鹿島アントラーズ原理主義

愛する鹿島アントラーズについて、屈折した意見を述べていく場です。

頭脳派プレイヤー、梅鉢くん

2010年07月29日 | Weblog
「月まで走る」関西大学第一、難敵・八千代に完勝
<3回戦 関西大学第一(大阪) 2-1 八千代(千葉)>

2010年1月3日(日)


先制点に喜ぶ関西大学第一の選手たち【たかすつとむ】
 三が日の終わり、市原臨海競技場では地元の観衆が何度も恐怖に背筋を伸ばし、安堵(あんど)のたびに詰まった息を吐き出して上体を前へ折った。そして1-1で迎えた後半32分、会場はため息さえ聞こえない静寂に包まれた。
 前半17分に関西大学第一のMF濱野友旗が放った豪快な先制ミドル弾、同27分に八千代がエース石川誠也の同点弾につなげたナタのような切れ味のカウンター攻撃。互いが攻め合う極めてスリリングな魅惑の一戦に終止符が打たれたことを約8000人の観衆が悟った瞬間だった。
 電光掲示板には関西大学第一の勝ち越し点が記された。2-1で逃げ切った関西大学第一の佐野友章監督は「想定外」と話し、思わず笑みをこぼした。前評判、過去の実績ともに上回る八千代を相手に主導権を握り通せるとは思っていなかったという。しかし、実際には完勝だった。試合を支配し続けて、ゴールポストやバーに何度も嫌われながら攻め続け、ついに決勝点をたたき込んだ。

■鹿実が地球一周なら、関大一は月まで走れ
 勝利の鍵は自慢の走力だった。攻撃ではサイドバック、ボランチが次々と攻め上がる。そしてボールを失えばすぐに攻守を切り替え、ファーストDFがパスコースを消してプレッシャーを掛け、全体で素早く守備隊形を整える。八千代は細かいパスワークが持ち味だが、バックラインが押し上げられず、サイドハーフも高いポジションを取れずにいたため、司令塔・長澤和輝のキープ力とスルーパス、エースFW石川の突破力という個人技に頼らざるを得なくなっていた。
 八千代のGK永村達郎は「ディフェンスラインでボールを回すことができなかった。ラインと中盤でボールを出し入れしながら、中盤が前を向いてボールを持つことができず、ロングボールを蹴るしかなくなってしまった。うちのいいところをつぶされてしまった」と苦い一戦を振り返った。

 金星を挙げた紫紺のイレブンの応援スタンドには「月まで走れ! 一高サッカー部」の横断幕が掲げられている。15年ほど前から定着したこのスローガンを佐野監督は苦笑いを浮かべながら説明した。
「鹿児島実業さんが3年間で地球一周分(※約4万キロ)を走るという話があって、それならうちは月まで走ろうと。言った覚えはないんですが、結果的に僕が言ったということにされています。でも、月までは38万キロ。3年間(在学している期間)で走るとしても1日で360キロぐらいですから、無理です(笑)。まあ、部員を70人で計算して1人1日5キロですね。この時代に根性論かと言われますが、『苦しい時に頑張れ』と。そればかり言っています」

 さすがに実際の走行距離は定かではないが「3200メートルを12分間で走る」という条件をクリアできなければ、どれほど技術があってもトップチームには入れない(GKは別基準)という走力テストが行われており、入学当初はクリアできない新入生も夏を過ぎるころには設定タイムを突破し、トップチーム候補に名を連ねるという。

