いばらきサッカーフェスティバル2012 水戸×鹿島@Ksスタ
February 25, 2012 10:50 PM
いよいよ来週にはJ1に1週間先駆けてJ2が開幕。2012年シーズンが到来する足音を確実に感じつつある中、全国各地でプレシーズンマッチが行われています。今日やってきたのは、ケーズデンキスタジアム水戸。ゲームは今回で8回目の開催となり、間違いなく認知度も上がりつつあるいばらきサッカーフェスティバルです。ただ、前日に1つ残念なニュースが。茨城の復興をモチベーションに昨シーズン途中から水戸でプレーしてきた鈴木隆行が、B型インフルエンザでこのゲームを欠場することに。鹿島在籍時にはタイトル獲得にも貢献しており、水戸加入後は初めてとなる古巣対決に周囲もかなり期待していましたが、その機会は天皇杯以降へおあずけとなりました。
さて、降りしきる雨によって「残念ながらピッチに水溜まりが多くできて、サッカーに適していないコンディション」(鹿島・ジョルジーニョ監督)の中でキックオフを迎えたゲーム。水戸はGKが本間幸司。最終ラインは右から新加入の市川大祐、同じく新加入のキム・ヨンギ、塩谷司、こちらも新加入の輪湖直樹。ドイスボランチが西岡謙太とロメロ・フランク。1トップに岡本達也が入り、その下には右から小澤司、新加入で10番を背負う橋本晃司、島田祐輝が並ぶ4-2-3-1でスタートします。
対する鹿島はGKが曽ヶ端準。DFは右から新井場徹、昌子源、中田浩二、ユースから昇格したルーキーの鈴木隆雅。中盤はアンカーに青木剛を置き、右に遠藤康、左に小笠原満男、頂点に本山雅志が並ぶダイヤモンド。2トップは興梠慎三と始動日に間に合うやる気を見せ、川崎関係者を驚かせたというジュニーニョ。「クラブにとっても僕にとっても光栄なことだが、代表に選手が5人取られていた」(ジョルジーニョ監督)中、昌子や鈴木隆雅のアピールが期待されます。
先にシュートを放ったのは水戸。2分、少し距離のある位置から橋本が右足で枠内へ飛ばしたミドルは曽ヶ端がキャッチしましたが、まずは挨拶代わりの一撃を見舞うと、5分にも相手の連携ミスでこぼれたボールを拾った小澤が右サイドをドリブルで運び、そのままフィニッシュ。立て続けにシュートシーンを創出します。
一方、8分に小笠原が蹴った右FKを中田が合わせたヘディングは枠のわずかに右へ外れ、先制とはいかなかった鹿島。「こういうグラウンドだと繋ぐのはなかなか難しい」と中田も話したように、繋ぐ意識は十分に見られるものの、たびたびピッチにパスワークを阻まれてしまい、ストレスの溜まる展開を強いられます。
それでも、18分には右サイドからチャンスメイク。新井場が縦に付けると、流れた興梠がマイナスのクロス。下がりながらになった遠藤のヘディングは本間がキャッチしましたが、1つ崩した形を見せると、19分には決定的なチャンス。左サイドから本山がスルーパスを通すと、綺麗に抜け出した興梠がシュート。ところがボールは左ポストを直撃。またも先制ゴールとはいきません。
この時間帯で目立っていたのは小笠原。昨年までのボランチとは守備のタスクも異なるため、比較的自由に動き回ってボールを引き出すことが多く、チームのボール回しにリズムを生み出します。また、ルーキーの鈴木隆雅も時折持ち味を発揮。開始早々の2分に難しい体勢から鋭いクロスを放り込むと、26分にも本山のパスからサイドをえぐってクロスまで持ち込むなど、積極的なオーバーラップを披露していました。
「前でボールがしっかり収まらず、なかなか押し上げられなかった」(柱谷哲二監督)水戸も、30分を過ぎると「最初は繋げるのに蹴っちゃってた。ビビってたのかな」という橋本とフランクを中心に、ボールが回り始めます。これで躍動したのは「チームの狙いはわかってきている」と話した市川。再三のオーバーラップに加え、一旦右サイドで基点になり、全体を落ち着かせる役割も兼務。37分にはその市川がフワリと浮かせた絶妙のフィードを放ち、岡本達也が落とすと、受けた小澤は倒れながらシュート。ゴールに至らなかったとはいえ、綺麗な流れからチャンスを創出。終盤は水戸が盛り返し、最初の45分間はスコアレスで推移しました。
