yoosanよしなしごとを綴る

つれづれなるままにパソコンに向かいて旅日記・斜読・よしなしごとを綴る

2017.9「運慶展」へ、運慶20代半ばの国宝・大日如来像はりりしい顔立ちで異能ぶりがうかがえる 

2017年10月05日 | よしなしごと

2017.9 東京を歩く 運慶
 
日本橋クルーズのあと、地下鉄銀座線・三越前駅から上野駅に出た。次は、東京国立博物館で開催されている「興福寺中金堂再建記念特別展・運慶」である。9月26日開催でまだ数日、今朝のテレビでも運慶展を紹介していたから混雑を覚悟していた。ところが、待ち時間0、並ばずに入場できた。一般1600円、前売り1400円の入場料になると混雑が緩和されるのかも知れない。
 奈良・興福寺は何度か訪ね、阿修羅像など国宝、重要文化財の仏像を拝観している。興福寺だけでも100点以上の貴重な文化財を有していて、よほど焦点を絞って見学しないと印象が拡散してしまう。今回の「運慶展」のように、作者や作風、時代などに主軸をおいた展示だと焦点が絞られ、理解が深まる。理解が深まれば、どこかの寺院で仏像を参拝するときも、作者、作風、時代などの見方が異なり?、進歩し?、寺院や仏像、強いては仏教が身近になってくると思う。
「運慶展」は平成館で開催されている。平成館は、1999年、皇太子成婚記念に、安井建築事務所の設計で作られた(写真)。1908年、大正天皇の成婚記念として片山東熊の設計で作られた表慶館の重厚なデザインに比べ、軽快である。時代感覚の違いであろう。
 展示は、中央階段を上がった2階の右手前の第1室=第1章から始まり、右奥の第2室=第2章、そして左奥の第3室=第3章へと展開している。
  第1章は「運慶を生んだ系譜-康慶から運慶へ」で、運慶の父・康慶や師匠たちの作品も展示されていて、運慶が康慶や師匠たちの手ほどきを受けながら、才能を伸ばしていったことが分かる展示になっている。康慶は興福寺周辺を拠点とする新たな造形を展開しつつあった奈良仏師に属していたそうで、おそらく運慶も新しさに挑戦するという気風を感じ取ったのではないだろうか。
 重要文化財の阿弥陀如来像、毘沙門天立像、地蔵菩薩像などが康慶や師匠の作だそうだ。運慶作は、国宝の大日如来座像、重要文化財の仏頭などが展示されている。運慶の生年は不明だが、大日如来座像(平安時代1176年)は20代半ば、仏頭(鎌倉時代1186年)は30代半ばと推定されている。
 大日如来が印を結び瞑想にふける座像は、体型も正確で、りりしい顔立ちである。衣のひだもなめらかで、木彫とは思えない柔らかさを感じさせる。突然、ミケランジェロのピエタを思い出した。ピエタはミケランジェロ20代半ばの作品である。運慶もミケランジェロも、生まれながらに異能を身につけていたのであろうか。環境が異能を育てるのだろうか。凡人には想像のできない世界を感じる。
 第2章は「運慶の彫刻-その独創性」の展示は15点ほどで、ほとんどが運慶の作品である。興福寺のほかに、静岡・願成就院、神奈川・浄楽寺、和歌山・金剛峯寺などの作品も集められている。運慶を主題に、各地から作品を集め一堂で拝観できるのは展示会の醍醐味であろう。
 国宝・毘沙門天立像は願成就院所蔵で、1186年作、30代半ばである。両足で鬼?、悪魔?を踏みつけ、厳しい顔立ちで前を睨んでいる
立像は力強さを感じさせる。左に腰を少し曲げていて、動きもある。
 国宝・八大童子立像は和歌山・金剛峯寺所蔵で、1197年ごろ、40代半ばの作である。8人の童子はどれも躍動感があり、彩色も鮮やかに残っていて、見栄えがする。多くの仏像は彩色がはげ、まだらになっていて見栄えがしない。可能な限り修復し、当初の印象を再現して欲しい。運慶の作品では目玉に水晶を入れてあり、八大童子も水晶の目のお陰で目が生き生きしている。
 国宝・無著菩薩立像むじゃくぼさつりゅうぞう・世親菩薩立像せしんぼさつりゅうぞうは興福寺所蔵で、1212年ごろ、60才のころの作である。運慶は1223年に没しているから、晩年に近い=完成度の高い作品といえるかも知れない。 背は高く、体格もいい。一体は、修行の厳しさを表した像、一体は悟りを開き穏やかさを表した像のように感じた。
 第3章は「運慶風の展開-運慶の息子と周辺の仏師」をテーマに作品が展示されている。運慶には6人の息子がいて、いずれも仏師になったそうだ。そのうち、湛慶たんけいと康弁こうべんの作品が展示されている。ここでも、奈良・東大寺、京都・高台寺、東京・静嘉堂文庫美術館などから作品を集めて展示してある。重要文化財十二神将立像は、作者不明だがもとは京都・浄瑠璃寺の仏像で、明治初頭に流出し、東京国立博物館と静嘉堂文庫美術館の所蔵になっていて、今回の展示会で一堂に会することになった。十二神は干支に対応していて、それぞれ表情や体つきに特徴が現れていた。
 第3室を見終えるとさすがに疲れを感じた。表慶館ではフランス人間国宝展を開催していたがパスし、ホテルオークラレストランゆりの木で、異能の仏師・運慶を思い出しながらコーヒーを飲んだ。
 日本橋川クルーズ+運慶、中身の濃い一日を終え、帰路についた。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2017.9 初めての日本橋クル... | トップ | 2017.4~9 酩酊し、大いびき... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (omachi)
2017-10-05 20:37:09
運慶展を観た方にWEB小説「北円堂の秘密」をお薦めします。グーグル検索で無料で読めます。
返信する

コメントを投稿

よしなしごと」カテゴリの最新記事