yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

2016.7白根山を歩く3 本白根山を下る

2016年07月31日 | 旅行

群馬を歩く>  2016.7 白根山を歩く3   本白根山ハイキング/鏡池 枯れ沢 +万座温泉/牛池 薬師堂 湯畑

 本白根山展望所からの下りは上りよりも足元がおぼつかない。小石混じりの道は滑りやすい。落石した石や根っこを避け、大きな段差をよっこらせと降りる。上りのように息が切れることはないが、下りは足を痛めやすい。樹木が多くなり、風が通らず、汗ばんでくる。10分ほど下って一息、水分を補給する。コース案内にはアズマシャクナゲ、ハクサンシャクナゲなどが書かれている。どちらも長細い葉っぱで、赤っぽい花をつけるのがアズマシャクナゲ、白い花をつけるのがハクサンシャクナゲだそうだが、足もとに気を取られ、花どころではなくなっていた。
 ハイキングは花や自然を楽しむゆとりが基本であろう。気持ちにゆとりがなくなれば、注意が散漫になり事故につながる。やはり、日ごろの基礎体力とハイキングの慣れが肝要、気持ちを引き締めて、山道を下る。

 展望所から20分ほど下ると、右手に鏡池が見えた。緑に包まれているためか、文字通り、鏡のように水面は波が立っていない(写真)。ランチを取るのに良さそうな雰囲気であるが、まだランチには早いし、そもそもランチを用意していない。眺めるだけにして、一休みする。
 鏡池の眺めから10分ほど、足場のきつい山道を下ると、分岐点に出る。右に折れると富貴原の池を経て、ロープウェイ山麓駅に出るそうだ。かなりの歩き出があり、私たちは始めからロープウェイ山頂駅に向かうコースを予定していたので、左に折れた。
 コース案内には紅色の花をつけるイワカガミ、白い花をつけるツマリンドウ、白い花のマイズルソウ、タカネザクラなどが記されているが、全神経を足もとに向けて山道を下りつづける。
 樹林がうっそうとして風はない。木々のあいだから、向こうの稜線が見えるが、人家の気配はない。鳥のさえずりに励まされながら、石ころ、木の根っこ、土の窪み、大きな段差に木を配り、ひたすら歩く。

 健脚向け富貴原の池コースの分岐点から20分ほど下ると、すっかり枯れ上がり、大きな石がゴロゴロした枯れ沢に出る(写真)。雨の時は濁流が渦巻きそうな沢である。鉄のはしご段が架かっていて、その先はクマザサが迫ったやや平坦な道に変わった。
 樹木が途切れて風景が広がり、向こうにロープウェイ山頂駅が見えた。けっこう足に疲れを感じていたので、ホッ!である。蛇の出迎えを受けながら、クマザサのあいだを抜け、コマクサリフトの横を通り、ほぼ12:00、ロープウェイ山頂駅に到着した。
 歩き始めてから2時間になる。ロープウェイ山麓駅の係員は、初心者のおすすめコースなら2時間半ぐらい、と話してくれたから、若干、速いペースだったようだ。本白根山山頂まで登ったり、ランチの時間をとったり、天気が悪く足場が不安定だったりすれば、2時間半ぐらいになりそうだ。
 何とか歩き通したが、足の疲れも感じた。山道ですれ違った人のなかには同じほどの高齢者もいた。日ごろ山に馴染み、自分なりのペースで歩けば、もっと山を楽しめそうである。

 ロープウェイ山頂駅からロープウェイで山麓駅に降りた。駐車場の先に青葉山レストランが営業していた。来る途中は駐停車禁止+レストラン閉鎖だったから、ほかに店はない。ここで食べることにした。パンフレットにも案内があり、クマ笹サうどんが写真入りで紹介されていた。色は薄緑でクマ笹のイメージである。空腹は満たされたが、味はイマイチだった。展望所で、素晴らしい眺めを目で楽しみながら持参のおにぎりを食べるのが良さそうだ。

