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2018.4 桶川市では中高層建築物に係る紛争の防止、調整に関する条例が功を奏している

2019年02月17日 | studywork

2018 桶川のまちづくり=建築紛争調停委員会

 埼玉県桶川市では、1997年に「桶川市中高層建築物の建築に係る紛争の防止及び調整に関する条例」、翌1998年に「同施行規則」を定め、その後改正が加えられ、現在に至っている。
 条例の目的は第1条、「中高層建築物の建築に関し、関係法令等に定めがあるもののほか、建築計画の事前公開及び事前説明並びに紛争のあっせん及び調停について必要な事項を定めることにより、良好な近隣関係を保持し、もって地域における健全な生活環境の維持及び向上に資すること」である。
 
 対象となる中高層建築物については、本条例第2条2(1)で
①第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域では
 (1)軒高さ7mを超える建築物
 (2)地階を除く3階以上の建築物
②第1種中高層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域・第1種住居地域・第2種住居地域・準住居地域・近隣商業地域・準工業地域では
 高さが10mを超える建築物
③商業地域・工業地域では
 (1)高さ15mを超える建築物
 (2)高さが10mを超え、上記の①②の地域に冬至日の午前8時から午後4時までに日影を生じさせる建築物 と規定している。

 中高層建築物の建築による紛争については、本条第2条2(2)で
 日照、通風及び採光の阻害、風害、周辺の交通安全の阻害、電波障害等 並びに工事中の騒音、振動等とし、
 周辺住民と中高層建築物の建築主又は工事施工者とのあいだでのトラブルを紛争と定義している。

 周辺住民については、近隣住民と周辺住民に区分し、本条第2条2(3)で近隣住民を、
 ア)中高層建築物の敷地境界線からの水平距離が15m以内の範囲で、かつ、中高層建築物の外壁またはこれに代わる柱の面からの水平距離が50m以内の範囲における建築物であって居住の用に供するものの所有者、管理者又は居住者

 イ)中高層建築物の敷地境界線からの水平距離が当該中高層建築物の高さの2倍を超えない範囲内であり、かつ、当該中高層建築物により冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間に日影となる部分を有する建築物であって居住の用に供するものの所有者、管理者または居住者と定め、
 本条第2条2(4)では、周辺住民を、
 ア)中高層建築物の敷地境界線からの水平距離が15m以内の範囲における土地の所有者又は建築物の所有者

 イ)中高層建築物により冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間に日影となる部分を有する土地の所有者または建築物の所有者、管理者もしくは居住者
 ウ)中高層建築物による電波障害の影響を著しく受けると認められる者と定めている。

 日影については本条第2条2(5)で、建築物の平均地盤面からの高さが、第1種低層住居専用地域又は第2種低層住居専用地においては1.5m、その他の地域又は区域においては4mの水平面に生じる日影と定めている。

 本条が規定した中高層建築物の建築にあたって、市長は、
 本条第3条1で、紛争を未然に防止するとともに、紛争が生じたときは、迅速かつ適正に解決を図るよう努めなければならない、
 本条第3条2では、中高層建築物に類する建築物の建築に際し、争いが生じたときは、迅速かつ適正に解決を図るよう努めなければならない、と定め

 本条第4条1で、当事者は中高層建築物の計画または建築に当たっては、周辺の生活環境に及ぼす影響に十分配慮するとともに、良好な近隣関係の形成及び保持に努めなければならない、
 さらに本条第4条2で、中高層建築物の建築に際して紛争が生じたときは、その紛争の当事者である事業者、工事施工者及び周辺住民は相互の立場を尊重し、自主的に解決するよう努めなければならない、としている。

 本条第5条1で、事業者は、中高層建築物を建築する場合は、周辺住民にその建築計画の周知を図るため、当該建築敷地の見やすい場所に、規則で定めるところにより、当該中高層建築物の建築計画の概要を表示した標識を設置するよう求めている。
 
 さらに本条第6条1で、事業者は、前条第1項の標識を設置した後、速やかに、近隣住民に対し、当該中高層建築物の建築計画の概要その他の規則で定める事項を説明し、
 本条第6条2で、事業者は、当該中高層建築物の建築計画について、近隣住民以外の周辺住民から説明を求められたときは、前項の規則で定める事項を説明するよう求めている。

 万一、紛争当事者の双方から紛争の調整の申出があったときは本条第8条1で、市長はあっせんを行い、紛争当事者の一方から紛争の調整の申出があった場合において相当な理由があると認めるときは第8条2で、市長はあっせんを行うことができるとしている。