後半は開始早々に曽ヶ端が負傷退場するアクシデントでスタートしましたが、主導権は変わらず鹿島。55分には小笠原の右CKから、最後は本山が鋭い枠内シュート。56分に鈴木隆雅と替わった梅鉢貴秀が右SBに入り、新井場が左SBへスライドする交替策を経て、2分後には小笠原がジュニーニョとのワンツーからわずかに枠の右へ外れるシュート。水戸ゴールを攻め立てます。
すると60分に意欲が結実。遠藤が蹴り込んだ右CKを中田が豪快にボレー。目の前で揺れたゴールネットに赤いサポーターは熱狂。「昔からの"鹿島さんらしい"ゴール」と敵将も認めた勝負所の集中力を見せ、鹿島がリードを奪いました。
塩谷のイージーミスを起点に献上した「昨日のトレーニングも緩かったので一喝した」(柱谷監督)セットプレーで失点を許した水戸。63分には橋本が右へ展開すると、市川のピンポイントクロスに小澤が頭で合わせるも枠の右へ。66分にもフランクの展開から小澤が右クロス。橋本は反転しながら枠へ飛ばすも、鹿島GK佐藤昭大がキャッチ。65分に岡本達也と替えた村田翔をボランチに配し、フランクと橋本を1列ずつ上げると「ボールが回るようになって」(柱谷監督)手数は繰り出すも、ゴールまでの"あと少し"が届きません。
対する鹿島は68分にジュニーニョと本山を下げて、土居聖真と新加入の岡本英也を投入。以降、キレ味を見せたのはユース出身でトップ昇格2年目の土居。74分に右サイドからドリブルでエリア内へ侵入すると、興梠を囮に自ら強烈なシュートを本間へお見舞い。2分後にも新井場のパスを受けると、巧みなターンからフィニッシュまで。今シーズンのベースになりそうな中盤ダイヤモンドでは攻撃的な選手の起用増加が予想され、出場機会も与えられるであろう19歳がしっかりアピールしてみせます。
その後、鹿島は77分に小笠原とルーキーの伊東幸敏、81分に興梠と湘南から復帰した佐々木竜太をそれぞれ交替。伊東は右SBに入り、中盤は青木と梅鉢が中央に位置し、右に遠藤、左に土居が張り出すボックスに変化。また、2トップは岡本と佐々木に。水戸も78分に小澤とルーキーの鈴木雄斗、81分に島田と吉原宏太が入れ替わり、配置もチェンジ。最前線にフランクが入り、右から鈴木雄斗、吉原、橋本の3枚を村田と西岡の前に置く布陣で、最後の10分間に挑みます。
88分には水戸が右サイドからチャンス。市川の縦パスに吉原がクロスを上げ切り、ニアへ飛び込んだ橋本はわずかに届きませんでしたが、沸き上がる青いサポーター。90分のチャンスも水戸。エリア左でDFのクリアミスを拾った吉原が中へ。フランクの反転シュートは何とか青木がブロックしたものの、スタジアムに充満する同点への期待感。
そして水戸にこのゲーム最大の決定機が訪れたのは93分。西岡のクサビを丁寧に捌いたフランクが、ハーフウェーライン付近から極上のスルーパス。独走する橋本。立ちはだかる佐藤。場内が固唾を飲んで見守った1対1の帰結は、赤の歓喜と青の落胆。鹿島が8年連続となる茨城王者の称号を手にする結果となりました。
鹿島はこれがプレシーズン2試合目の対外試合。前述したように代表招集で5人の主力を欠きながら、スタメンに6人のフル代表経験者が顔を揃え、層の厚さを感じさせます。「7割8割くらいは意志の統一ができている」とジョルジーニョ監督。新しい指揮官の下、鈴木隆雅や昌子、梅鉢、土居といった若手のアピールも含めて、ある程度は順調な仕上がり具合と言ってよさそうな印象を受けました。
水戸はやはり「今年初めての90分のチャレンジで、試運転は合格だったかな」と柱谷監督が話し、「ボールが出てくる匂いを嗅ぎ分ける、一流の感覚がある」と守護神の本間も言及した市川の躍動が最大の収穫だと思います。本人も「こういう悪いコンディションの中でも、90分やれたことは大きなステップ」と一定の手応えを掴んだ様子。
また、塩谷以外は全員が新加入選手だった最終ラインも「守備の所は、ある程度押されながらもしっかりやれるんだなと感じた」と柱谷監督。ここに加えて鈴木隆行、あるいは現在離脱中の三島康平が前線の核として稼働すれば、J2を掻き回す存在になり得る期待を感じさせるような90分間だったのではないでしょうか。気温4.7度と、とにかく寒い中での茨城決戦でしたが、個人的にも収穫の多い一戦でした。 土屋
J SPORTSの土屋氏の記事である。
若干水戸寄りではあるが、細かい視点で試合を解説しておる。
特に聖真のキレを表現してくれておるのは嬉しい。
昨季終盤からオリヴェイラ監督の信頼を勝ち得た若者は、今季も好調を維持し、より多くの出場機会を得るのではなかろうか。