 国道292号線、県道466号線を走り、万座プリンスホテルに戻る。まだ日は高い。部屋で休んだあと散策に出た。朝食レストラン会場から牛池の標示が見えていたので、牛池に向かって歩く。
 木立のなかを抜けると、小さな牛池に出る(写真)。説明板がなく、名前のいわれは分からないが、木道が整備されていて、高山植物を身近に眺めることができる。
 木道は高山植物のなかを回遊できるようになっている。少し回遊してから、牛池の左縁を抜け、県道を渡り、坂道を上っていくと、万座温泉街になる。湯治客が浴衣で歩いていて、ときおり硫黄の臭いが流れてくるが、温泉宿が数軒並んでいるだけで、宿以外の店はない。そのまま上ると、温泉街を過ぎた左に薬師堂の祠があった。すでに先客が手を合わせていた。

 薬師堂の裏手のややきつい上り勾配を登っていくと、熊四郎山になるそうだ。途中まで登ったが、足が重たくなってきた。振り返ると、上り道の右手の中腹に休み所が見えた。熊四郎山はあきらめ休み所に向かう。
 休み所から望むと、あたりは一面、白~茶の荒れた光景である(写真)。噴火による岩石+火砕流の堆積か?、このあたりだけ緑が育たないのは硫黄分が強いためであろうか?。先客の数人が同じようなことを話していた。
 一息してから休み所を下る。降りきった左に白濁した湯畑があり、臭いが漂ってくる。足早に湯畑を抜け、坂道を下りホテルに戻った。
 1時間ほどの散策だったようで、16:00になっていた。冷水器でペットボトルに冷水を入れ、コマクサの湯に向かう。ゆっくりと足をもんでから思い切り足を伸ばすと、疲れが流れ出ていく気がする。寝そべると、抜けたような青い空に雲が急ぎ足で流れていく。鳥のさえずりが聞こえる。い~い~湯である。
 
 3日目、午後は所用があるので朝食後、チェックアウトする。ナビに自宅を入れると、万座ハイウェイ+鬼押しハイウェイ・・日本ロマンティック街道・・を経て、碓氷軽井沢ICから上信越道、藤岡JCTから関越道を抜ける案内が出た。
 万座ハイウェイ、鬼押しハイウェイはいずれも有料で、往路の関越道から吾妻渓谷を通るコースに比べ、時間は余り変わらないが少し割高になる。往路で八ッ場ダムを、復路では浅間山を眺めた。コースを変えれば見どころが変わる。選択肢が増え、旅の楽しみが増える。
 12:00過ぎに帰宅できたので、家で添加物の入っていない8割そばをゆで、氷水でしめて食べた。手料理でも本白根山ハイキングの余韻でおいしかった。 (2016.7)

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1993年合同シンポジウムで「現代空間計画論 1/1000地図で考える」をコメント

2016年07月28日 | よしなしごと

1993 「現代空間計画論 1/1000地図で考える」 建築学会合同シンポジウム

 1993年、農村計画学会、建築学会、農業土木学会、造園学会が合同で現代空間計画論についてシンポジウムを開いた。4者の講演のあと、コメントを依頼された。4者の講演を聞いてまず感じたのは、1/1000スケールが共通の土台になることだった。
 以下にコメントの要旨を再掲する。
 
 住宅などの建築単体の計画では1/200や1/100、あるいは1/50を主として用い、建物の配置を検討するときに1/200~1/500、そして立地の検討や周辺の環境との関係を考えるときに1/500~1/1000を利用する。つまり。1/1000は建築単体の計画で利用する上限に近いスケールになる。
 対して、都市や地域の計画では、1 /50や1/100を使うことはほとんどないのではない。代わって1/500~1/1000、さらに1/5000や1/10000の地図を用いることが多くなる。
 農村の計画では、立地地勢や水系、DID都市との関係を検討するときなど、1/1000より広い範囲を含んだ1/5000や1 /10000~1 /50000の地図を使う。
 それぞれの専門分野に応じて計画の関心が異なり、用いる地図のスケールも専門ごとにやや偏りがある、ところが1/1000はどの専門も利用するスケールの一つで、1/1000の地図を共通言語にすれば同じテーブルについて計画を具体的に話し合うことができる、最初にそう感じた。

