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2023.3愛知 渥美半島を走る

2024年01月13日 | 旅行
日本を歩く>  2023.3 渥美半島を走る


 地理で、愛知県渥美半島は冬でも温暖で春の訪れが早いと習った記憶がある。まだ訪ねたことはなかったので、伊良湖岬に加え大河ドラマにあわせて整備された浜松城、中間の浜名湖・舘山寺温泉泊の旅を計画した。旅を終えて、伊良湖岬~浜名湖~浜松城はドライブが長くなり反省した。
 行程が長いので豊橋駅でレンタカーを借りることにし、初日、昼ごろに豊橋駅に着く。駅ビル・カルミアでランチを取りレンタカーに乗る。
 ナビに蔵王山展望台を入れ、豊橋駅前通りから国道259号線に右折する。市街は車が多かったが、市街を出ると流れはスムーズになる。国道259号線から田原街道に枝分かれし、県道28号線、県道399号線を経て、坂道を登ると標高250mほどの山頂に展望台が整備された蔵王山に着く(写真)。
 最上階の展望台に上る。ガラス張りの展望室で、360度の眺望が開けている。北西を眺める。渥美半島が暖かいせいか、今年は温暖なためか、桜が咲き誇り、その先に三河湾、その向こうに知多半島が遠望できる(写真)。西を見ると伊良湖岬、南~東には太平洋が広がっている。家族連れも多い。床に書かれたマップと照らし合わせながら360度の風景を眺める。
 途中階の四季が体感できるモーショングラフィックやエコロジーへの取り組みの展示などを見てから車に戻る。

 ナビに菜の花まつり会場の伊良湖菜の花ガーデンを入れ、蔵王山を下る。伊良湖菜の花ガーデンは渥美半島の南西になるので、渥美半島を横断して太平洋側の国道42号線に向かう。
 国道42号線は太平洋に沿った道路だが、海と道路のあいだは開発されていて海は見えない。温室がいくつも並ぶ。温暖、日当たりを活用した野菜、花卉の栽培だろうか。空地には菜の花が咲いていて、会場が近づいたことを予感させるが、風景は単調である。
 菜の花まつり会場の案内板を見つけ、道路の右=南に整備された駐車場に車を止める。駐車場は混雑はしていない。道路の左=北側が菜の花まつり会場で、スタッフの誘導で道路を渡る。入口アーチ横の受付案内で、スタッフが申し訳なさそうに菜の花の盛りは過ぎましたと言う。今年は暖かすぎたようだ。そういえば来場者も少なく、出店も引き上げてしまったようで数店が残っているだけだった。
 菜の花ガーデンを遠望する。勢いづいた緑の合間あいまに菜の花の黄色がパラパラと見える(写真)。パンフレットでは黄金色がまぶしいほどに一面が黄色に輝いている。盛りのころは壮観のようだ。
 菜の花のあいだの散策路を歩く。菜の花を背景にしたブランコや写真スポットが用意されていて、カップルが笑顔で記念の写真を撮っていた。菜の花が少なくても楽しめる若さを感じる。
 緩い勾配のなっちの丘に上る。芝すべり台が設けられていて、子どもに交じり若い女性がキャーキャー言いながらそりで滑っていた。なんでも笑える若さがある。そんな光景を見ていると、期待の菜の花が乏しくても元気になる。
 菜の花ガーデンを一回りしてから、海への小径を歩き、浜辺に出た。太平洋の波が押し寄せている(写真)。砂浜が伸びているが釣り人もサーファーも見当たらない。海辺の地形が釣りやサーフィンに向かないのだろうか。
 コーヒータイムなので太平洋を眺めながらコーヒーを飲みたいところだが、カフェはない。菜の花会場には菜の花ジェラートの出店はあったがコーヒーはなかったので、伊良湖岬に向かった。

 国道42号線を西に走り、伊良湖岬に通じる恋路ヶ浜の駐車場に車を止める。ホテルや魚介料理の店が並んでいるが、カフェはない。コーヒーは諦め、伊良湖岬灯台まで遊歩道を歩く。岬は隆起した岩が何層にもグシャッと重なっている(写真)。隆起する力はよほど強いようだ。
 岩場の上に高さ14.8m、白亜の伊良湖岬灯台が建つ(前掲写真)。1929年に建てられ、2002年に改築された。青い空を背景にした白い円形の灯台として人気があり、日本の灯台50選に選ばれているそうだ。灯台内は非公開のようで扉は閉まっていた。
 遊歩道を歩きながら、図解された解説板を読む。伊良湖岬は沖を流れる黒潮で平均気温が16℃と暖かく、黒潮が南方から運んできた種子が根付き、南方起源のハマナタマメ、ハマゴウ、ネコノシタなどが生育しているそうだ。
 別の解説板には、伊良湖岬を経て琉球列島、さらに東南アジアまで移動するタカ、ヒヨドリなどの渡り、渥美半島を中継基地にして紀伊半島、四国、九州、南西諸島、琉球列島、遠く台湾まで飛ぶアサギマダラの渡りが図解されていた。目の前に咲いている草花、ひらひらと飛んでいるアサギマダラ、空を飛ぶタカやヒヨドリの想像を超える遠大な旅に驚かされる。

 ふっと思い出し調べた。小学校で歌った「名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ 故郷の岸を 離れて なれはそも 波に幾月・・」は、島崎藤村(1872-1943)の叙事詩「椰子の実」であり、藤村のこの詩はここ伊良湖岬・恋路ヶ浜を舞台としていた。
 実際に伊良湖岬で椰子の実を見つけたのは民俗学者柳田国男(1875-1962)で、柳田は「海上の道」を構想するのだが、藤村に黒潮に乗って流れ着いた椰子の実のことを話し、それを聞いた藤村が叙事詩を創作したのである。
 椰子の実を見つけて海上の道を構想する柳田、その話を聞いて叙事詩を創作する藤村、2人の異能ぶりには驚かされる。伊良湖岬の解説板から柳田、藤村を思い出すことができた。解説板に感謝である。駐車場に戻り、今日の宿に向かった。


 宿は国道42号線を少し戻った高台に建つ。部屋からも露天温泉からも恋路ヶ浜と伊良湖岬を見下ろすことができる(写真、翌朝)。灯台は丘に隠れて見えないが、太平洋をはるか彼方まで見通せる。
 ここを流れる黒潮に乗って椰子の実が流れ、ハマナタマメなどの実が根付き、黒潮に沿ってタカやアサギマダラが南を目指して渡ると思うと、遠大な気分になる。いい気分で地元の野菜、魚介の料理、地酒を堪能した。
 翌朝、黒潮を見下ろす(前掲写真)。潮の透明度が高いため青黒く見え、黒潮と呼ばれたことが実感できる。
 チェックアウト後、太平洋=遠州灘に沿った国道42号線を東に走り、静岡県に入り、浜名湖を過ぎ、浜松城を目指した。
 (2024.1)

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