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2024.4東京上野 博物館でお花見

2024年05月29日 | 旅行

日本を歩く>  2024.4東京 上野公園を歩く+博物館で花見

 上野東照宮ぼたん園の出口は上野東照宮参道に面していて、出ると左に上野東照宮唐門がきらびやかに構えている(写真)。1651年に徳川3代家光が建て替えた瓦葺き唐破風造の四脚門で、金箔を多用した華やかさは家光好みであろう。
 扉の左右の柱には左甚五郎作の昇り龍と降り龍が彫刻されている。唐門の左右には唐門と同時に作られた菱格子の透塀が延びる。唐門、透塀ともに国の重要文化財に指定されている。
 別名金色殿と呼ばれる社殿(1651年、家光により建て替え、権現造、重要文化財)の参拝は次の機会にして参道を戻る。
 参道には各地の大名から奉納された48基の灯籠が並び、五重塔が偉容を誇る(写真)。五重塔は1631年、当時の老中・土居利勝が建立するが、1639年に花見の火災で焼失し、その年に再建された。屋根高さ32m、相輪までの高さ36m、1層から5層までの屋根は同じ大きさで、1層から5層へと屋根の大きさが減衰する五重塔が伸びやか、優美に見えるのに対し、剛健さを感じる。
 参道を戻り、大石鳥居で一礼し、桜通りを左に歩く。

 桜通りの広場ではイベントの準備が始められていた。行く人、来る人、大噴水の周りに腰掛けくつろぐ人で賑わっている。都道452号の向こうが東京国立博物館=通称東博である。正面の本館は1938年、渡辺仁の設計で旧東京帝室博物館本館として開館した(前頁写真)。日本を代表する収蔵品が展示されていて、チケット売り場はいつも列ができるが、目当ての「博物館でお花見」は平常展なので70歳以上は無料である。身分証を見せて入館する。
 先にランチにしようと、右手東洋館に並ぶホテルオークラレストランゆりの木をのぞく。テラス席を含め140席あるが、満席だった。20分待ちだったので、予約券を受け取り、谷口吉郎設計、1968年開館の東洋館に入る。
 2階に上がり、エジプトやガンダーラの彫刻を見る。2000年ほど前の彫刻に当時の人々の思いを夢想する。
 「仏鉢供養・菩薩交脚像」は片岩を用いた3~4世紀のアフガニスタンの彫刻である(上写真)。中央は釈尊が四天王から受け取った4つの鉢、左右の足を交差した像は弥勒菩薩だそうだ。彫りの深い細かな細工にも目を取られるが、日本とは顔だちの違うアフガニスタンで、日本よりも早くから仏教が信仰されていたことに驚かされる。
 ホテルオークラレストランゆりの木に戻る。窓際の席で、桜を眺めながら花見気分でビールをいただき、ランチを取る(中写真)。桜のお陰でランチが格段に美味しくなった。

 ランチ後、桜の残る庭園を歩いた(前頁下写真、本館からの眺め)。東京国立博物館本館あたりにかつての寛永寺本坊が建っていて、本館北側の庭園が、(何度も改修されたため様相はだいぶ違うらしいが)寛永寺庭園の名残である。庭園は起伏に富み、樹木がこんもりしていて野趣に富んでいる。園路は起伏を縫いながら池を巡るように整備されている。
 高さ5.7mの銅製五重塔を見る。徳川5代綱吉が法隆寺に奉納した五重塔だそうだ。
 木造平屋、茅葺き入母屋屋根の春草廬が建つ。江戸時代、淀川改修のときに河村瑞賢が建てた休憩所の移築である。木造平屋、瓦葺き切妻屋根の転合庵を眺める。小堀遠州が京都伏見の六地蔵に建てた茶室の移築である。六窓庵を眺める。木造平屋、茅葺き入母屋屋根で、奈良興福寺慈眼院に建てられた茶室の移築である。いずれも通常非公開である。
 応挙館は茶屋として利用されていて、満席だった。木造平屋、瓦葺き入母屋屋根で、尾張国天台宗明眼院の書院として建てられ、円山応挙が滞在したとき襖絵などの墨画を揮毫したそうだ。建物を移築したとき、襖絵などをデジタル技術で複製し、応挙館に公開している(写真)。
 木造平屋、瓦葺き寄棟屋根の九条館は、東京赤坂に建っていた九条邸の居室で、内部を見学できるが外観を眺めて、庭園での花見散策を終える。

 本館北側の入口から入館する。「博物館でお花見」は、桜の時期に合わせて桜にちなんだ名品が展示される恒例の企画展である(今年は3月12日~4月7日)。本館の展示は部屋ごとの展示内容が決まっていて、定期的に展示物が入れ替えられる。「博物館でお花見」の展示も毎年変わっている。今年は桜を採り入れた屏風、瓢形酒入、振袖、浮世絵、色絵皿などが選ばれている。本館は広いので、本館展示案内図をにらみながら最短のお花見コースを探す。
 まず2階7室「屏風と襖絵」で、「犬追物図屏風」を見る。江戸時代作の六曲一双の屏風の右隻に、中央の犬を相手に馬に乗った武士が弓術をみがいていて、それをその周りの桜の下で人々が見物してる様子が描かれている。武士の弓術見物も町民の娯楽だったようだ。

 隣の8-1室「暮らしの調度」に移り、江戸時代作の「瓢形酒入」を見る。瓢形の下に鍍金の桜の花がはめ込まれている。風に揺れる桜花を眺めながら桜模様の徳利で一献傾ければ、酒はますます美味になろう。
 8-2室、9室を通り過ぎ、10室「浮世絵と衣装」で「金龍山桜花見」の浮世絵を見る(写真、横3枚のうちの中央)。江戸時代、長文斎栄之筆で、浅草寺本堂裏手は奥山と呼ばれ、吉原遊女たちが千本桜を寄進した桜の名所だそうで、武家、町家の女性が着飾って花見を楽しむ様子が描かれている。華やかさは伝わってくるが、浮世絵が少しくすんでいる。デジタル処理で色鮮やかな複製画にしたら格段に華やかになりそうである。
  10室には「振袖染分縮緬地枝垂桜菊短冊模様」の着物や「桜花婦女図」の浮世絵なども展示してあり、花見の気分が盛り上がる。
 1階に下り、13-3室「陶磁」で「色絵桜花鷲文大皿(写真)」「色絵桜樹図透鉢」「色絵枝垂桜図皿」などを見る。盛りつけられた料理を食べるたびに色絵が少しずつ現れてくる趣向だろうが、あまりにも見事な桜図に目を奪われ、料理の味を忘れそうである。
 今年も博物館で過分に花見を楽しんだ。疲れも心地よく家路につく。 (2024.5)

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