 ところで、現地の様態をあまり見ていない人たちが、もし地図や集落図だけから空間を判読し、計画を練り上げようとすると、地図に記されている小さな表現を見落とし、集落の成り立ちにかかわる根幹の部分を欠落させて計画を構想してしまう危険がある。
 地図や集落図は、物的な様態の平面的な関係を表しているに過ぎない。解読できる限界があることに注意し、状況を正確に判断するため、断面図をあわせ用いることや、模型やパースなど立体的なとらえ方を補うべきである。
 もちろん、現地で実際に縄張りをしたり、現場で意見交換し、その場で模造紙などを用い合意を確認する方法は、実体を誤りなく判断できる点で優れている。

 地図には住宅以外にもいろいろなものが記されている。公民館や神社、お堂、広場、大木・・。
 住民の主体的な活動にとって、集落が空間的にも社会的にもヒューマンな大きさであることが望ましく、それを保証するにはお年寄りや子供でも楽に歩いて行け、みんな顔見知りで安心できる大きさが期待される。
 集落内の共同空間は、住民の主体的な活動の拠点であると同時に、時代をこえて老人・青壮年・子供を集落文化の文脈でくくることのできる重要な場となっている。
 空間計画を始める第1段階で住文化に踏み込んだ調査をぜひお願いしたいし、地図に記された共同空間から集落の文脈を読みとって頂きたい。

 

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2016.7白根山を歩く2 本白根山ハイキング

2016年07月27日 | 旅行

群馬を歩く>  2016.7 白根山を歩く2 本白根山ハイキング/白根火山ロープウェイ コマクサリフト 中央火口 コマクサ 本白根山展望所

 2日目、朝方は靄がかかっていた。じきに靄は飛んでいったが空には雲が残っている。カンカン照りだとハイキングはきついから、雲が少しあった方がいい。窓からのぞくが噴火口跡は乾いたままで、空吹は見られない。
 最近は寝起きの温泉を避けるようにしている。かつて、知人が朝の露天を出たあと倒れ救急車で運ばれ何とか助かった話をしていた。テレビの健康番組でも、寝ているときは血圧が穏やかだが、寝起きで全身に酸素を送るため血圧が急上昇する、風呂で衣類を脱ぐと血管が収縮してまたも血圧が上がり、温泉で血管が広がり血圧が一気に下がる・・ややうろ覚え・・、こうした血圧の急変で心筋梗塞や脳の血管障害が起きやすくなる。とりわけ、血管・血圧に持病のある人や高齢者はリスクが高くなる。ということで寝起きの温泉は避けている。
 朝食後落ちついてから入っても良し、連泊だからハイキングのあとに入っても良し、のんびりゆったりが健康にも適っていると思う。

 朝食後、本白根山に向かう。車で県道466号線を上り、本白根山を右に、白根山を左にして国道292号線を下る。硫黄が臭う場所を抜けると、白根火山ロープウェイ山麓駅に着く。9時半過ぎ、駐車場に車を止め、厚手と薄手のウィンドブレーカーと、ペットボトル、ジュース、チョコレートなどを持って、6人乗りのロープウェイに乗る(写真)。
 往復1500円だが、斜面長さ2407m、高低差472mを13分で上るのだから高いとはいえない。眺めもいい。下には曲がりくねった国道292号線、その先の山あいに山麓駅が見える。道路を下った先が草津温泉のようだ。

