせるコンクリート塀が現れ、来館者を誘導する(写真)。
 ぽっかりと空いた縦長の開口を入ると、45度振れたコンクリート壁が立ちふさがっていて、この壁に開けられた開口の先にコンクリートの長い箱が一直線に伸びている(写真)。
 ここが地中美術館の始まりらしいが、インフォメーションが無ければ、スタッフもいない。神社仏閣の九十九折りの参道のように、来館者を不安にさせ、来館の意思を確かめる仕掛けであろう。四角いコンクリートの箱は先が少し狭くなっているようで、遠近感が強調され、はるか遠くが明るくなっている。
 明るい場所を目指して進むと、木賊がびっしと植えられた明るい中庭に出る(写真)。上は吹き抜けていて空が見える。中庭の壁に沿って階段を上ると、受付がある。チケットを見せ、自由に鑑賞して下さい、写真撮影は禁止です、などの案内を聞く。


 受付から45度振れたコンクリートの長い通路を進み、もう一度45度振れた長い通路を進むと、45度振れた壁の入口がある。
 この先の右にウォルター・デ・マリアの部屋、正面にクロード・モネの部屋、左にジェームズ・タレルの部屋が配置されている。すでになんども45度振れながら歩いて来て、さらに地中に埋没した展示室を階段を上ったり下りたりしながらアクセスするので、迷宮を探索しているような気分になる。緊張感を高め、作品との遭遇を劇的にするための仕掛けであろう。
 
 照明を抑えた薄暗い通路に大勢の来館者が行き交っている。展示室に入ると理解できるが、光を主題にしたアートなので通路の照明を抑えているようだ。
 B2Fにはクロード・モネの部屋とジェームズ・タレルの部屋があるが、どちらも列が出来ていた。先にクロード・モネの部屋に並ぶ。スタッフが入室をコントロールしていて、廊下で靴を脱ぎ、部屋に入る。
 矩形の白い部屋の四面に5点の「睡蓮」が展示されている(写真web転載)。「睡蓮」は1m×2m、2m×2m、2m×3mほどの大きさで、絵の大きさを勘案して部屋の大きさが決められたらしい。明かりは天空を採り入れたそうで、モネが睡蓮を描いているときの明るさを再現したともいわれている。
 誰もいなければ鑑賞に集中できたかも知れないが、モネの人気は高いようで、入室人数を制限をしていても大勢がいちどきに鑑賞するので、雰囲気はざわついている。「睡蓮」は教科書でも習い、美術書のみならず一般の書物、雑誌にも取り上げられ、あちらこちらの美術展で展示される。5点の「睡蓮」の際だった特長は見極められなかった。鑑賞を終え、来館者が交錯する狭い通路で靴を履く。


 次に同じB2Fのジェームズ・タレルの部屋に並ぶ。スタッフが入室をコントロールしていて、中は暗いので注意深く進むようになどの案内をする。中に入るとすぐ前に青い壁があるように見えた。スタッフが、足下の段々に注意しながら前に進むように案内する。おそるおそる青い壁に向かって段々を上ると、実際には奥行きがあるのが分かる(写真web転載)。
 光と色によって錯覚させられたようだ。色が補色の橙に変わり、錯覚だったことが理解できた。ジェームズ・タレルは光、色、視覚の原理を知り尽くしたアーティストのようだ。スタッフの合図で次の入室者と交代する。


 階段を下り、入室がコントロールされているB3Fのウォルター・デ・マリアの部屋に入る。奥行きの長い部屋の最奥まで階段が上っていて、途中の踊り場に直径2.2mの鈍い色で輝く球体が置かれている(写真web転載)。
 壁面には金色に輝く彫刻が飾られている。彫刻は27体あるらしい。朝~夕、春夏秋冬、光の差す角度で作品の表情が変化していくらしいが、短い入室時間では光の変化を感じることは出来なかった。


 安藤氏の空間は光を主題にしたアートと息が合っている。加えて安藤氏は、地底の闇と吹き抜けた中庭に降り注ぐ光を巧みに対比させている。細長い、何度も45度に振れた通路は、地底の迷宮を彷徨っている気分にさせる。ほかの来館者が誰もいなくて、一人で迷宮を彷徨い、たとえばジェームズ・タレルの部屋にたどり着いて、青から橙に変わってアートの仕掛けに気づいたなら、その衝撃は計り知れないのではないだろうか。
 B3Fから狭い階段を上りB2Fのカフェに行く。テラスの向こうに瀬戸内海の明るい海と空が広がっている(写真)。大勢が食べたり飲んだりしながらくつろいでいる。テーブル席が空いたので、サンドイッチとコーヒーを頼み、ランチにした。地底の光のアートもいいが、海と空の明るい青の風景の方が気持ちが落ち着く。


 ランチを終え、地中美術館シャトルバス乗り場に下り、13:15発のシャトルバスに乗る。ツツジ荘バス停で13:26発町営バスに乗り換え、宮浦港に13:40に着く。宇野港行きの四国汽船旅客船は少し遠い桟橋から13:55発である。
 手前の桟橋の端に展示された草間彌生作「赤かぼちゃ」を遠望し(写真)、2006年に竣工した海の駅「なおしま」を通り過ぎ(写真web転載、SANNA=妹島和世+西沢立衛)、80人乗りアートバードに乗り込んで、宇野港に向かった。 
(2023.12)

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