ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「毒薬と老嬢」

2021-08-15 12:40:57 | 芝居
7月19日亀戸文化センター カメリアホールで、ジョセフ・ケッセルリング作「毒薬と老嬢」を見た(劇団 NLT 公演、演出:賀原夏子/グレッグ・デール)。
1941年ブロードウェイ初演の作品。スリラーコメディの最高傑作とのこと。
時は第二次世界大戦の火蓋が切って落とされた頃。ニューヨークの閑静な住宅街にアビィとマーサ、二人の老姉妹がちょっと頭のおかしい甥のテディと同居していた。
二人は町では評判の慈善家で、屋敷を訪ねてくる身寄りのない寂しいお年寄りに、手作りの美味しい「ボケ酒」をもてなしていた。テディの弟で近々結婚することに
なっている新聞記者のモーティマーも、この叔母達を愛している。しかし、応接間のチェストの中で彼は見てはならない叔母達の秘密を見つけてしまう・・・。
そこに、殺人罪で逃走中のもう一人の甥ジョナサンが相棒と久しぶりに帰って来た。しかも彼は、殺した男の死体と共に帰ってきたのだ。
ハラハラ、ドキドキ、スリルたっぷりのストーリー。果たしてこのおばあちゃま二人の秘密とは・・・?(チラシより)

舞台は老姉妹の邸宅の居間。二人の亡き父は医者で、二階にはベッドが10台もある病室があり、ヒ素、キニーネ、青酸カリなどの毒薬の置いてある父の部屋が
そのままになっている。この広いお屋敷には地下室もあるという。観客は、この辺で、早くも彼女らの秘密に気がつくことになる。
彼女らは、身寄りのないお年寄りに毒を盛り、地下室に埋め、二人で喪服を着て賛美歌を歌って葬式をしてきた。たまたま死体を発見したモーティマーに問い詰められても
「これは慈善なの!」と自信たっぷりなのが、相当イカレてる。慌てふためくモーティマー、そこにもう一人の残忍なお尋ね者の甥は来るは、警官たちは来るは、で
屋敷は大騒ぎ。ところが警官たちの中に一人、自称劇作家の男がいて、モーティマーが劇評を書いていると知って大喜び。ぜひ聞いて欲しい、と自分の書いた芝居の
内容をのんびりと語り出す・・・。

役者はみな達者なもの。特にアビィ役の木村有里がうまい。甘い声も独特で、小柄で(一見)可愛いおばあちゃんというこの役にぴったり。
モーティマー役の小泉駿也も声に張りがあり、好演。
警官Aが自作の芝居の筋を延々と語るシーンが長過ぎる。
ただ、彼が自慢げに言うには、彼の母は女優で、「マクベス」に魔女役で出演中、産気づき、第2幕の間に楽屋で彼を産み落としたが、カーテンコールには
ちゃんと出て来た、という。こういう小ネタは面白い。魔女は2幕には登場しないので。

初演の年1941年と言えば、太平洋戦争勃発直前。確かにこの芝居からも、暗く、きな臭い世相が感じられる。こういう芝居は、平和な時代だったら
とても観客に受け入れられないだろう。当時の米国の人々は、これを見ながら大笑いしたのだろうか。
役者たちもうまく、ストーリーも面白いが、やはり、何しろ設定がブラックなので、いまいち心の底から笑えないのが残念だ。
それと、全体に長過ぎてダレるのも残念。ゆったりしたテンポも時代を感じさせる。今後上演する際は、かなりカットした方がいいのではないだろうか。



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