【鹿島】二兎を追った指揮官のギャンブルは失敗。ACLのGS突破も逃すようだと…
五十嵐創(サッカーダイジェスト)
2015年05月03日
中央で起点を作れず、サイド攻撃も迫力がなかった。
ACLのグループステージ突破が懸かる5月5日のFCソウル戦を見据えて、トニーニョ・セレーゾ監督はターンオーバーを敢行したが、結果は裏目に出てしまった。(C) J.LEAGUE PHOTOS
トニーニョ・セレーゾ監督の思い切った采配は、空振りに終わった。連戦の疲労と、5月5日に行なわれるACLのFCソウル戦を見据えてターンオーバーを敢行したが、結果は0-1。甲府のルーキー伊東純也にJリーグ初ゴールを奪われ、最下位相手にホームで勝点を落とした。
敗因は複数挙げられる。崩しのアイデア不足。後半立ち上がりの集中力の欠如。交代カードの機能不全。すべてとは言わないが、そのいずれもがターンオーバーによる副作用と無関係ではないだろう。運動量の面で効果はあったかもしれないが、それ以上に攻守両面のコンビネーション不足が目立ち過ぎたのだ。
攻撃が機能しなかった点について、1トップの高崎寛之はこう述べる。
「メンバーが代わって上手くいかないところもあった。全体的にあまり良い内容ではなかったし、僕自身も上手くボールを引き出せなかった」
普段であれば、中央の高崎を囮に土居聖真がスペースへ進出して起点を作るところだが、この日は高崎とトップ下の中村充孝の距離感が悪く、なおかつ甲府に5-4-1に近い形でゴール前を固められて中央で起点を作れなかった。また、サイド攻撃も迫力がなく、右MFでリーグ戦初先発の杉本太郎も「最終ラインとボランチの間で前を向いて、そこからスルーパスやドリブルで運んでワンツーをイメージしていたが、もっとゴールに向かってアクションを起こせればよかった」と反省の言葉を口にしている。
高い位置で起点を作れない鹿島は、ペナルティエリアの外郭でパスを回すものの、素早くスライドする甲府の守備陣を崩し切れず。見かねたトニーニョ・セレーゾ監督は後半開始から小笠原満男を投入し、続いて60分に豊川雄太をピッチへ送り出すが、決定的に流れを変えるには至らなかった。結局、最後は山村和也を前線に上げるパワープレーに頼らざるを得なかったのである。
あるいは、トップ下に土居が入っていたら、右サイドに遠藤康や西大伍がいれば――。少なくとも、キープ力に長けた彼らを起点に、より変化のある攻撃が仕掛けられたはずだ。
FCソウル戦は、あらゆる意味で勝利が求められる。
最下位の甲府を相手にホームでまさかの完敗……。攻守両面における連係不足が最大の敗因だ。(C) J.LEAGUE PHOTOS
失点の場面を振り返ってみても、コンビネーション不全は指摘できる。
「失点は(鹿島の)ゴールキックからでしたが、ああいうところのリスクマネジメントをしっかりやらなければならないという反省が残ります」(山村)
高崎の落としがズレて甲府の阿部翔平にボールを拾われた時、最終ラインのポジショニングが極めて不安定で、阿部からの1本のパスでシュートまで持ち込まれている。この局面で右SBの伊東幸敏が中央に絞っていれば、あるいは裏に抜け出す選手の存在を山村にコーチングで伝えていれば、あそこまでフリーでシュートを打たれることはなかったはずだ。
“たられば”を言い出すと切りはないが、あえて強調しなければいけないほど、鹿島の連係不足は顕著だった。そして、それが敗戦を招いた最大の要因だったとも言えるだろう。
9節終了時で10位と中位をさまよい、なおかつバックアップと主力の実力差が表面化した。カンフル剤となるべき選手たちがチャンスを活かせなかった事実は、今後のリーグ戦の戦い方にも悪影響を及ぼしかねない。
また、選手の精神面にも不安は残る。ターンオーバーでACLとリーグ戦の二兎を追ったトニーニョ・セレーゾ監督のギャンブルは失敗した。これでもう一羽も逃すようだと、チームが受ける精神的ダメージは図りしれない。結果的に、リーグ戦を犠牲にした形で挑むACLのFCソウル戦は、勝点3がグループステージ突破の条件。あらゆる意味で、勝利が求められる。