■ハッタリとエール「大学でも競技場でも国立へ」


梅鉢貴秀(手前)の決勝ゴールで関西大学第一は勝ち越しに成功【たかすつとむ】
 過去に出場した2大会では初戦の壁を突破できなかったが、今大会では2回戦からの出場で2勝を挙げベスト8へと躍進した。この日の勝利の立役者は、初戦の後に指揮官から呼び出され「次も出来が悪いようなら15分で交代させる」と雷を落とされた2人の2年生。先制点を決め、力不足に泣いた前日のうっぷんを晴らした濱野は「初戦はシュートを打てたけど決め切れなかった。15分で結果を出さなアカンと思ってだいぶビビってたけど、得点の場面はコースが見えたので思い切り打った。入って良かった」と胸をなでおろした。
 決勝点を決めたMF梅鉢貴秀も「昨日は勝ったけど、自分は何もできなかったので素直に喜べなかった。15分で見切られても仕方がないと思ったけど、怒ってくれるということは言葉に裏があると思って頑張った」と見事に発奮してみせた。実際、佐野監督は「選手層が厚くないから本当は変えるつもりはなくてハッタリでした」と15分宣告の真意を明かしをしたのだが、後半の走力勝負を待たずにリードを奪った先制点、80分勝負でケリをつけに来た相手に引導を渡した勝ち越し点と、2人が期待に応える形でハッタリの効果はテキメンだった。

 ちなみに、佐野監督が「勉強もよくできる」と評価する梅鉢は、母親の薫さんから面白いエールを受けたという。
「勉強の方は理系で国立大学を目指しているんですけど、母には『とにかく国立に行け、大学でも競技場でもいいから』と言われました」
 関西大学第一は、5日に市原臨海競技場で藤枝明誠(静岡)と対戦する。全国大会未勝利からの大躍進が続けば、夢の舞台「国立」の芝を踏むことになる。


<了>

走るだけじゃない、くせ者が支える関大一の快進撃
<準々決勝 関西大学第一(大阪) 4-1 藤枝明誠(静岡)>

2010年1月5日(火)
■両足で高精度のキックを誇るボランチの梅鉢


小島悠司(写真)の2ゴールを引き出したのはいずれも梅鉢の正確なキックだった【鷹羽康博】
 関西大学第一の疾走は止まらない――。「月まで走る」、そんなフレーズにも象徴される彼らの豊富な運動量は、藤枝明誠を4-1でねじ伏せる勝利を挙げた。初の国立行きの切符を手にした佐野友章監督は、「何で勝てたのか分からないが、運動量と球際でガツンといく普段のサッカーができている」と関西大第一らしさが存分に発揮されたことを勝因に挙げた。

 キックオフ直後から藤枝明誠のエース・安東大介とトップ下の大山和早には、DF水田優輝と小島悠司が徹底的にマークについた。この相手のキーマンに自由を与えなかった要因は、DF陣の激しいマーキングに加え、無尽蔵にピッチを走り回った両ボランチの梅鉢貴秀と久保開立が、安東と大山の2人にボールが渡った瞬間に挟み込みを見せた点を見逃すことはできない。
 しかし、そのような戦術的な貢献度だけではなく、この両ボランチはまさに“くせ者”と呼ぶにふさわしい自らの持ち味を存分に発揮し、辛味の効いた絶妙のスパイスをチーム全体にもたらしている。

 梅鉢は「キックは左右の足どちらも変わりなく蹴ることができます。右利きですけど、シュートやボレーは左足の方が得意なんです」と自身の持つストロングポイントを語る。小学生時代にセンターバックやFWをこなした後、中学生になってからボランチのポジションに就いた。両足キックに定評のある梅鉢にとって、サイドチェンジや局面を変えるロングフィードを生かせる中盤の底は、文字通り天職と言っていいだろう。豊富な運動量を誇る関西大学第一が守から攻に切り替わった瞬間に一気に選手がスペースへと走り込み、正確なフィードを送り込んで対戦相手をグイグイと押し込めるのは、そんな梅鉢の特徴があればこそである。

 さらに梅鉢のプレーで最も注目すべき点は、両足のキックが得意であるゆえに左コーナーキックは右足で、右コーナーキックは左足で蹴ることだ。そんな選手、プロでもそう簡単にお目にかかれない。実際に藤枝明誠戦では、前半30分の先制ゴールが右コーナーキックで、後半22分の3点目は左コーナーキックから、それぞれ梅鉢の精度の高い左足と右足のキックから生まれている。「相手(藤枝明誠)のGKは反応が速いけど、ハイボールに難があると思った」。試合後にそう振り返り、「狙い通りのところに蹴れた」と話す梅鉢の言葉からも、藤枝明誠のウイークポイントを的確に突いたのが分かる。

