1992+2004 「フィールドサーベイ覚え書き その2」/(1992.6記+2004.9補)
10月17日のブログで「フィールドサーベイ覚え書き」を紹介したが、その続きである・・次回は続々報のその3を紹介する・・。
ホームページには「3 七つ道具を使いこなせ、4 調査用具のいろいろ」をまとめてあるが、長文なので、七つ道具の項を以下に記す。カメラのように時代の発展が早く古くさいところもあるが、基本は変わらない、フィールドに出る参考になれば幸いである。
3 七つ道具を使いこなせ
実際にフィールドに出てサーヴェイを行うときの要点について述べよう。調査地についたとき、集落を歩き始めたとき、屋敷の前に立ったとき、民家に入りいよいよ間取りを調べようとするときなどを想定すると理解が早い。
サーヴェイの基本となるのが七つ道具である。ゼミ生はすでに何度か実践しているので、後輩への伝え方のつもりで復習して欲しい。
七つ道具の1=足
サーヴェイに向かう足。犬も歩けば棒にあたる、の諺どおりフィールドに出ることが最初であり、そのためにはおっくうがらず歩き回る足が第1にあげられる。
足は同時に、歩測機能をもつ。通常、歩幅は一定している。何度も何度も歩きながら歩幅を測定し、一定の歩き方のリズムをつかんでおく。人によっては58cmとか、64cmとか、端数がでる歩き方になっている。もし練習で調整がつくようならば計測のしやすい50cm、60cmなどのリズムをつかんでおくと、全長の計算に都合がよい。
例えば、道路側敷地長さが48歩ならば、48×60cm=28.8mとして測定できる。さらに門の位置は南側境界点から6歩目で始まり9歩目までと測定できれば、門の位置が野帳に図示できる。
まさに、サーベイは足でかせぐ、のである。
七つ道具の第2は目
漫然と風景を眺めるのではなく、見つける目、発見する目が欲しい。
まずは現象として目に映った事柄をそのまま見つめる。見えている状態を野帳に写すと、自分は何を見ているかがはっきりする。
もっとも、実際に見ているはずなのに、野帳に描くときには目で見る→脳→手で描くと脳で変換されるせいか、見ている状態とは違った図を描いている人がいる。要注意。
次に自分の記憶ファイルを大急ぎでめくり、目に映っている図と自分の記憶との違いを見つけ出す。その意味では、調査員はいつも旅人の目になる必要がある。
さて違いを見つけたらこれからがポイント。どうしてそのような違いが生じたか、想像力を思いきり働かせなければならない。
へ理屈でもいいから違いの理由、根拠を野帳に日付を入れてメモる。さらに誰かに話してみる。彼が答えを知っていることもあるし、もし2人とも疑問と感じるのであれば、かなりの確率で新しい発見になる。
地元の人も答が分からなければ、これは是非とも解明し、地元に還元すべき大発見かも知れない。
サーベイは眼力が成果を左右するのである。
七つ道具の3は手
手の働きは多い。まず触ること。建築素材の材質感、木肌、テクスチャを知るには触って触って触りまくって、体で素材感を理解したい。
暖かい素材は保温性が高いことになるし、冷たく感じれば熱伝達率が高いことを示す。ともかくさわることから始める。
手の働きのもう一つは、記録することである。測ったもの、見つけたもの、触った感じ、自分の考えを野帳に日付を入れて記録する。日付はあとで整理するときの手がかりになるし、思考の進化が分かる。
手は、ものの大きさを測ることもできる。手を広げたとき、私の場合、親指から小指までだいたい23cm、親指と人差し指の広さは19cmになる。
両手を広げたときの長さ(一尋ひとひろ)はだいたい身長ぐらいになるといわれている。
そもそも、人間が生活する空間の計画では人間の大きさを考慮するのはしごく当然であり、足や手など、体を使って空間の大きさを理解することは誰もが無意識にしていることであろう。
研究者、計画者は意識して、空間を身体的に理解する必要がある。大いに、手を使って触ったり、測ったり、メモって欲しい。
七つ道具の第4=野帳
省略
野帳とくれば次は筆記用具、七つ道具の5は鉛筆
省略
七つ道具6はコンパス
民家は原則として南面を志向する、といってほぼ間違いない。生活に日照は欠かせないし、とくに冬の寒さをしのぐには日照が不可欠である。
ところが、すべての民家が正確に南面しているわけでもない。敷地形状、接面道路、等高線、風向きなどの影響が民家の配置を左右することがある。
信仰が影響することもある。たとえば、中国・韓国の風水、沖縄のニライカナイ、バリ島のナワサンガといった方位概念もある。
民家を見たらまず方位を確認したい。アナログの時計は、太陽が出ていれば南を知ることができるので磁石を忘れたときは代用することができるが、雨・雪・曇では使えないので、コンパスをいつもポケットに入れておく。
七つ道具の最後はコンベックス
略・・・ともかくおっくうがらず、遠慮せず寸法を取っていく姿勢が大切だ。