楽しみである。
February 25, 2012 10:50 PM
いよいよ来週にはJ1に1週間先駆けてJ2が開幕。2012年シーズンが到来する足音を確実に感じつつある中、全国各地でプレシーズンマッチが行われています。今日やってきたのは、ケーズデンキスタジアム水戸。ゲームは今回で8回目の開催となり、間違いなく認知度も上がりつつあるいばらきサッカーフェスティバルです。ただ、前日に1つ残念なニュースが。茨城の復興をモチベーションに昨シーズン途中から水戸でプレーしてきた鈴木隆行が、B型インフルエンザでこのゲームを欠場することに。鹿島在籍時にはタイトル獲得にも貢献しており、水戸加入後は初めてとなる古巣対決に周囲もかなり期待していましたが、その機会は天皇杯以降へおあずけとなりました。
さて、降りしきる雨によって「残念ながらピッチに水溜まりが多くできて、サッカーに適していないコンディション」(鹿島・ジョルジーニョ監督)の中でキックオフを迎えたゲーム。水戸はGKが本間幸司。最終ラインは右から新加入の市川大祐、同じく新加入のキム・ヨンギ、塩谷司、こちらも新加入の輪湖直樹。ドイスボランチが西岡謙太とロメロ・フランク。1トップに岡本達也が入り、その下には右から小澤司、新加入で10番を背負う橋本晃司、島田祐輝が並ぶ4-2-3-1でスタートします。
対する鹿島はGKが曽ヶ端準。DFは右から新井場徹、昌子源、中田浩二、ユースから昇格したルーキーの鈴木隆雅。中盤はアンカーに青木剛を置き、右に遠藤康、左に小笠原満男、頂点に本山雅志が並ぶダイヤモンド。2トップは興梠慎三と始動日に間に合うやる気を見せ、川崎関係者を驚かせたというジュニーニョ。「クラブにとっても僕にとっても光栄なことだが、代表に選手が5人取られていた」(ジョルジーニョ監督)中、昌子や鈴木隆雅のアピールが期待されます。
先にシュートを放ったのは水戸。2分、少し距離のある位置から橋本が右足で枠内へ飛ばしたミドルは曽ヶ端がキャッチしましたが、まずは挨拶代わりの一撃を見舞うと、5分にも相手の連携ミスでこぼれたボールを拾った小澤が右サイドをドリブルで運び、そのままフィニッシュ。立て続けにシュートシーンを創出します。
一方、8分に小笠原が蹴った右FKを中田が合わせたヘディングは枠のわずかに右へ外れ、先制とはいかなかった鹿島。「こういうグラウンドだと繋ぐのはなかなか難しい」と中田も話したように、繋ぐ意識は十分に見られるものの、たびたびピッチにパスワークを阻まれてしまい、ストレスの溜まる展開を強いられます。
それでも、18分には右サイドからチャンスメイク。新井場が縦に付けると、流れた興梠がマイナスのクロス。下がりながらになった遠藤のヘディングは本間がキャッチしましたが、1つ崩した形を見せると、19分には決定的なチャンス。左サイドから本山がスルーパスを通すと、綺麗に抜け出した興梠がシュート。ところがボールは左ポストを直撃。またも先制ゴールとはいきません。
この時間帯で目立っていたのは小笠原。昨年までのボランチとは守備のタスクも異なるため、比較的自由に動き回ってボールを引き出すことが多く、チームのボール回しにリズムを生み出します。また、ルーキーの鈴木隆雅も時折持ち味を発揮。開始早々の2分に難しい体勢から鋭いクロスを放り込むと、26分にも本山のパスからサイドをえぐってクロスまで持ち込むなど、積極的なオーバーラップを披露していました。
「前でボールがしっかり収まらず、なかなか押し上げられなかった」(柱谷哲二監督)水戸も、30分を過ぎると「最初は繋げるのに蹴っちゃってた。ビビってたのかな」という橋本とフランクを中心に、ボールが回り始めます。これで躍動したのは「チームの狙いはわかってきている」と話した市川。再三のオーバーラップに加え、一旦右サイドで基点になり、全体を落ち着かせる役割も兼務。37分にはその市川がフワリと浮かせた絶妙のフィードを放ち、岡本達也が落とすと、受けた小澤は倒れながらシュート。ゴールに至らなかったとはいえ、綺麗な流れからチャンスを創出。終盤は水戸が盛り返し、最初の45分間はスコアレスで推移しました。
後半は開始早々に曽ヶ端が負傷退場するアクシデントでスタートしましたが、主導権は変わらず鹿島。55分には小笠原の右CKから、最後は本山が鋭い枠内シュート。56分に鈴木隆雅と替わった梅鉢貴秀が右SBに入り、新井場が左SBへスライドする交替策を経て、2分後には小笠原がジュニーニョとのワンツーからわずかに枠の右へ外れるシュート。水戸ゴールを攻め立てます。