 そして、本条第11条1で、市長の付託に応じ紛争の調停を行うとともに、市長の諮問に応じ紛争の防止及び調整に関する重要事項について調査審議するため、桶川市建築紛争調停委員会置き、
 本条第11条2で、調停委員会は、前項の諮問に関連する事項その他紛争の防止及び調整に関する事項について、市長に意見を述べることができる、としている。

 2012年4月に、桶川市紛争調停委員の委嘱を受け、2018年4月から5期目に入った。
 2012年4月~2018年3月までのあいだに建築された本条の定める中高層建築物については、事前説明の結果、当事者のあいだで計画が了解され、紛争・調停に発展することはなかった。
 そのため2018年4月第1回建築紛争調停員会は委員委嘱後、中高層建築物の状況について意見交換し終了となった。中高層建築において良好な近隣関係が築かれているということであろう。
 これからも本条の趣旨を踏まえ、中高層建築計画においては良好な近隣関係を保持し、地域における健全な生活環境の維持および向上に寄与を目指していただきたい。(
2019.2)

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2011.10 長い道のりを超え「埼玉県東部地域振興ふれあい拠点施設=愛称・ふれあいキューブ」開館

2018年02月08日 | studywork

2011.10  長い道のりを超え「埼玉県東部地域振興ふれあい拠点施設=愛称・ふれあいキューブ」開館   フルページはホームページ参照
 埼玉県春日部駅から歩いて5分ほどの好立地に「東部地域振興ふれあい拠点施設=愛称・ふれあいキューブ」が建っている(写真、外装に県産材を多用したユニークな外観も選定理由の一つ)。

 さかのぼって、平成元年1989年、埼玉県は「地域産業文化センター」構想を発表した。まだ景気が好調なころだったと思う。県は、県内の東・西・南・北に拠点施設を構想したらしい。東部地域では春日部市に建設が決定した・・ほかは川口、川越、熊谷だったと記憶している・・。
 ほどなく、基本構想策定委員会が組織された。第1回委員会で、私が座長に選ばれた。・・議論を重ね、基本構想をまとめて答申した。しかし、その後の経済環境の悪化で計画は頓挫し、知事の交代で行政全般が見直され、地域産業文化センター構想は中断した。20年以上前のことで、このときの記憶も記録も残っていない。

 2007年、「地域産業文化センター構想」を発展的に引き継いだ「東部地域振興ふれあい拠点施設構想」が動き出した。
 2008年、「東部地域振興ふれあい拠点施設構想(仮称)基本構想」を策定する委員会が組織された。私が座長に選ばれ、議論を重ねて、構想がまとまった。

 2009年、埼玉県はこの基本構想をもとにして官民共同の事業計画を具体化し、東部地域振興ふれあい拠点施設(仮称)整備事業について入札公告を行った。しかし、景気低迷が影響したのか、応募者が現れなかった。

 同年、埼玉県は、公共施設単独整備事業へと見直しを行い、施設整備の基本コンセプト「『都市の森』の創造~埼玉県と春日部市が提案する未来建物~」を提示し、設計業務委託を公募型プロポーザル方式で選定する方針に切り替えた。

 2009年
、「東部地域振興ふれあい拠点施設(仮称)設計業務委託公募プロポーザル」が公告された。同時に、設計業務委託業者候補者選定審査委員会が組織された。7者から応募があり、事務局による資格審査、1次審査ののち、審査委員会による2次審査で山下設計が最適案として選考された。

 最適案についての審査委員会の評価
① 施設の配置及び機能性、デザイン、シンボル性
・線路側から館内の活動を見通すことができること、線路側に豊富な植栽を配置する考え方が示された。
② にぎわいづくりと緑化
・低層階に多目的ホールを配置し、屋外広場との一体的な利用が可能なにぎわいづくりの工夫が示された。
③ ライフサイクルコスト(LCC)、ライフサイクルCO 2(LCCO 2)の削減
・平面計画のコンパクト化、実績に基づいた実現性のある省エネ技術の採用、設計終了後の性能検証などにより、LCC の32%削減、LCCO 2の48%削減を確実な形で提案している。
④ 自然エネルギー、新エネルギー導入による啓発
・地下水位が高い現地の状況に注目した井水、地中熱などを複合的に利用した斬新な空調設備の提案がされている。
・太陽光など自然エネルギーの活用状況や環境負荷削減効果などを表示し、利用者に見えることで環境に対する啓発効果を高める提案がされている。