 山頂駅からは少し先のコマクサリフトと名づけられた2人乗りのリフトに乗る(写真)。リフトを降りるとハイキングコースがあり、本白根山をぐるりと回るコースはロープウェイ山頂駅に出るので、リフトは片道にした。全長327mのリフトは片道400円である。
 薄いウィンドブレーカーを着たが、風は冷ややかで強い風だと冷たく感じる。リフトを降りたところで、厚手のウィンドブレーカーを重ね着した。
 おおむね10:00、歩き出す。ロープウェイ乗り場でくれたパンフレットのコース案内には見どころの花が記されている。白い線香花火のような小さなチラチラした花のマイズルソウ、楕円形の5弁の白い花のミツバオウレン、白い玉のような小さな実をつけたシラタマノキ、房状の小さなピンクの花をつけたイワナシ(花の見頃は過ぎている)、紅色の先が細かく裂けた花を下向きにつけたイワカガミなどが、足もとの草むらや右側の乾ききった斜面地に彩りを添えている。
 左手は下り斜面で、ダケカンバ林が続く。植物にも疎く、花の名前は後付けの知識であり、林もコース案内に記されたダケカンバ以外は自信がない。

 上り道は汗ばむ。樹林で風も抑えられているので、途中で薄手のウィンドブレーカーを脱いだ。山好きな人が多い。前にも後ろにも、マイペースでハイキングを楽しんでいる。しっかりしたカメラで、高山の花や山の風景を撮影している人も少なくない。
 ゆるやかな上りもあるが、ややきつい勾配もある。歩き始めでまだ元気だ。急に視界が開け、中央火口が姿を見せた(次頁写真)。足もとは石が多くなり、ロープを張った細い道に変わる。樹木はなくなり、強い風であおられながら踏みとどまっているような姿のハイマツが砂利の斜面にしがみついている。
 砂利の斜面には、高山植物の女王と呼ばれるコマクサが誇らしげに赤紫の小さな花をつけている。本白根山はコマクサの群生地としても知られるそうで、あちらでもこちらでもコマクサの写真を撮っている。まだ時期が早いのか、砂礫が動くためか、コマクサの特性か、赤紫の花はまばらだった。

 中央火口のをぐるりと回るように歩く道が決められていて、火口を半分ほど進むと、右の本白根山山頂2150mと左の展望所2145mを経由したハイキングコースの分かれ道になる。だいたい10:30、まだ元気なので、右手・山頂の道を選んだ。雲はなくなり、日射しが強まった。厚いウィンドブレーカーを脱いだ。半袖のハイカーもいるが、風は冷たいので薄いウィンドブレーカーに着替える。
 15分ほど石だらけの斜面を上ると、平坦な道になる。ここで一息し、北に見える山並みの風景を眺める。まだ山頂は遠い。コース案内を確認する。日ごろ山道を歩いているわけではないので、足腰の疲れが読めない。ここで体力を使い過ぎ、この先のハイキングに支障が出ては困る。長く山を歩いていないので大事を取って、山頂はあきらめ、分岐点に戻った。
 
 分岐点に戻る。時計は10:55、コマクサリフトを降りてからおおよそ1時間歩いた。左手の中央火口を見下ろしながら、石がごろついた道を上る。右手の石がむき出した斜面にはけなげにもコマクサがしがみつき、赤紫の花をつけている。
 きつい上りに変わった。木の階段は気をつけないと踏み外しそう。足もとを確かめながら上りきる。晴で良かった。雨だったら石混じりの土面も木の階段も滑りやすかったに違いない。
 標高2145mの本白根山展望所にたどり着いた。分岐点からはわずか10分ほどの上りだったが、かなりの急勾配で息が切れた。まずは腰を下ろす。風が心地いい。ぐるりと見渡す。どちらを見ても彼方に山並みが続いている(写真、下方の町並みは草津温泉か)。

