年越しそばに滲む人生

2014年05月29日 21時26分51秒 | コメディのかけら

東京で働くその人は、
大晦日になると必ず実家の関西に帰った。

老いた両親のために年越しそばを作るためである。
そば打ちが趣味だったのだ。

仕事がら年末は忙しく、大晦日に帰るのは大変だったが、
それでも両親のためだと思い、この数年、なんとか無理して帰っていた。

昨年もなんとか実家に戻り、年越しそばを作った。

「どう?」

年越しそばを食べる父親に尋ねると、

「・・・マズい」

え。

「前から言おう言おうと思っていたんやけどな、
 お前のそば、マズいねん!」

なぜ、このタイミングで言う?

ぞうやら両親は、ずっとマズいと思いながらも、我が子が作ってくれるからと、我慢して食べていたようだ。

まるで、O・ヘンリーのような話である。