先日テレビで、‘09年10月上演の無名塾公演「マクベス」を観た。
「上演台本:隆巴」とのこと。訳は小田島訳を使っているが、自由にカットしたり付け加えたりしている。
チェロの生演奏付き。
舞台奥の扉が開けられると、その奥に呼び物の広々とした野原と森が見え、客席からは拍手が。確かにこれは見ものだ。
マクベスは仲代達矢。ひょっとして史上最高齢のマクベスではないだろうか。ギネスブック級。どう見てもダンカン王、いや一番近いのはリヤ王だ。初めて登場した時から疲れたような、どこか呆然とした様子で、とても勇猛果敢な武将には見えない。残念ながら口元も覚束無く、セリフも早口ではしゃべれない。こんなマクベスは初めてだ。
池辺晋一郎の勇ましい音楽が、武人たちのシーンで流れる。
それはいいが、マクベスの独白の時、同時にチェロが弾かれるのはどうか。曲は美しいしセンスもいいが、いちいち重く、情緒的過ぎて、押し付けがましい。急流を一気に下っていくような、この芝居のスピード感が損なわれる。
マクベス夫人役は若村麻由美。メイクでだいぶ印象が違う。途中まではうまいと思ったが・・・。
衣裳では、夫人の青いドレスが美しい。ダンカン王暗殺直後、武人たちは白くて長い寝巻き姿で集まってくる。侍女たちの服装の色の取り合わせがいい。
ダンカン王殺害後、二人は血まみれの手を高く上げて抱き合うので、見ているほうは血が服につかないかとハラハラしてしまう。ちょっとでも血がついたら間違いなく怪しまれ、計画はオジャンなのだから。ここで無理して抱き合うことはないのに。
バンクォー殺しの場は様式化されている。フリーアンスはすぐに逃げずにしばらくじっとしているし、バンクォーは歌舞伎っぽい発声と所作。不自然だ。
王の宴会の場。照明が時々消え、その間にバンクォーの亡霊が出入りする。
「おれたちはまだ青いな」でなく「おれは・・」とマクベスは言う。しかもこのセリフで暗転してしまうのはどういう訳か。
マクダフ夫人は夫がイングランドへ行った、と聞き、「イングランドへ?」と驚く。どうしてわざわざ不自然にセリフを変える必要があるのか。たぶん分かり易くしたつもりなのだろう。子供は二人いて、セリフも分け合う。三人いっぺんに殺される。
イングランドで王子マルコムは、何と女と戯れている!その後の「実はまだ女を知らない」というセリフもカット。この辺いいとこなのに他のセリフもだいぶカットされている。なぜ高潔な王子を貶める?これはもはやシェイクスピアではない。「翻案」と言ってほしい。隆巴、一体何を考えていたのか。
マクベス夫人狂乱の場。不自然な発声と仕草、動きが多い。ここで重要なことは、彼女が罪の意識に脅えているということなのに、それが伝わってこない。ただ美しく踊るように演じるばかりで精神性のかけらもない。
医者はもっと恐ろしそうに話すべきだ。しみじみと笑いながら言ってどうする。どうもこの医者、事の重大さに気づいていないようだ。
主役はなかなか死なない。階段をどんどん登って、またどんどん降りて、しまいにこちら向きに座ったところをマクダフが後ろから刺し殺す。それはないだろう。彼はそんな卑怯な奴ではない。戦場でマクベスの後ろ姿を見つけた時、彼は「こっちを向け!」と言ったではないか。
それに死ぬのにこんなに時間をかけるくらいなら、セリフのカットをもっと減らしてほしい。
というわけで、新年早々注文の多い?文章になってしまった。
「上演台本:隆巴」とのこと。訳は小田島訳を使っているが、自由にカットしたり付け加えたりしている。
チェロの生演奏付き。
舞台奥の扉が開けられると、その奥に呼び物の広々とした野原と森が見え、客席からは拍手が。確かにこれは見ものだ。