 2011年、東部地域振興ふれあい拠点施設全体の包括的な管理運営を担う「東部地域振興ふれあい拠点施設指定管理者」の募集が行われ、指定管理者候補者選定委員会が組織された。10者から応募があり、・・埼玉ふれあい拠点運営共同事業体を候補として選定した。

 2012年、知事サイドから親しみやすい愛称をつけると広く活用されるのではないかの提案があり、東部地域振興ふれあい拠点施設の愛称選定委員会が組織された。
 ・・全国から975件の応募が寄せられ・・商標登録を確認のうえ、愛称選定委員会で審査のうえ、3作品を候補として選定し、県知事、春日部市長により「ふれあいキューブ」が愛称として決定した。

 2015年、指定管理者の契約期間満了に伴い、新たに「東部地域振興ふれあい拠点施設指定管理者」の選定を行うことになり、「指定管理者候補者選定委員会」が組織された。2者の応募があり、選定委員会でヒアリングを行ったうえ、審査項目ごとに採点をし、指定管理者候補者、次点候補者を選定した。その結果、埼玉ふれあい拠点運営共同事業体と契約された。


 スカイツリーラインの車窓からふれあいキューブの特徴的なデザインを眺めるたび、構想の策定、設計業務委託者の選定、指定管理者の選定、愛称の選定にかかわる紆余曲折を懐かしく思い出す。雨降って地固まるとよく言われる。さまざまな出来事を乗り切るたびにしっかり根付いていくと確信する。ふれあいキューブが県民市民に活用され、産業振興、地域住民の活動・交流の起爆になること期待したい。

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2014.10 草加市庁舎建設審議会は本庁舎を市民にかかわる窓口業務等、第2庁舎を管理部門等として答申

2018年01月24日 | studywork

2014.10 埼玉県草加のまちづくり「草加市庁舎建設審議会」 ②

 2014年3月の第4回審議会では、まず中間答申書が議論された。第2回審議会での結論である「庁舎建て替え」と第3回審議会での多数意見「現在の本庁舎敷地に建て替え」が骨子で、文言の修正について意見が出され、方針を確認のうえ会長一任となった。
 続いて、庁舎規模と新庁舎に求められる機能が検討された。
 事務局から、現在の本庁舎は4100㎡、西棟3505㎡、第2庁舎2100㎡、計9700㎡で行政機能を担ってきた、現職員およそ800人をもとに国交省の算定基準を準用すると庁舎規模は17000㎡必要で、西棟3500㎡に、新第2庁舎3700㎡と仮定すると、新庁舎の必要面積は17000-3500-3700≒10000㎡となる、従来の行政機能に加え防災機能を盛り込みたい、などの説明があり、従来の行政機能+新たに盛り込みたい行政機能の一覧が提示された。議論百出のうえ、災害対策本部、子育て支援、障がい者支援などが新たな機能として盛り込むこと、保健センター、コミュニティ施設、物産・観光施設、駐車場などは継続審議となった。

 第5回審議会は2004年5月に開催された。
 事務局から、前回の議論の要点の紹介とともに、新庁舎に求められる機能の基本方針が説明された。1.市民に親しまれる開かれた庁舎、2.市民サービスを高める機能的・効率的な庁舎、3.環境にやさしく防災の拠点となる庁舎、の3点である。
 議論に先立ち、Y市の新庁舎建設予算が建設費高騰で1.4倍に跳ね上がった件にからみ、草加市新庁舎の予算措置について質疑があった。草加市でも建設費高騰が予想される。審議会では建設費については諮問されていないが、建設費縮減は基本であろう。
 事務局は、新庁舎10000㎡、西棟3500㎡、新第2庁舎3700㎡で行政機能を充足させる案を示している。委員から、新第2庁舎をすべて民間に貸し出し、行政機能を新市庁舎に集約した場合の規模、メリット、建設費、さらに新市庁舎内にコンビニなどを導入して市民サービスの向上を計りつつ、収益をあげるなどの意見が出た。検討課題を事務局に宿題とし、継続審議となった。

 第6回審議会は2005年6月に開かれた。
 事務局から各部署の現況使用面積配分と国交省基準による面積配分比較、駐車場の比較検討結果の説明を受けたのち、新庁舎の検討に入った。一案は新庁舎+西棟に行政機能を集約する、二案は新庁舎+西棟と新第2庁舎に機能を分散させる、である。議論を重ねた結果、庁舎規模は17000㎡とし、本庁舎には来庁者が比較的多く+市民に直接かかわる機能=窓口業務等第2庁舎には来庁者が比較的少なく+市民に直接かかわらない機能=管理部門等として機能を分担させる方針が採択さた。
 駐車場についての議論の結果、新庁舎の免震ピット層を利用して50台ていどを確保する案が採択された。

