yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

近況報告  魔の霜月前半終了の条

2006-11-13 09:42:12 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
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 今月は全ての「休み」の日が日程で詰まっている魔の月間です。
 11月3日からの連休は条里制・古代都市研究会での鈴鹿関案内、正倉院展への学生案内等で塞がりました。
 そして今週の11日・12日は久留倍遺跡関連で壬申の乱ウオーク及び久留倍遺跡の整備と活用を市民と考える会でした。
 来週は予定していた歴博の会議がなくなったので、自由だ!と思っていたら、学生を連れて斎宮・宝塚古墳見学と三大学合同研究会に出席することになりました。
 そして23日から来月初めまでが中国社会科学院の陳先生の御案内です。もちろん12月は師走ですから、当然全ての「休み」にぎっしりと予定が入っています。木簡学会のように研究会に行けるのなら何の問題もないのですが、「行事」は大変です。アー・・・・

 そんなわけで昨日は久留倍遺跡を考える会の方々に招かれて、久留倍遺跡の今後について意見を述べて参りました。40人ほどの熱心な方々がお集まりになり、NHKのY記者も一人でヴィデオを持ち込んで取材してくれました。
 「考える会」の方によると、市は一向に整備の計画について市民に説明をしようとも意見を直接聞こうともしないということです。そこで整備委員会の私(委員の一人)に頼むんだということでした。だからといって委員会には他の先生方もいらっしゃるわけで私の個人的な情報や考えを委員会のものとして市民に伝えるわけにもいかず、あくまで私個人の考えですと断って、述べてきました。

 なにせ、まだ調査も十分に行われていないことは前回述べました。調査が正確に行われ、「成果」がきちんと出されて初めて整備案はできるのです。にもかかわらず市が整備を急いでいるとすると、何か裏にあるのかな?と勘ぐりたくなります。実に不思議なことです。
 遺跡は整備して終わりではありません。そのことはこの間いろいろな国の遺跡の現状を見る中で明らかになったと思われます。一番大事なのは子供の頃から文化を大切にする気持ちを養うことです。歴史のいい面も悪い面もきちんと教え、故郷が現在に至ったの経緯をきちんと学ぶことから、歴史遺産を大事にしようとする心が芽生えるのだと思うのです。幸いなことに久留倍の地元には既にそうした気持ちを抱かれ、自分たちの手で大事な故郷を大切にしようと考えられる市民の方々がたくさんいらっしゃいます。子供の教育から始めるのは大変ですが、既にそんな気持ちを抱いていらっしゃる方々がたくさんいらっしゃるのです。これは本当に貴重なことです。

 そんな地元の方々がいらっしゃったから久留倍遺跡は史蹟として残ったのです。その地元の方々の意見も聞かないで、形式的に意見を募集するだけで済ませようというのはいかがなものでしょうか。市は市民とこそ向き合って、基本方針を真剣に検討なさるべきではないでしょうか。

 お役人さんは定年になったり、異動すれば久留倍遺跡と向き合うことはもうありません。しかし地元の方々はイヤでも向き合い続けなければなりません。「考える会」の方々は全くのボランテアで市民に情報を提供しておられます。子々孫々まで語り継ぐにはどうすればいいのかを真剣に考えて下さっています。

 今回遺跡の上を高架でバイパスが通るというのでGISを用いて高架を「造り」シュミレーションしてみました(もちろん私が作ったのではなくR大学のKT先生の手になるものです)。高さも構造も教えてもらえないのであくまで推定のシュミレーションです。高架ができたらどんなイメージになるかを説明しました。何度も申しているように、景観は台無しです。しかしトンネルにするには30億円以上のお金がかかるということです。これはまた大変なことです。もし市が単独でこれを負担するとすると30万人の市民が10000円ずつ負担することになります。しかし、その負担も国との交渉次第です。これ以上いやな協議に手を取られたくないと思えば、この「噂」を流して、市民を諦めさせればいいのです。本当に遺跡と道路の調和を最優先に考えれば、まだまだ検討すべき材料はたくさんあります。財政難を最大の問題として逃げようとするのが今日の行政の悪い傾向です。「財政難」の錦の御旗を掲げれば、市民は諦めると考えている節があります。

 ところで、報告終了後の質疑の中で、市民の方から意外なことを伺いました。同じ北勢バイパス工事の中で、計画ルート上にあるゴルフ場はトンネルで通過するのだそうです。
 「エエッツ?!」
 「遺跡よりゴルフ場の方が大事なの?」
驚きました。
 ゴルフ場は三重県に山ほどあります。遺跡と同じように美しい??芝生で整えられています(将来きっと久留倍遺跡にも芝生が張られると思いますので見た目は同じです)。ゴルフ場を「保護」するためにトンネル化し、国史跡を守るためには高架にする。本末転倒ではありませんかね。

 もちろん、ゴルフ場は私有財産ですから地主さんとの交渉が必要です。売らない!と仰ればどうしようもありません。地下を通るにしても承諾が必要でしょう。高架ではゴルフの球が当たるかも知れませんからそれもままならないのかもしれません。考えたあげくが「トンネル」だったと想像します。なら、どうして国が決めた史蹟は考えないのでしょうか?
 不思議な国ですね。

 報告では、原点に立ち返って、世界に誇れる史蹟とするにはどうすればベストなのかを世界中の事例から考えてもらうことにしました。
 ソウルでは景福宮の堀を利用して設けられていた高速道路を撤去した例、日本では、最近話題の日本橋の景観、そしてイギリスのロンドンウオールの実態、文化財保護後進国?のベトナムの文化財活用事例等々。いい見本をモデルに整備・活用することこそ大事なのではないかとお話ししました。

 本当はこうした会を市が主催し、いつものやらせではなく本当に真剣な議論の場を提供してこそ遺跡は活きると思うのです。仮にその議論の末に、高架で遺跡を残すという結論になったとしても、市民がその条件を納得さえすれば、制約された条件下でいかに遺跡を活用するか考えて下さると思うのです。ペンペン草が生えない、市民に本当に親しまれる遺跡のために、今一度立ち止まって、みんなで考えてみようではありませんかと、申し上げてお話しを終えました。

 会が終わったとき、作家の永井路子さんからお電話をいただきました。今、和島誠一賞受賞に関係して、文章を書いているのだが・・・、ということから始まり、いろいろな最新の話題をお話ししました。その中で、彼女の母校である東京女子大学の寮の保存問題に携わっていると伺いました。何でも東女の寮は創設者新渡戸稲造が将来を担う女子が使用する大事な空間だからということで、個室になっているそうです。戦前ではなかった発想です。もちろんデザインも建築史的に大変重要な意味があるのだそうです。7000人の署名を集めて事務局に届けたが極めて冷淡な扱いだったそうです。あなたの苦労がよく分かるわ、と仰っていました(笑い)。

 あまりに目先の経済効果ばかりを追い求めて未来への展望がない今日の社会的雰囲気に何とか棹させないものか、しばし電話の向こうとこちらで思い悩んだ瞬間でした。東女寮問題についても全国の皆さんの関心を呼び起こしたいものです。是非トラックバックして下さい。

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