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェスト編集部)
甲府戦の選手起用をギャンブルと記すサッカーダイジェストの五十嵐氏である。
確かにACL・FCソウル戦を踏まえ、大幅に選手を入れ替えた采配はギャンブルと捉えても良さそうである。
しかしながら、勝利が必須なFCソウル戦に照準を向けるのは良く理解出来る。
また、この過密日程に対して選手を入れ替えるのは、悪い采配ではない。
そんな中でも、替えの効かぬ存在である岳と創造性をカイオに期待して起用しておる。
サブメンバーと言えども、ユキや植田、青木はレギュラーポジションであった実績がある。
アツも経験は充分であろう。
杉本太郎こそギャンブルしたところであったが、ミドル2本は惜しかった。
太郎は、いずれチームの中核を成す選手と多くの民の目に映ったのではなかろうか。
とはいえ、この試合、無得点に終え敗戦したことは現実である。
これを悔やまぬ者はおらぬであろう。
知っての大きなミスも不甲斐ないが、攻撃にもう一手足りなかったことも悔しい。
ここを五十嵐氏は「えて強調しなければいけないほど、鹿島の連係不足は顕著だった」と述べる。
それはその可能性も高い。
ただ、あまりにも早い時間帯から山村を上げてパワープレイにはしったことなど、戦術的失敗もあった。
今後、このように守りを固める相手に対して、どのように対処するのかが重要となろう。
ここは個の力となることは必定。
どのような守備網も突破できる力を、サブメンバーを含めて、つけていく必要がある。
厳しい練習にて成長していくのだ。
その試金石であったと、この試合を捉えたい。
期待しておる。
五十嵐創(サッカーダイジェスト)
2015年05月03日
中央で起点を作れず、サイド攻撃も迫力がなかった。
ACLのグループステージ突破が懸かる5月5日のFCソウル戦を見据えて、トニーニョ・セレーゾ監督はターンオーバーを敢行したが、結果は裏目に出てしまった。(C) J.LEAGUE PHOTOS
トニーニョ・セレーゾ監督の思い切った采配は、空振りに終わった。連戦の疲労と、5月5日に行なわれるACLのFCソウル戦を見据えてターンオーバーを敢行したが、結果は0-1。甲府のルーキー伊東純也にJリーグ初ゴールを奪われ、最下位相手にホームで勝点を落とした。
敗因は複数挙げられる。崩しのアイデア不足。後半立ち上がりの集中力の欠如。交代カードの機能不全。すべてとは言わないが、そのいずれもがターンオーバーによる副作用と無関係ではないだろう。運動量の面で効果はあったかもしれないが、それ以上に攻守両面のコンビネーション不足が目立ち過ぎたのだ。
攻撃が機能しなかった点について、1トップの高崎寛之はこう述べる。
「メンバーが代わって上手くいかないところもあった。全体的にあまり良い内容ではなかったし、僕自身も上手くボールを引き出せなかった」
普段であれば、中央の高崎を囮に土居聖真がスペースへ進出して起点を作るところだが、この日は高崎とトップ下の中村充孝の距離感が悪く、なおかつ甲府に5-4-1に近い形でゴール前を固められて中央で起点を作れなかった。また、サイド攻撃も迫力がなく、右MFでリーグ戦初先発の杉本太郎も「最終ラインとボランチの間で前を向いて、そこからスルーパスやドリブルで運んでワンツーをイメージしていたが、もっとゴールに向かってアクションを起こせればよかった」と反省の言葉を口にしている。
高い位置で起点を作れない鹿島は、ペナルティエリアの外郭でパスを回すものの、素早くスライドする甲府の守備陣を崩し切れず。見かねたトニーニョ・セレーゾ監督は後半開始から小笠原満男を投入し、続いて60分に豊川雄太をピッチへ送り出すが、決定的に流れを変えるには至らなかった。結局、最後は山村和也を前線に上げるパワープレーに頼らざるを得なかったのである。