 第7回審議会は2005年8月に開かれた。
 最終回である。これまでの議論を集約した「草加市役所本庁舎の整備について 答申書」案が事前に送付されているが、冒頭、事務局から改めて答申書案が説明された。諮問に対する答申なので、諮問書との整合性、これまでの審議会での意見の集約の是非、市民優先の行政サービス、文言の齟齬、市民への分かりやすさについて意見が交換された。
 修正内容が確認され、最終確認は会長一任とし、閉会になった。
 10月に、修正された答申書が会長から市長に答申された。
 この答申が活用され、新庁舎が市民サービスの向上、行政機能の充実、草加市の発展に大きな力となるよう期待したい。

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2013 埼玉県草加市庁舎建設審議会が設置され、耐震補強は難点あり、現庁舎敷地に建て替えが議論された

2018年01月23日 | studywork

2014.10 埼玉県草加のまちづくり「草加市庁舎建設審議会」 ①

 2013年11月、埼玉県草加市長の諮問に応じ、庁舎の建設に関する事項を調査審議するため(草加市庁舎建設審議会条例第1条)、草加市庁舎建設審議会が設置された。
 審議会は、1号委員学識経験者2名、2号委員地域団体等代表者8名、3号委員市民の代表2名、計12名で組織され、私も1号委員に選任された。

 11月に第1回審議会が開催された。
 市長からの諮問は、草加市役所本庁舎の整備について「耐震化の方針について(耐震補強か建て替えか)、建て替えの場合 ①建設場所について、②新庁舎に求められる機能について」であった。あわせて現市庁舎の配置・平面、行政組織と各部署の構成、構造などの資料が説明された。

 諮問内容について、まず、1.現庁舎が耐震補強によって構造上の安全が確保できるかを検討し、2.構造的に安全であっても庁舎の機能が満たされているか、市民ニーズに十分応えているか、少子高齢がさらに進む将来に対応しうるかの検討が先行し、その結果として建て替えるべきとの判断になった場合、3.場所の選定と、4.求められる機能の検討を行うべきではないだろうか。耐震補強か建て替えか、と同時に場所と求められる機能が諮問されるのでは、建て替えが前提の審議会と思われてもやむを得まい。結果ありきと思われる審議の進め方に疑問を感じた。


 しかし、事務局が用意した構造に関する資料によると、本庁舎上階の議場は吹き抜け空間のような形状となっていて構造耐力上脆弱なこと、杭が構造的に不安であることが分かった。さらに現行でも執務スペースが不足し、市民から不満が出ているが、耐震補強を行うと、さらにスペースが減少するばかりでなく、一体的であるべき執務スペースが耐震補強によって分断されることになりそうである。庁舎に組織された検討委員会では資料を精査し、幅広い検討を行い、最終判断を公開の審議会に委ねようと、今回の市長の諮問になったのであろうから、耐震補強と建て替えの場合が併記されたのもやむを得ないかも知れない。

 初回なので、自由に意見を交換したうえで、必要な資料、耐震補強に必要な工事費の試算などが要望され、閉会となった。

 第2回審議会は12月に開催された。
 新たな資料の説明をもとに意見を重ね、1)本庁舎の耐震補強により執務スペースの分断、床面積の減少が発生し市民サービスが低下すること、2)杭頭の補強が不可能であることから、庁舎建て替えが全会一致の意見となった。
 

 建て替えの場合は、建設場所と求められる機能が諮問されている。まず建設場所について意見が交換された。庁舎機能を分散させるという考え方もある。現庁舎は利便性の高い市街地に位置するが、新たな場所に移転し地域振興に貢献させるという意見もある。現在の場所では駐車場が不足しているので、十分にゆとりのある場所に移転するという考えもある。草加の歴史文化を象徴する立地という考え方もある。また、建て替えのあいだ、庁舎機能をどうするかという問題もある。
 事務局から建設可能な4カ所の候補が紹介され、継続審議となった。

 2014年1月に第3回審議会が開かれた。
 これまで草加市は、本庁舎、西棟、第2庁舎で行政サービスを担ってきた。事務局から、建て替えの場合は、第2庁舎機能を仮庁舎に移し、第2庁舎を建て替え、本庁舎機能を新第2庁舎+仮庁舎で担う案が説明された。新第2庁舎は5階建て3700㎡の案だった。新第2庁舎については次回以降の継続審議となった。

