ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

シーラッハ作「罪悪」

2014-02-08 11:00:42 | 芝居
12月25日東京芸術劇場シアターウエストで、シーラッハ作「罪悪」をみた(演出:森新太郎)。

橋爪功による朗読劇。「犯罪」「罪悪」という2つの短編集から3つずつを選んで上演。この日は「罪悪」からの3篇が
上演された。

1 ふるさと祭り…暑い夏の日、小さな町のお祭で地元のブラスバンドが演奏していた。バンドの団員たちはきちんとした仕事に
         ついているごく普通の男たちだった。バイトの女学生がビールを運んでいた。白いTシャツにノーブラだった…。
    魔がさすということか。忌まわしい事件の犯人が分からないことへの苛立ちを、皆が感じている。
     
2 イルミナティ…寄宿学校に入れられたヘンリーは全く目立たない少年だったが、彼に絵の才能があることを女性教師が発見し、
         彼の日々は突然開けてくる。ところが或る日、一人の少年に弱みを握られてしまい…。
    ぞっとするような話だが、10代の少年たちが極端な思想に簡単に染まって暴走というのはあるかも。すごい迫力だ。  
 
3 雪     …老人は逮捕された。ハッサンという男に部屋の鍵を貸したのが発端だった。ハッサンと仲間たちはその部屋で
         麻薬を作って密売した。老人は黙秘を続けるつもりだった。彼にはもはや何も失うものはなかったから。ある日、
         ヤナという見知らぬ女性が面会に来た。ポーランド訛りの彼女はハッサンの子を宿していた…。
    この順番にして正解だった。「雪」の温かい余韻が聴衆を包み込み、救ってくれた。

家にシーラッハの原書(ドイツ語)があったので、見る前に読んでみたら、何と辞書無しで最後まで(我慢して)目を通すことが
できた。評者にとって、生まれて初めて辞書無しで目を通せた外国語の本となった。どんな平易な英語の本でも、今まで辞書を使わ
ずにはいられなかった者としては画期的なことであり、一つの事件であり、人間て変われるんだ~としみじみ思ったことだった(もち
ろん知らない語はいっぱい出てきたが、その都度我慢して先に進むと、全体の筋が結構分かったということ)。

こういう意味でも橋爪功さんには感謝感謝です。
作者はナチスの指導者の孫という出自から、暗い作品ばかりなのは仕方ないのだろうが、才能豊かなのは確かだ。
年末の定番にしたいという目論見がおありらしい。今回「犯罪」の方をみていないので、次回はぜひみせてもらうつもり。


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