マクベスは仲代達矢。ひょっとして史上最高齢のマクベスではないだろうか。ギネスブック級。どう見てもダンカン王、いや一番近いのはリヤ王だ。初めて登場した時から疲れたような、どこか呆然とした様子で、とても勇猛果敢な武将には見えない。残念ながら口元も覚束無く、セリフも早口ではしゃべれない。こんなマクベスは初めてだ。
池辺晋一郎の勇ましい音楽が、武人たちのシーンで流れる。
それはいいが、マクベスの独白の時、同時にチェロが弾かれるのはどうか。曲は美しいしセンスもいいが、いちいち重く、情緒的過ぎて、押し付けがましい。急流を一気に下っていくような、この芝居のスピード感が損なわれる。
マクベス夫人役は若村麻由美。メイクでだいぶ印象が違う。途中まではうまいと思ったが・・・。
衣裳では、夫人の青いドレスが美しい。ダンカン王暗殺直後、武人たちは白くて長い寝巻き姿で集まってくる。侍女たちの服装の色の取り合わせがいい。
ダンカン王殺害後、二人は血まみれの手を高く上げて抱き合うので、見ているほうは血が服につかないかとハラハラしてしまう。ちょっとでも血がついたら間違いなく怪しまれ、計画はオジャンなのだから。ここで無理して抱き合うことはないのに。
バンクォー殺しの場は様式化されている。フリーアンスはすぐに逃げずにしばらくじっとしているし、バンクォーは歌舞伎っぽい発声と所作。不自然だ。
王の宴会の場。照明が時々消え、その間にバンクォーの亡霊が出入りする。
「おれたちはまだ青いな」でなく「おれは・・」とマクベスは言う。しかもこのセリフで暗転してしまうのはどういう訳か。
マクダフ夫人は夫がイングランドへ行った、と聞き、「イングランドへ?」と驚く。どうしてわざわざ不自然にセリフを変える必要があるのか。たぶん分かり易くしたつもりなのだろう。子供は二人いて、セリフも分け合う。三人いっぺんに殺される。
イングランドで王子マルコムは、何と女と戯れている!その後の「実はまだ女を知らない」というセリフもカット。この辺いいとこなのに他のセリフもだいぶカットされている。なぜ高潔な王子を貶める?これはもはやシェイクスピアではない。「翻案」と言ってほしい。隆巴、一体何を考えていたのか。
マクベス夫人狂乱の場。不自然な発声と仕草、動きが多い。ここで重要なことは、彼女が罪の意識に脅えているということなのに、それが伝わってこない。ただ美しく踊るように演じるばかりで精神性のかけらもない。
医者はもっと恐ろしそうに話すべきだ。しみじみと笑いながら言ってどうする。どうもこの医者、事の重大さに気づいていないようだ。
主役はなかなか死なない。階段をどんどん登って、またどんどん降りて、しまいにこちら向きに座ったところをマクダフが後ろから刺し殺す。それはないだろう。彼はそんな卑怯な奴ではない。戦場でマクベスの後ろ姿を見つけた時、彼は「こっちを向け!」と言ったではないか。
それに死ぬのにこんなに時間をかけるくらいなら、セリフのカットをもっと減らしてほしい。
というわけで、新年早々注文の多い?文章になってしまった。
こんにちは。
今年も宜しくお願い致します。
仲代さんのマクベス、老けている印象がするのは否めませんでしたね。
「悪事に関しては、まだまだ青いな」の台詞は私も聞きたかったですね。
観ながら、あれっ?と思いましたもの。
マクベス夫人が夫を唆しながら、さっさと自分はあっちの世界に行ってしまう図々しさを感じられなくて、物足りなかった感じもしたし。
只、劇場で馬が坂を走り降りてくる場面や、兵隊が迫ってくるシーンを目の当たりしただけで、良かったと思える劇でした。
こちらこそ今年もよろしくお願いします。
マクベス、能登でご覧になったの?すご~い!
年末年始もずい分いろいろ行かれたようですね・・・。