 行政機能にかかわる将来人口予測、新庁舎の規模などについて意見を交換した。事務局の試算によれば、現職員は818人をもとに総務省、国交省の算定基準を準用すると、庁舎規模は前者は19000㎡、後者は17000㎡になることも紹介された。

 その後、建て替え場所の議論を重ねた。その結果、市の中心性、利便性、まちづくりの拠点にふさわしい立地、計画の実現性と整合性を判断し、現在の本庁舎敷地に建て替える案が多数意見になった。
 続いて、庁舎規模、求められる機能について意見を交換した。これも継続審議となった。
 次回は、継続審議に先立ち、これまでに議論された耐震補強か建て替えか、建て替えの場合の建設場所について、中間答申をまとめることが確認され、閉会となった。

 

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2015.2 埼玉県は老朽化した県営住宅を高層化、創出地を民活で福祉施設とする団地再生を展開

2018年01月13日 | studywork

2015.2 埼玉のまちづくり「県営大宮長山団地再生事業事業者選定」

 埼玉県営住宅は、310団地、約27000戸ある。そのうち1965年代の住宅がおよそ2割あり、老朽化が進んでいる。そのころは階段室型の5階建て、片廊下型の7階建てが大半で、住戸面積も狭かった。エレベータのない階段室型、設備の老朽化、面積の狭さ、収納スペースの少なさなど、不満が高まっていた。入居当時は若い世代が多かったが、50年も経過して居住者の高齢化率は著しい。空き部屋が発生し、若い世代が少なくなって、自治会の活動も低迷してきた。
 そこで埼玉県は、古くなった県営住宅を建て替えるとき、エレベータを設置し、居住性を高めるとともに、高層化によって用地を生み出し、その土地を民間に貸し出し、入居者、地域住民の生活を支援する福祉施設として運営してもらう、団地再生を試行することにした。
・・2014年10月、県営大宮長山住宅の建替えでも、建て替えによる創出地を県から賃借し、高齢者支援施設、子育て支援施設及び多世代交流スペースを整備・運営する民間事業者を募集する、県営大宮長山団地再生事業が公表された。
 事業者に求められる必須機能は、1.高齢者支援施設、2.子育て支援施設、3.多世代交流スペースである。また、任意機能として、1.介護保険法による介護サービス、2.その他、団地や周辺地域に貢献する多様な機能については事業者の判断に任された・・いずれも細かな規定があるが省略・・。

 一方、事業者の決定にあたり、同年9月、まちづくり、子育て支援、高齢者支援、事業運営の学識経験者、および高齢介護、少子化対策、都市整備担当の県職員で構成する「県営大宮長山団地再生事業事業者選定委員会」が設置され、私も参画した。
 選定委員会では現地視察を踏まえ、再生事業について意見を交換し、審査方法について議論を重ねた。そして、事業コンセプト、事業計画、施設計画、運営計画を評価項目とすること、県事務局が応募者の参加資格要件を審査し・・1次審査・・、可とされた応募者に対しヒヤリング、質疑応答を行い、選定委員による評価、評価結果について意見交換のうえ、優先交渉権者=最優秀提案者、次点交渉権者=優秀提案者を選定・・2次審査・・することとした。

 2015年1月の受付日に3者から事業提案書が提出された。
 県事務局で応募者が参加資格の要件を満たしているか審査し、その結果、全ての応募者が一次審査の要件を満たしていることが確認された。
 審査の視点・・省略、フルページはホームページ参照・・、
 