あるいは、トップ下に土居が入っていたら、右サイドに遠藤康や西大伍がいれば――。少なくとも、キープ力に長けた彼らを起点に、より変化のある攻撃が仕掛けられたはずだ。
FCソウル戦は、あらゆる意味で勝利が求められる。
最下位の甲府を相手にホームでまさかの完敗……。攻守両面における連係不足が最大の敗因だ。(C) J.LEAGUE PHOTOS
失点の場面を振り返ってみても、コンビネーション不全は指摘できる。
「失点は(鹿島の)ゴールキックからでしたが、ああいうところのリスクマネジメントをしっかりやらなければならないという反省が残ります」(山村)
高崎の落としがズレて甲府の阿部翔平にボールを拾われた時、最終ラインのポジショニングが極めて不安定で、阿部からの1本のパスでシュートまで持ち込まれている。この局面で右SBの伊東幸敏が中央に絞っていれば、あるいは裏に抜け出す選手の存在を山村にコーチングで伝えていれば、あそこまでフリーでシュートを打たれることはなかったはずだ。
“たられば”を言い出すと切りはないが、あえて強調しなければいけないほど、鹿島の連係不足は顕著だった。そして、それが敗戦を招いた最大の要因だったとも言えるだろう。
9節終了時で10位と中位をさまよい、なおかつバックアップと主力の実力差が表面化した。カンフル剤となるべき選手たちがチャンスを活かせなかった事実は、今後のリーグ戦の戦い方にも悪影響を及ぼしかねない。
また、選手の精神面にも不安は残る。ターンオーバーでACLとリーグ戦の二兎を追ったトニーニョ・セレーゾ監督のギャンブルは失敗した。これでもう一羽も逃すようだと、チームが受ける精神的ダメージは図りしれない。結果的に、リーグ戦を犠牲にした形で挑むACLのFCソウル戦は、勝点3がグループステージ突破の条件。あらゆる意味で、勝利が求められる。
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェスト編集部)
甲府戦の選手起用をギャンブルと記すサッカーダイジェストの五十嵐氏である。
確かにACL・FCソウル戦を踏まえ、大幅に選手を入れ替えた采配はギャンブルと捉えても良さそうである。
しかしながら、勝利が必須なFCソウル戦に照準を向けるのは良く理解出来る。
また、この過密日程に対して選手を入れ替えるのは、悪い采配ではない。
そんな中でも、替えの効かぬ存在である岳と創造性をカイオに期待して起用しておる。
サブメンバーと言えども、ユキや植田、青木はレギュラーポジションであった実績がある。
アツも経験は充分であろう。
杉本太郎こそギャンブルしたところであったが、ミドル2本は惜しかった。
太郎は、いずれチームの中核を成す選手と多くの民の目に映ったのではなかろうか。
とはいえ、この試合、無得点に終え敗戦したことは現実である。
これを悔やまぬ者はおらぬであろう。
知っての大きなミスも不甲斐ないが、攻撃にもう一手足りなかったことも悔しい。
ここを五十嵐氏は「えて強調しなければいけないほど、鹿島の連係不足は顕著だった」と述べる。
それはその可能性も高い。
ただ、あまりにも早い時間帯から山村を上げてパワープレイにはしったことなど、戦術的失敗もあった。
今後、このように守りを固める相手に対して、どのように対処するのかが重要となろう。
ここは個の力となることは必定。
どのような守備網も突破できる力を、サブメンバーを含めて、つけていく必要がある。
厳しい練習にて成長していくのだ。
その試金石であったと、この試合を捉えたい。
期待しておる。
ただ二兎を逃したら崩壊しかねないというのは浦和的なチームのことであって、ダメージが大きくても鹿島は必ず立ち直りますよ。
二兎を追うことに慣れている分、それがダメでもまた二兎を追うでしょう。
鹿島は意外としつこいんです。
昨日でなかった金崎、昌子、遠藤、大伍、ソッコらが駈けずり回ってくれるはず。