すると60分に意欲が結実。遠藤が蹴り込んだ右CKを中田が豪快にボレー。目の前で揺れたゴールネットに赤いサポーターは熱狂。「昔からの"鹿島さんらしい"ゴール」と敵将も認めた勝負所の集中力を見せ、鹿島がリードを奪いました。
塩谷のイージーミスを起点に献上した「昨日のトレーニングも緩かったので一喝した」(柱谷監督)セットプレーで失点を許した水戸。63分には橋本が右へ展開すると、市川のピンポイントクロスに小澤が頭で合わせるも枠の右へ。66分にもフランクの展開から小澤が右クロス。橋本は反転しながら枠へ飛ばすも、鹿島GK佐藤昭大がキャッチ。65分に岡本達也と替えた村田翔をボランチに配し、フランクと橋本を1列ずつ上げると「ボールが回るようになって」(柱谷監督)手数は繰り出すも、ゴールまでの"あと少し"が届きません。
対する鹿島は68分にジュニーニョと本山を下げて、土居聖真と新加入の岡本英也を投入。以降、キレ味を見せたのはユース出身でトップ昇格2年目の土居。74分に右サイドからドリブルでエリア内へ侵入すると、興梠を囮に自ら強烈なシュートを本間へお見舞い。2分後にも新井場のパスを受けると、巧みなターンからフィニッシュまで。今シーズンのベースになりそうな中盤ダイヤモンドでは攻撃的な選手の起用増加が予想され、出場機会も与えられるであろう19歳がしっかりアピールしてみせます。
その後、鹿島は77分に小笠原とルーキーの伊東幸敏、81分に興梠と湘南から復帰した佐々木竜太をそれぞれ交替。伊東は右SBに入り、中盤は青木と梅鉢が中央に位置し、右に遠藤、左に土居が張り出すボックスに変化。また、2トップは岡本と佐々木に。水戸も78分に小澤とルーキーの鈴木雄斗、81分に島田と吉原宏太が入れ替わり、配置もチェンジ。最前線にフランクが入り、右から鈴木雄斗、吉原、橋本の3枚を村田と西岡の前に置く布陣で、最後の10分間に挑みます。
88分には水戸が右サイドからチャンス。市川の縦パスに吉原がクロスを上げ切り、ニアへ飛び込んだ橋本はわずかに届きませんでしたが、沸き上がる青いサポーター。90分のチャンスも水戸。エリア左でDFのクリアミスを拾った吉原が中へ。フランクの反転シュートは何とか青木がブロックしたものの、スタジアムに充満する同点への期待感。
そして水戸にこのゲーム最大の決定機が訪れたのは93分。西岡のクサビを丁寧に捌いたフランクが、ハーフウェーライン付近から極上のスルーパス。独走する橋本。立ちはだかる佐藤。場内が固唾を飲んで見守った1対1の帰結は、赤の歓喜と青の落胆。鹿島が8年連続となる茨城王者の称号を手にする結果となりました。
鹿島はこれがプレシーズン2試合目の対外試合。前述したように代表招集で5人の主力を欠きながら、スタメンに6人のフル代表経験者が顔を揃え、層の厚さを感じさせます。「7割8割くらいは意志の統一ができている」とジョルジーニョ監督。新しい指揮官の下、鈴木隆雅や昌子、梅鉢、土居といった若手のアピールも含めて、ある程度は順調な仕上がり具合と言ってよさそうな印象を受けました。
水戸はやはり「今年初めての90分のチャレンジで、試運転は合格だったかな」と柱谷監督が話し、「ボールが出てくる匂いを嗅ぎ分ける、一流の感覚がある」と守護神の本間も言及した市川の躍動が最大の収穫だと思います。本人も「こういう悪いコンディションの中でも、90分やれたことは大きなステップ」と一定の手応えを掴んだ様子。
また、塩谷以外は全員が新加入選手だった最終ラインも「守備の所は、ある程度押されながらもしっかりやれるんだなと感じた」と柱谷監督。ここに加えて鈴木隆行、あるいは現在離脱中の三島康平が前線の核として稼働すれば、J2を掻き回す存在になり得る期待を感じさせるような90分間だったのではないでしょうか。気温4.7度と、とにかく寒い中での茨城決戦でしたが、個人的にも収穫の多い一戦でした。 土屋
J SPORTSの土屋氏の記事である。
若干水戸寄りではあるが、細かい視点で試合を解説しておる。
特に聖真のキレを表現してくれておるのは嬉しい。
昨季終盤からオリヴェイラ監督の信頼を勝ち得た若者は、今季も好調を維持し、より多くの出場機会を得るのではなかろうか。
楽しみである。