 実は県予選5回戦まで、セットプレーはすべて利き足の右足で蹴っていたが、右コーナーキックを右足で蹴り、ボールの軌道がゴールから離れていくのを試合で見た彼の父親が「ゴールに近づいた方がええんちゃう?」とアドバイス。それを受けてからというもの、右コーナーキックを左で蹴るようになった。
 佐野監督は、先制点と3点目を「得意のセットプレーで得点できた」と回顧し、それを「狙い通りの展開でした」と付け加えた後、「梅鉢は左右とも良いボールを蹴ってくれる」と賛辞の言葉を述べた。

■もう1人のくせ者、ボランチの久保開


くせのある選手がハードワークすることで関西大学第一は初の国立にたどり着いた【写真は共同】
 そしてもう1枚のボランチ、久保開もまた相当のくせ者である。本人は「ドリブルで魅せたい」と語るように、従来のプレースタイルはドリブルをベースとし、中学時代まではイケイケのドリブラーだった。それが高校入学後、対戦相手の体格も大きくなり、局面での当たりも激しさを増したため、「ドリブルばかりではなくてワンタッチではたくプレーを心掛けるようになった」と自らの持つ発想を変化させ、自身のプレースタイルに幅を持たせるようになった。
 現在では中盤の底で舵取り役の仕事をこなしながら、関西大学第一でのハードな練習によって身に付けた豊富な運動量を生かして、少ないタッチでボールをさばいた後は相手のすきを突いてわずかに生じたスペースへ飛び込み、巧みなドリブルで相手の守備陣を翻弄(ほんろう)している。いわば「コンダクター」と「ドリブラ-」の二面性を局面ごとに使い分けているのである。

 それだけにあらず。梅鉢が左右の足でセットプレーを蹴り分けるのと同様、久保開にはロングスローという飛び道具がある。「ロングスローをやり始めたのはインターハイの前でした。練習の時にやるようになって、みんなで話し合って試合でもやってみようとなったんです」。発端はそんな単純なものだったらしいが、今では飛距離を伸ばすために背筋を鍛え上げる筋力トレーニングも行うようになった。「調子が良ければニアポストまで届きます」と話す飛距離については、藤枝明誠戦の2点目でニアポストを目掛けたスローイングで三浦陽平のゴールを演出したことで実証した。

 佐野監督は「うちにはスター選手はいないので」と評する。関西大学第一の選手たちにも「僕らはへただから、走らないと勝てない」と口にする者が多い。確かに彼らの豊富な運動量は藤枝明誠を圧倒し、複数人が一気に相手選手を囲い込む守備で相手の良さをかき消した。だが、単にハードワークだけのチームではない。対戦相手に「厄介」と感じさせるようなひとくせもふたくせもある選手たちが根底を支え、その上で走って走って走り抜くからこそ、成し得たベスト4進出なのではないだろうか。


<了>

梅鉢くんの記事をアップしておく。
高精度の両足は当時から注目の的であった。
ボランチの位置から、両足でパスが出れば、攻撃力は倍増する。
献身的な守備と相まって、チームの柱となる逸材であることがよくわかる。
高校時代によく走る培われた走力も期待できる。
そして、国立理系大学を目指すことも可能であった頭脳である。
梅鉢くんはサッカー選手に重要な3つのB、「ボディ・バランス」「ボール・コントロール」そして「ブレイン(頭脳)」を併せ持つ金の卵なのであろう。
岳くんと組むであろうダブル・ボランチは国内屈指となること間違いない。
身体を作り、監督の信頼を得、早くトップに上がってきて欲しい。

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (なつ)
2010-07-29 23:34:09
>梅鉢のプレーで最も注目すべき点は、両足のキックが得意であるゆえに左コーナーキックは右足で、右コーナーキックは左足で蹴ることだ。そんな選手、プロでもそう簡単にお目にかかれない。

ははぁ、梅鉢選手ってこの選手ですか。この記事覚えていますよ。
関西大学第一は鹿島高校と対戦したので、情報を追っていたんですよね。この人が来るんですね(^^)
W杯でスペインやドイツの中盤の守備力の高さ(カウンターに強い守備)を見てしまうと、やはり中盤は走力も大事だなと思うので、将来が楽しみな選手ですね。
返信する