2019.5 ティー・タイムコンサート「西澤安澄ピアノリサイタル」 <日本の旅・埼玉を歩く一覧>
さいたま市北役所を含む複合施設プラザノースで、5月24日・金曜に公演された「西澤安澄ピアノリサイタル」を聴いた。
ノース・ティータイム・コンサートは「ウィークデーの午後、お茶を楽しむように音楽を聴きながら過ごす」をコンセプトにしていて、気軽に音楽を楽しめるように公演時間も45分などと短い。入場料は500円で廉価なうえ、コンサート終了後珈琲紅茶を楽しめる珈琲割引券も付いている。
西澤安澄氏の演奏は初めてである。氏は、桐朋女子校音楽科卒後、桐朋学園大学で学び、ジュネーヴ音楽院大学院に進んで国際コンクールで入賞、優勝を重ね、一等賞で卒業した。卒業後、マドリッドに拠点を移し、世界各地で演奏活動を展開しているそうだ。
演奏のあいまにスピーチがあり、「ふだん、日本語を使わないからなめらかな日本語が出てこない」などと冗談を言っていた。父が埼玉で教授だった?、埼玉在住だった?ので、埼玉に親しみがあるそうだ。
住まいからアルハンブラ宮殿のすばらしい風景を眺めることができるとも言っていたから、いまはグラナダ・アルバイシンあたりに住んでいるようだ。
1曲目は、スペイン・カタルーニャ出身アルベニス(1860-1909)作曲の「入り江のざわめき(組曲・旅の思い出より)である。
南スペインの港町マラガの民謡から着想した曲らしい。私は1994年と2015年のスペインツアーで南スペインも訪ねている。南スペインらしく、曲は明るく、躍動的である。
2曲目は、南スペイン・カディス出身ファリア(1876-1946)作曲のバレエ音楽「粉屋の踊り(組曲・三角帽子より)だった。アンダルシア地方の民話をもとにした三角帽子という短編小説を下敷きに、バレエ音楽を作曲したそうだ。
3曲目はスペイン・カタルーニャ出身モンポウ(1893-1987)作曲の「歌と踊り第6番」である。15曲の作品群のうち13曲目がギター、15曲目がオルガンのための楽曲で、残りがピアノのための作曲だそうだ。6番はキューバ・アルゼンチン・ブラジルの影響を受けたリズムが使われているらしいが、西澤氏が解説しなければ分からなかった。
アルベニスもファリアもモンポウも馴染みがなく、音楽も初めて聴く気分だった。あいまのスピーチに「アルハンブラの思い出」の1小節を弾いてくれたので、スペインらしさが共通していることが理解できた。
4曲目はショパン(1810-1849)の「英雄ポロネーズ」の演奏である。
1842年作曲ですでにショパンはパリに住んでいる。ポーランドはロシア支配下にあり、再三蜂起が起きているが、作曲されたころはポロネーズ(=ポーランド風)第6番と呼ばれた。
1848年フランスで2月革命が起きた。ショパンとも同棲したことのあるフランスの作家・ジョルジュ・サンドがショパン宛の手紙に、ポロネーズ第6番はフランス革命の英雄達の象徴となると書き送ったことから、英雄ポロネーズと呼ばれるようになったとの説もある。
英雄ポロネーズは我が家のCDにも収録されていて、馴染みがある。西澤氏の熱演は心に響く。
最後の演奏は、フランス・バスク出身のラヴェル(1875-1937)作曲「ボレロ(西沢安澄編曲)」である。
ボレロも指揮、楽団の異なるCD2枚を持っていて、家でよく聴く。私の好きな曲の一つだ。西澤氏の熱演に聴き入った。15分ほどの演奏だろうか、全力を出し切ったようで弾き終わってしばらくは動けず、呼吸を整えていたほどである。
大きな拍手で演奏に感謝したところ、拍手に応えてアンコールも弾いてくれた。重ねて感謝の拍手を送る。
午後のひととき、熱演を楽しみ新たな知識を得ることができた。