会計スキル・USCPA

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今年は厳しかも  ウォール街流景気予測の方法

2012-01-11 00:28:19 | マクロ経済
昨日は、Dent氏の人口論をベースにした悲観論をご紹介したわけですが、このブログでは、もう一人、経済予測の達人を取り上げていたんでした。

今年の失業率回復を予測する

米国経済どっち向き?

本書なんですが、

ウォール街流 米国景気予測の方法 - 元ゴールドマン・サックス人気アナリストが明かす実践的手法
クリエーター情報なし
エナジクス


つまり、米国の景気予測は、消費者支出を起点としてみるべし、という主張です。
失業率を取り上げて景気が悪いだとかいうエコノミストがいるが、失業率は遅行指標であって、失業率が最悪になっている時には、既に経済は回復を見せていることが多い、みたいなことが書かれています。

注目すべきは、消費支出なんですな。

HS DENTは、人口変動に注目し、ベビーブーマーの高齢化に伴う支出変動をとらえて経済予測をしているわけですが、視点は長期です。

多数派のベビーブーマーの加齢に応じた支出動向が、企業収益を、ひいては株価動向を決めるのだ、というわけですが、

本書は、ここのところ、消費支出が株価を決めてゆく、という点を数字で検証してゆきます。

消費支出が景気を先導する。

DENTが長期的な動態を説明しているとするならば、本書は短期の見方を説明していて、丁度良い具合に相補的な関係になっています。

では、本書の分析手法で、足元をみてみるとどうなるか。

本書の読者のために著者がグラフを更新して現況を解説しているサイトがあるんですが、


Figure 8-4: Bear markets begin when growth in real consumer spending (PCE) peaks and begins to slow

Current Comment: Slowing real-wage growth, detailed in Figure 10-4, indicates that Y/Y growth in real consumer spending will deteriorate over the next 1-2 years. This suggests that corporate-profit (S&P 500) earnings growth will also suffer, and raises a strong possibility that the stock market may be headed for another decline.

実質賃金の低下が実質消費支出をこの1年から2年は悪化させてしまうだろう。このことは、企業収益に影響を与え、さらに株価が下落する可能性を強く示唆している。

ああ。本書の著者も、株価下落を予想しているんですな。まあ書かれたのは去年の10月みたいですがね。

このリンク先のグラフをみれば、実質消費支出と、S&Pの変動がほぼ同時に同方向に動いていることが分かりますね。常に先導するとは限らず、若干遅れているタイミングの時もありますが、方向性は一致している。そして、ここのところ、落ち込み方向なのがわかりますね。

株価は、短期的には、ユーロ圏への不安だっり、変動について後付でいろいろ理由をつけられるわけですが、本書は、基本的に消費支出を見ていれば間違いないという立場なわけで、グラフを見りゃ、確かにそうなんですな。

で、この消費支出を先導する指標は何なのか。

それが、実質賃金なんですな。

Figure 10-7: Real hourly earnings: Best leading indicator of real consumer spending (PCE)

このリンク先のグラフを見れば、実質時給の動きは明らかに実質支出に先行して動いていますね。
ということは、実質時給の変動を追いかければ企業収益や株価の動きを予想することができる、ということになりますが、

著者のコメントは、

Current Comment: The recent downtrend in Y/Y real-hourly-earnings comparisons does not bode well for the consumer spending outlook. This, in turn, is a warning sign that we may be facing a renewed slowdown in the economy in general and in corporate profits, with commensurate difficulties for the stock market.


実質時給の足元の下落は、消費支出の見通しにとって良い兆候とは言えない。つまり、これは我々が経済全般や企業収益が新たにスローダウンするという警告であって、それに応じて株価も厳しくなるかも、ということなのだ。

というわけで、著者も悲観的ですな。

これらの下向きグラフの背景には、DENTの主張するように、ベビーブーマーの支出減があるってことなのかも知れませんが、いずれにせよ、達人両名が、今年の悪化を予想している、

ということです。



ウーン、オバマ再選説は、厳しいですかね。