 山頂2150mは逃したが、展望所2145mも十分に達成感を感じる。持参したジュースを飲む。ふだんジュースなどの甘味飲料は飲まないから甘みをきつく感じるが、糖分補給になりそうだ。チョコレートも食べる。落ちついてきた。展望所登頂記念に写真を撮る(写真)。
 展望所の標識には日本百名山と記されている。本白根山、白根山、逢の峰を総称した草津白根山が日本百名山だそうだ。展望所は山頂ではないが、標識に記されているから、当たらずとも遠からずであろう。
 学生のころ、誘われて標高2356mの尾瀬・燧岳に登ったが、燧岳も百名山だそうだ。そのころは百名山を知らなかった?、あるいは百名山がまだ知られていなかった?。それ以来だから、二つ目の百名山になる・・百名山を踏破するサークルもあるそうで、その方々からはたった2つ?と笑われるかも知れない・・。
 たっぷり休んでから、下り始めた。 (2016.7)

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1984 村を歩く 「京都・美山北集落と風水・美山の茅葺き民家」 北集落は蔵風得水に適い、気が充ちている

2016年07月26日 | 旅行

1994 村を歩く 「美山北集落と風水・美山の茅葺き民家」 /建築とまちづくり誌

 1984年に、京都と若狭湾を結ぶ街道の一つ、周山街道の民家集落を比較調査したことがある。
 そのとき、京都府美山町の北および南集落に見事なまでに展開する茅葺き民家群に引きつけられ、周山街道からはずれるが全戸の調査を実施した。
 それが縁で、その後も美山町の当時助役、学芸員の方々と連絡を取り合っていた。
 1993年ごろ、伝統的建造物群保存地区指定の気運が高まり、私もかかわることになった。
 同じころ、建築学会の東アジアの集住文化と風水思想の企画のメンバーで、美山町の北集落がこの風水概念にまさに適合していることに気付いた。
 そのころ、建築とまちづくり誌から村を歩くの連載を頼まれていたので、表題のテーマで投稿した。

 囲碁はまったくの素人だが、無造作に置かれた石がいつの間にかつながりあっていくのを実感したことがある。
 美山町に関する一連の流れも、最初の石がいつの間にか別の石につながり、別の出来事でまた石がつながっていく不思議な連鎖を感じる。

 風水とは、自然と人との調和的立地を地勢の構造や自然の条件を解読して求めようとする発想で、紀元前の中国、黄河流域で芽生えたと言われる  ・・蔵風得水、すなわち風を制御し、水を得ようとする地理的立地概念が生まれた・・。
 この蔵風得水の地に気が発すると考える。
 気とは、北の主山を源とし、東側と西側の山脈に添って流れる。北側の主峰と、続く東側、西側の山脈、そして南側のやや低い山で囲まれた地は、気が最も濃密になるところで、居住性にすぐれ、生物の育成あるいは子孫の繁栄にかなう適地として歓迎された。
 京都の地図を広げると、風水適地であることが納得できる。琵琶湖疎水で水を補充するほど栄えていることを考えれば、子孫繁栄もうなずけてくる。
 
  美山町北集落は、北側の山を背にして南斜面に展開する。北山は西側と東側に回り込み、集落をつつむ。集落の南側を流れる川の反対側にはやや低い山があって、山の構成は風水適地とほぼ一致する。
 民家群は、北山と西、東の山に囲まれた最も気が濃密なところに集中していて、これもまた風水思想に符合する。いまは水道が普及しているが、集落内の水路は勢いよく流れていて、水利のよさをうかがわせる。
 一方、集落南側の川に沿った低地が稲作農地にあてられ、民家群は山際の高みに立地していて、水の制御が自然に行われていることをみせる。
 あるいは、風水思想とは無縁に、先人のすぐれた知恵の結果なのかも知れない。しかし、茅葺きの民家群がいまも力強くたたずんでいる様は、子孫繁栄の気が充ち充ちているため、と思えてしかたない。
 それに、遠く中国を源とする風水が周山街道を経て美山に及んだと考えるほうが、ロマンがある。