 選定委員会による審査は、公平な審査を実施するため、応募者名は優先交渉権者=最優秀提案者、および次点交渉権者=優秀提案者を選定するまでは伏せることとした。
 応募者の提案内容に関するヒアリングを行い、提案意図等を明確にしたうえで、以下の項目について評価・点数化を行った。
①事業コンセプト:配点合計20点
 提案された事業コンセプト(目的・意義等)が本事業の主旨に合致しているか。
 団地や周辺地域の現状や課題を理解し、多くの住民の利便性の向上や交流の促進に資する多様な機能の導入が図られているか
 サービスを提供する対象者の設定が妥当であるかどうか
②事業計画:配点合計35点
 資金調達及び毎年度の収支計画の確実性と安定性について、根拠が明確な優れた提案がなされているか
 想定する補助金制度の改正など、不測の資金需要への対応について優れた提案がなされているか
 施設規模が、地域の需要を考慮し、また明確な需要予測に基づいた適正な規模となっているか
 事業を実施するにあたって特に影響が大きいと想定されるリスクが抽出され、顕在化させないための仕組み及び顕在化した場合の対応策について優れた提案がなされているか
 適切な工程が考慮され、早期に運営が開始されるスケジュールとなっているか
③施設計画:配点合計15点
 団地や周辺地域の住民が気軽に訪れやすい施設配置計画や外構計画となっているか
 利用者の特性を踏まえ、安全で快適に施設を利用できるような施設面での優れた提案がなされているか
 周辺環境に調和した景観形成への配慮や環境負荷低減に資する優れた提案がなされているか
④運営計画:配点合計30点
 必須機能(高齢者支援施設、子育て支援施設、多世代交流スペース)及び事業者の提案による任意機能が有機的に連携し、一体的かつ円滑な運営が可能な方針及び体制となっているか
 幼老一体施設という特性を活かした高齢者と子どもの交流など、利用者である高齢者の生きがいづくりや子どもの健全な育成に資する仕組みや工夫がなされているか。
 団地や周辺地域の高齢者や子育て世帯を中心とした多世代が交流・活動でき、地域の活性化に資する仕組みや工夫がなされているか

 選定委員の評価・点数化ののち、評価結果について意見を交換し、最終評価結果を単純加算した結果、最優秀提案者に応募者C、優秀提案者に応募者Bを選定した。
 総評は以下である。
 本事業は、県営大宮長山団地及び周辺地域に居住する高齢者や子育て世帯等に向けた福祉・子育て等に関するサービス提供を目的として、県有地に高齢者支援施設、子育て支援施設及び多世代交流スペースを整備し運営するものである。
 事業者を公募した結果、3者より応募があり、各者から提出された事業提案書を本委員会において公正に審査・評価し、最優秀提案者及び優秀提案者を決定した。
 各応募者の提案は、豊富な実績とこれまでに培われたノウハウをもとにした優れた内容となっており、本事業の特徴である「幼老一体施設」「多世代交流」についても様々な工夫がなされていた。
 審査の結果は、最優秀提案者となった応募者Cの得点が、優秀提案者である応募者Bの得点をわずか0.4点上回るものであった。応募者Aを含め、各応募者とも随所で優れた提案がなされていたが、応募者Cの事業計画の確実性と、建築計画の考え方を高く評価したものである。ただし、運営内容については応募者Bの提案に優れた点が多く、応募者Cには、運営内容を今一度整理していただき、今後、運営内容のさらなる具体化・充実化がなされることを期待している。
 応募者Cは、埼玉県と契約を締結し本事業の事業者となった場合には、自らが提案した事項を確実に履行することはもちろんのこと、埼玉県やさいたま市が目指す地域包括ケアシステムの一翼を担い、地域交流の場として地域住民から愛される場となるよう、地域と積極的に連携して事業を進めることを望む。

応募案Cについての講評・・応募案A、B省略、フルページはホームページ参照・・
 施設はコンパクトであり、必要かつ有効な機能が盛りこまれた施設計画となっている。
 人口推移等から将来需要予測を明確に整理し、結果をもとに適切に事業規模が設定されている。
 高齢者支援・子育て支援サービスをワンストップで提供する計画となっている。
 地域コミュニティスペースや屋外の交流広場を活用し、高齢者と子どもの交流促進を積極的に行う計画となっている。
 地域コミュニティスペースは、地域住民の動線が考慮された配置となっている。
 配置計画・建築計画が十分検討されている。自然エネルギー導入や積極的な緑化など、周辺環境・地球環境にも配慮がなされており、様々な工夫が随所にみられる。
 保育所の園庭は、保育環境や保育所の特性を考慮した配置となっており、南側に十分な面積が確保され、また交流広場も兼ねており地域交流の場としても期待できる。
 十分な収益力により、安定的な運営が見込める事業収支計画・資金計画となっている。
 高齢者支援施設・保育所職員相互交流の実施が計画されており一体的かつ円滑な運営が期待できる。また、継続的な職員研修によるサービス向上が期待できる。
 地域連携の取り組みに関するメニューは魅力がある。

  埼玉県営住宅再生事業は、老朽化した県営住宅を高層化して創出地を生み出し、民間事業者に貸し出して高齢者支援施設、子育て支援施設、多世代交流スペースを整備・運営する画期的なアイデアである。成果を期待したい。

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