<群馬を歩く> 2016.7 白根山を歩く3 本白根山ハイキング/鏡池 枯れ沢 +万座温泉/牛池 薬師堂 湯畑
本白根山展望所からの下りは上りよりも足元がおぼつかない。小石混じりの道は滑りやすい。落石した石や根っこを避け、大きな段差をよっこらせと降りる。上りのように息が切れることはないが、下りは足を痛めやすい。樹木が多くなり、風が通らず、汗ばんでくる。10分ほど下って一息、水分を補給する。コース案内にはアズマシャクナゲ、ハクサンシャクナゲなどが書かれている。どちらも長細い葉っぱで、赤っぽい花をつけるのがアズマシャクナゲ、白い花をつけるのがハクサンシャクナゲだそうだが、足もとに気を取られ、花どころではなくなっていた。
ハイキングは花や自然を楽しむゆとりが基本であろう。気持ちにゆとりがなくなれば、注意が散漫になり事故につながる。やはり、日ごろの基礎体力とハイキングの慣れが肝要、気持ちを引き締めて、山道を下る。
展望所から20分ほど下ると、右手に鏡池が見えた。緑に包まれているためか、文字通り、鏡のように水面は波が立っていない(写真)。ランチを取るのに良さそうな雰囲気であるが、まだランチには早いし、そもそもランチを用意していない。眺めるだけにして、一休みする。
鏡池の眺めから10分ほど、足場のきつい山道を下ると、分岐点に出る。右に折れると富貴原の池を経て、ロープウェイ山麓駅に出るそうだ。かなりの歩き出があり、私たちは始めからロープウェイ山頂駅に向かうコースを予定していたので、左に折れた。
コース案内には紅色の花をつけるイワカガミ、白い花をつけるツマリンドウ、白い花のマイズルソウ、タカネザクラなどが記されているが、全神経を足もとに向けて山道を下りつづける。
樹林がうっそうとして風はない。木々のあいだから、向こうの稜線が見えるが、人家の気配はない。鳥のさえずりに励まされながら、石ころ、木の根っこ、土の窪み、大きな段差に木を配り、ひたすら歩く。
健脚向け富貴原の池コースの分岐点から20分ほど下ると、すっかり枯れ上がり、大きな石がゴロゴロした枯れ沢に出る(写真)。雨の時は濁流が渦巻きそうな沢である。鉄のはしご段が架かっていて、その先はクマザサが迫ったやや平坦な道に変わった。
樹木が途切れて風景が広がり、向こうにロープウェイ山頂駅が見えた。けっこう足に疲れを感じていたので、ホッ!である。蛇の出迎えを受けながら、クマザサのあいだを抜け、コマクサリフトの横を通り、ほぼ12:00、ロープウェイ山頂駅に到着した。
歩き始めてから2時間になる。ロープウェイ山麓駅の係員は、初心者のおすすめコースなら2時間半ぐらい、と話してくれたから、若干、速いペースだったようだ。本白根山山頂まで登ったり、ランチの時間をとったり、天気が悪く足場が不安定だったりすれば、2時間半ぐらいになりそうだ。
何とか歩き通したが、足の疲れも感じた。山道ですれ違った人のなかには同じほどの高齢者もいた。日ごろ山に馴染み、自分なりのペースで歩けば、もっと山を楽しめそうである。
ロープウェイ山頂駅からロープウェイで山麓駅に降りた。駐車場の先に青葉山レストランが営業していた。来る途中は駐停車禁止+レストラン閉鎖だったから、ほかに店はない。ここで食べることにした。パンフレットにも案内があり、クマ笹サうどんが写真入りで紹介されていた。色は薄緑でクマ笹のイメージである。空腹は満たされたが、味はイマイチだった。展望所で、素晴らしい眺めを目で楽しみながら持参のおにぎりを食べるのが良さそうだ。
国道292号線、県道466号線を走り、万座プリンスホテルに戻る。まだ日は高い。部屋で休んだあと散策に出た。朝食レストラン会場から牛池の標示が見えていたので、牛池に向かって歩く。
木立のなかを抜けると、小さな牛池に出る(写真)。説明板がなく、名前のいわれは分からないが、木道が整備されていて、高山植物を身近に眺めることができる。
木道は高山植物のなかを回遊できるようになっている。少し回遊してから、牛池の左縁を抜け、県道を渡り、坂道を上っていくと、万座温泉街になる。湯治客が浴衣で歩いていて、ときおり硫黄の臭いが流れてくるが、温泉宿が数軒並んでいるだけで、宿以外の店はない。そのまま上ると、温泉街を過ぎた左に薬師堂の祠があった。すでに先客が手を合わせていた。
薬師堂の裏手のややきつい上り勾配を登っていくと、熊四郎山になるそうだ。途中まで登ったが、足が重たくなってきた。振り返ると、上り道の右手の中腹に休み所が見えた。熊四郎山はあきらめ休み所に向かう。
休み所から望むと、あたりは一面、白~茶の荒れた光景である(写真)。噴火による岩石+火砕流の堆積か?、このあたりだけ緑が育たないのは硫黄分が強いためであろうか?。先客の数人が同じようなことを話していた。
一息してから休み所を下る。降りきった左に白濁した湯畑があり、臭いが漂ってくる。足早に湯畑を抜け、坂道を下りホテルに戻った。
1時間ほどの散策だったようで、16:00になっていた。冷水器でペットボトルに冷水を入れ、コマクサの湯に向かう。ゆっくりと足をもんでから思い切り足を伸ばすと、疲れが流れ出ていく気がする。寝そべると、抜けたような青い空に雲が急ぎ足で流れていく。鳥のさえずりが聞こえる。い~い~湯である。
3日目、午後は所用があるので朝食後、チェックアウトする。ナビに自宅を入れると、万座ハイウェイ+鬼押しハイウェイ・・日本ロマンティック街道・・を経て、碓氷軽井沢ICから上信越道、藤岡JCTから関越道を抜ける案内が出た。
万座ハイウェイ、鬼押しハイウェイはいずれも有料で、往路の関越道から吾妻渓谷を通るコースに比べ、時間は余り変わらないが少し割高になる。往路で八ッ場ダムを、復路では浅間山を眺めた。コースを変えれば見どころが変わる。選択肢が増え、旅の楽しみが増える。
12:00過ぎに帰宅できたので、家で添加物の入っていない8割そばをゆで、氷水でしめて食べた。手料理でも本白根山ハイキングの余韻でおいしかった。 (2016.7)