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2016.7白根山を歩く1 万座温泉へ

2016年07月23日 | 旅行

群馬を歩く>  2016.7 白根山を歩く1 日本ロマンティック街道を走り、八ッ場ダムを眺め、草津温泉を抜け、万座温泉へ

 万座温泉に泊まり白根山をハイキングする計画を立てた。インターネットで調べると、関越道を利用し、渋川伊香保ICから国道353号線、国道145号線、万座ハイウェイを経由すると万座温泉までおよそ3時間20分ほどだった。
 車に乗り、ナビで万座プリンスホテルを入れると、関越道、藤岡JCTから上信越道、碓井軽井沢ICから鬼押しハイウェイ、万座ハイウェイを経て万座温泉だった。車のナビは古い。インターネットの情報を採用して、関越道で行くことにした。
 関越道は順調に流れている。高坂SAで軽めの昼食を済ませた。高坂SAを出てから1時間ほどで渋川伊香保ICに着く。渋川伊香保ICからはナビを使い、国道353号線に向かう。家並みが続いていて、榛名山は見えない。片側1車線の道で、ときおり大型車が重そうな荷物を運んだり、軽トラックがゆっくり走ったりで、車が数珠つなぎになることもあるが、概して流れている。
 次第に山あいの風景になってきた。「日本ロマンティック街道」と書かれた道路標識に気づいた。2007年の南ドイツの旅でロマンティック街道を走り、ローテンブルクなどを訪ねた。あとで調べたら日光と上田を結ぶ320kmの道路にドイツ・ロマンティック街道にあやかり、日本ロマンティック街道と名づけ、観光地を整備して誘客を狙っているらしい。

 ほどなく吾妻渓谷沿いに出る。かつて吾妻川に八ッ場ダム建設が策定され、川原湯温泉などが水没することになって反対運動もおきたが、事業計画は動き出した。ところが脱ダム宣言を訴えた田中氏が長野県知事となって工事は中断、その後の民主党政権下でダム工事の中止が決まった。現地でダム工事の可否を実感しようと川原湯温泉に泊まり、周辺を散策したことがある。温泉も良かったし、風景も素晴らしかったが、すでに転出した人もいて空き家・空き旅館が散見された。
 私が泊まった宿も先行きが不透明なので宿の修繕もできない、賛成反対の騒動で疑心暗鬼なっていて組合がぎくしゃくしている、転出者が続き組合員が減って負担が増えた、などなど不安な様子がうかがえた。すべての方が納得する案はないだろうが、すべての方の生活設計を提示するのは最低条件であろう。

 昔の記憶を思い出しながら走っていたら、突然トンネルが見えた。車の古いナビにはトンネルはなく、かつての道路を指示していたのでナビに従った。こちらの道路も整備されていて、まだ工事の余韻が残っている。
 吾妻渓谷からつかず離れず走っているうちに新設された長い橋を渡った。この橋がかつて工事が中断して柱脚がそのまま残されて話題になった八ッ場大橋だった(上写真、後述不動大橋からの眺め)。川原湯温泉に行くとき、その柱脚を見上げながら走った記憶がある。
 片側1車線で駐停車は危険なので橋を渡って標示の通り左に折れ、「道の駅八ッ場ふるさと館」に寄った。道の駅はできたてで、足湯も設けてあった。
 道の駅の先にも長い橋が架かっている。不動大橋(中写真)と名づけられていて、橋の中ほどから吾妻渓谷が見渡せる(下写真)。
 写真下方が吾妻川で、左の建物がかつて泊まった川原湯温泉らしい。緑の山あいの先に先ほど渡った八ッ場大橋が見える(上写真)。走っているときは気づかないが、川からの高さは70m以上あるそうだ。不動大橋は高さが86mあり、下をのぞくと足がすくむ。ダムが完成すれば、足もとまで水がたまることになる。日本の土木技術は信頼するが、人間の感覚を越えている。渓谷を吹き抜ける風に押されて車に戻った。

