yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

「トスカーナの休日」を斜め読み

2014年10月21日 | 斜読
b381 トスカーナの休日 フランシス・メイズ 早川書房 2004   斜読・海外の作家

イタリアにはアルベロベロの調査を始め、数回、短い旅をした。今秋、トスカーナを始めとしたツアーに参加する予定が立ったので、予習の本を探してこの本を見つけた。
 訳者によれば、1998年に日本でも出版され、そのあと映画が公開され、初版に若干の修正を加えたこの本が出版されたそうだ。
 原題はUnder the Tuscan Sunで、アメリカ人の著者がイタリア・トスカーナの太陽に憧れ、「ブラマソーレ=太陽を焦がれる」という名の5エーカーの土地付きの古い一軒家を買い取ってトスカーナの暮らしを満喫するエッセイである。どうしてトスカーナに家を買いたくなったか、買った家がどんなだったか、それを自分好みに改修するために何をしたか、毎日をどれだけ充実して過ごしたか、新鮮な野菜を使いどんな料理を楽しんだかなどが、赤裸々に、しかも詩情を込めて描かれている。

 目次で本の内容=著者の暮らしの楽しみ方を紹介する。
はじめに
1 トスカーナに家を買う
2 ガラクタの山
3 聖母の祠
4 野放図な果樹園
5 まわる太陽
6 ゆっくり急いで
7 木陰のテーブル
8 夏のキッチン・ノート
9 高貴なる都市、トスカーナ
10 マレンマへの旅
11 イタリア人になる
12 緑のオイル
13 トスカーナのクリスマス
14 冬のキッチン・ノート
15 ばらの道
16 完成の日
17 夏の名残り
18 ソッレオーネ

 著者は5冊の詩集を出版していて、トスカーナの暮らしを描いた本をほかに2冊出版するほど人気がある。それは日々の驚きや感動を素直に描写する文章から、なおかつその文が叙情的であることからもうかがえる。何より、熟年離婚したアメリカ人が新しい夫ともに、イタリア・トスカーナの暮らしに憧れ、つには家を買い取り、自分たちのイメージに合わせて改修する前向きで明るい生き方は魅力的だし、同調する人も少なくないと思う。
 だが、私は読んでいる途中で読むのを止めたくなった。もちろん、これまで読み出した本を投げ出すことはほとんどない。きっとどこかに共感するところがあり、得るものがある、それが数行でもいいと思ってきた。この本も、途中、別の本を読むなどして何度か再挑戦を試み、読み終えた。

 なぜ、読みたくなくなったか。私には著者が異次元の世界に住んでいるように感じた。羨ましさとは違う。私の世界でも、私の家族や友人知人の世界でも起こりえない、「ティファニーで朝食を」並みの映画の世界にしか思えないことを実演していることが、理解できないのである。
 著者はアメリカの大学の教授である。同居する彼は別の大学の教授である。著者には大学生?の一人娘がいてアメリカで暮らしている。著者はアメリカにも家があるが、あちらこちらを旅していて、トスカーナに焦がれてしまった。
 大枚をはたき、斜面地に建つ古い石造りの家を、5エーカーの土地付きで購入する。それから、夏休みと冬休みを利用してトスカーナの家の改修に励みながら、トスカーナの暮らしを満喫する。それを微に入り細に入り書き記した。その一冊がこの本である。

 訳者は、イタリアに家を買うなって大それたことは無理としても、せめてもっと楽しく豊かに生きたいと思っている人へのヒントが詰まっている、とあとがきに記している。
 私は、自分の子どもの教育をカミさんに投げ出し、夏も冬も休み無しに1年中、研究と教育に没頭してきた。借金だらけで小さな土地を買い、自らも労働して家を建てた。これが精一杯、限界だった。子どもたちは独立し、さほどでもなくがっかりした退職金と年金でときどき短い海外旅行をするのが関の山である。
 だから、この本を読んでいると、異次元の世界に住んでいるように思える。私が異次元の世界で、著者たちがまっとうな世界なのかも知れない。それでももう少し楽しく豊かな暮らしをしようと、ささやかな努力を重ねてきた。著者はそれをはるかに超えてしまっているのである。映画の世界としか思いようがない。

 むろん、どんな本にでも共感があり、知見が隠されている。著者の物怖じしない前向きさ、何があってもへこたれない明るさはどんな暮らしにも不可欠である。果物、樹木、野菜、料理、ワイン、歴史への強い関心が暮らしを豊かにし、日々の喜びを強めている。なによりトスカーナの人々への親しみの深さを感じる。
 著者の生き方を私の旅に当てはめれば、短い日程の旅でも楽しさ、豊かさが高まりそうだ。(2014.9読)




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皆既月食&上を向いて歩こう

2014年10月09日 | よしなしごと

2014.10.9 昨晩は皆既月食だった。
幸い雲に邪魔されず月が輝いていたので、ビールを片手に、バルコニーから月食を鑑賞した。
5-6才のころか、ぐっすり寝込んでいたところを父親に起こされ、月食を見せられたことがある。
睡魔の方が勝って、すぐに寝てしまった。
自分の子どもにも月食を見せようとしたことがあるが、子ども達はやはり眠気が勝り、すぐ寝てしまった。

そんなことを思い出しながら、バルコニーと食卓を行ったり来たりしながら、夜空を楽しんだ。
写真は、左上から月食が始まり、右上、右下と月食が進み、左下はほぼ皆既直前の合成である。

坂本九のヒット曲に「上を向いて歩こう」という歌がある。
働き盛りになると、上を向くことがめっきり少なくなる。
都会では照明が明るいこともあり、月や星の輝きをめったに見なくなる。
たまに星空を見上げると、宇宙のたくさんの星のなかの地球、地球のたくさんの国や地域のなかの日本、大勢が活動している中の自分、に改めて気づかされる。
もし孤独と感じたら、「上を向いて歩こう」を歌いながら星空を見上げるといい。
いつか、星のようにあなたが輝くときが必ずやってくる。
星空はそんな気持ちにさせてくれる。

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