 国道145号線=日本ロマンティック街道を走る。まだ日は高い。国道292号線に入り、上りの道を30分ほど走ると草津町役場に出た。標示を頼りにぐるりと回り細い道を抜けたると草津温泉の湯端に出た。大変な人出で、草津温泉の人気がうかがえる。
 機会があれば草津温泉も泊まりたいが、これほどの人出では辟易しそうだ。どちらかといえば、静かにのんびりとくつろぎたいね。
 温泉街を抜けると国道292号線は上りのカーブが始まる。何度も180度ターンを繰り返しながら、白根山を上っていく。樹木は少なく、うっそうとした感じはない。頭上にロープウェイが見えた。動いている。少し前に白根山噴火警報が出ていたが、大丈夫かなと思ったりした。
 ところが、再度180°ターンを繰り返して上っていったら、駐停車禁止の標識が出てきた。白根山湯釜に近い草津白根レストハウスも広々とした駐車場も柵で閉鎖されていた。廃墟のようなレストハウスはかなり大きく、駐車場も広いから、平時はかなり賑わったようだ。しかし、窓を開けるとときおり硫黄の臭いがする。白根山は標高2160mの活火山で、現在、噴火警戒レベル2、火口から1kmは立ち入り禁止である。右手の白濁した地肌を見ながら坂道を急いで通り過ぎる。

 国道292号線の左手=南側には標高2171mの本白根山がそびえている。本白根山も火山だがいまは噴火の心配はなく、入山ができる。先ほど頭上を動いていたロープウェイは本白根山の山麓と山頂を結ぶロープウェイだった。明日、天気が良ければ本白根山ハイキングができそうだ。
 閉鎖されたレストハウスを過ぎ、山をぐるりと回ると下りになる。分かれ道で、左の県道466号線に折れる。かなりのヘアピンカーブを何度か曲がると、ほどなく万座プリンスホテルに着いた。
 17:00少し前、たっぷり温泉が楽しめる。万座プリンスホテルに泊まるのは初めてである。事前にインターネットで調べたら、本館、東館、南館がコの字型につながっていて、露天温泉に最も近いのが東館であった。東館は20㎡ほどのツィンベッドルームで、狭さが気になるが、空吹を眺められる利点もあるので、東館を予約しておいた。
 空吹とは、かつての噴火口跡から、雨水などの地下水が蒸気となり硫化水素ガスなどといっしょになって吹き出す現象だそうだ。部屋の窓から、緑の山あいのなかに白茶の地肌をした窪みが見える(写真)。
 これがかつての噴火口で、ここから空吹が吹き出すらしいが、泊まっているあいだは空吹が起きなかった。雨不足のせいだろうか?。空吹を実感できないのは残念ともいえるが、硫化水素ガスが風に乗ってこちらに流れてきても困る。想像力をたくましくして折り合うことにした。

 温泉は部屋の隣の隣といった近さである。冷水器が設置されていたので持参のペットボトルに冷水を入れ、露天に持って行った。入口は男女に分かれていて、入ると十分に広い内湯がある。
 内湯から下るとこまくさの湯と名づけられた露天風呂がある。この露天風呂は右、中、左の3つの湯船に分かれいて、右、中は男性用、左が男女共用=混浴になっている。温泉配置図を見ると、女性用は内風呂に続いて、塀で囲われた女性専用の露天風呂が2つあり、その先が男女共用の露天風呂につながっている。
 女性は露天風呂用の水着を着用するか、専用のバスタオルを体に巻き、男性は腰にタオルを巻いて混浴を楽しむことができる。標高1800mの温泉は風がさわやか、目の前には空吹と山並みの風景が広がり、爽快な気分に浸れる。長湯し過ぎて火照ったら、ペットボトルの冷水を飲み、さわやかな風でほてりを冷ませば、また湯と絶景を楽しむことができる。い~い~湯だった。  (2016.7)

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