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お加代


 篁はるか 文芸社

 お加代は呉服屋のひとり娘。出好きの娘であるが、親がなかなか許してくれない。それでも親の目を盗んであちこちに出かける。なかなかのおてんばで、スリを自分で捕まえようとする。それが縁で同心の風間駿介と知り合う。お互いひとめぼれ。紆余曲折があって、商人の娘お加代と武士の駿介はめでたく夫婦に。子供にも恵まれ、めでたしめでたし。
 商家の娘が武士の青年と結婚?もちろんお加代はいったん、駿介の上司の養女となって、そこからのお輿入れということに。
 お加代は武家の育ちではない。武家のしきたりはなんにも知らない。駿介の同僚でベテラン同心の奥方が指南役になる。
 お加代が武家の奥方として成長する物語で、ひとりの女性の半生記であるが、上はお奉行から下は岡っ引きまで、お加代と駿介の周りはみんないい人ばかり。だから安心して読めるが、できればもう少しお話にスパイスを効かせて欲しかった。甘くて口あたりが良いが、お話が一本道すぎた。曲がり角や、別れ道も必要なのではないか。
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とつぜん上方落語 第23回 堪忍袋

 えー、落語に「堪忍袋」ちゅうのんがありますな。しょっちゅう夫婦喧嘩しとる夫婦がおりまして、今日も今日とてはでな夫婦喧嘩。家主の平兵衛さんが仲裁に入りますな。で、平兵衛さん、夫婦にアドバイス。「堪忍袋」ちゅうもんを作りなはれ。そんで、ハラの中にたまってるもんをその堪忍袋の中にいれるのです。
 この夫婦、堪忍袋を作って、なにかあるとその袋めがけて怒鳴るんですな。
「この、ド甲斐性なし」
「この、無神経女あああ」
 すると二人ともすっきりして夫婦喧嘩もおさまりました。これが評判になって近郷近在から堪忍袋を貸してくれ。袋はみんなの悪口つげ口不平不満文句クレーム悪評呪いの言葉なんかを詰め込んでパンパンに膨れ上がってしまいます。
ようできた嫁と評判の若いおとなしげな伊勢屋のお嫁さんが堪忍袋を借りにきます。あんたみたいな、できたお人がなんぞ不満がおまんのか。嫁さんに堪忍袋を貸します。嫁さんは息を吸い思い切り堪忍袋に怒鳴りました。
「死ねえ、クソ婆あ」
 星新一の名作ショートショートに「おーい ででこーい」があります。ある村で不思議な穴が発見されました。とても深い穴です。若者が穴に叫びました。
「おーい、ででこーい」なんの反応もありません。石ころを投げ入れました。やはり反応なしです。
 そして人々はなんでもかんでも穴に放り込みました。使用済核燃料。機密書類、死体から都会のゴミ、古い日記。穴にはいくらでもモノが入ります。

 長屋のご夫婦、堪忍袋のおかげですっかり中の良い夫婦になりました。ある日久しぶりに堪忍袋の口を開けると、中から若い人の声が聞こえてきました。
「おーい、ででこーい」
 穴の村の村長さん。村役場の改築工事のさい、建設会社に便宜をはかって、まいないをもらいました。その証拠書類を穴にほかしに来ました。すると穴から若い女の声が聞こえてきました。
「死ねえ、クソ婆あ」

星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞ、ご覧になってください。

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西宮八園虎日記 4月18日

「こんばんは」
「あらせんせ、いらっしゃい」
「甚兵衛さんは」
「きょうは出張とおっしゃてましたわ」
「そうか。そんじゃ、今夜は女将あいてにじっくり飲むか」
「お相手しますわ。ほほほ」
「そうじゃなウィスキーをもらおうか。スコッチがええな」
「はい。ではグレンフィディックの12年です」
「しかしびっくりしたな」
「なにがです」
「メッセンジャーが大リーグボールを投げよった」
「なんです。それ」
「知らんかな。漫画『巨人の星』で、星飛雄馬が投げとったバットにボールを当てる球じゃ」
「はいはい。思い出しましたわ」
「しかもグリップエンドに当てる大リーグボール1号の最終進化形じゃ」
「しかし星飛雄馬といっしょにしたらメッセンジャーがかわいそうですよ」
「そうじゃな。しかもしかも相手のバッターアルモンテが、同じ中日のオズマがやったバットを落とすというワザを使いおった」
「せんせ、それはいいけど阪神勝ったんですか」
「勝ったわ。なんとかな。打つ方はロサリオが3安打猛打賞でええねんけど、桑原、ドリスがもひとつシャンとせんな」
「そのしゃんとせん投手陣を身を挺して引き立ててる梅野がえらいな」
「あら、そしたら今日の真のヒーローは梅野ではないんですか」
「そうじゃ。今日の勝因は梅野のキャッチングじゃ」
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ワンコイン・クリニック

「どうしたの。ねぼうして」
「うん。なんかゾクゾクする。きょうは会社休む」
「お医者さんに行ったら」
「うん。引っ越して来たばかりでよく判らん。近くに病院あるか」
「駅前のスーパーの隣に病院があるわ」
「そこの評判聞いてるか」
「わたしも、まだご近所さんとあまりつき合いがないから、よく判んないけど、こじんまりした病院よ」
「ふうん。ふつうの開業医はないのかな。病院だったら待たされるだろ」
「開業医?知らないわ。こんど、お隣さんにでも聞いておくわ」
「しかたない。その病院に行こう」
 小さな病院だ。看板を見ると診療科目が書いてない。なんの病院だろう。不安になってくる。建屋は平屋建てだ。入院の設備もないように見える。
「サス・クリニック」という病院名のロゴの下に「ワンコイン・クリニック」とある。
 ドアを手で押して開けて入る。今どき自動ドアでないなんて。故障してるのかなと思ったが、そうではないようだ。中に入る。狭い。病院の待合室のようには見えない。粗末なパイプ椅子が三つ並んでいるだけ。先客は初老のおじさんが1人。温厚そうな人なので話しかける。
「あのう。私、先週この街に引っ越して来たばかりなんで、この病院初めてなんですが、ここはよく来られるんですか」
「わたしは病院の常連に見えるほど病弱にみえますかな。それにここは病院ではありません。20床以上の入院設備がないと病院とはいわないと医療法に定められています。ここに入院はできません」
 どうも理屈っぽい人のようだ。話しかけるのは判断ミスだった。
「あ、どうも失礼しました」
「いいえ。あなた整理券を取りましたか」
「いいえ」
「整理券を取らないといつまでたっても呼ばれませんよ」
 入り口の横に小さな箱が置いてある。そこに名刺ほどの厚紙があり数字が書いてある。「3」だ。「3」を取る。
 ガタ。奥のドアが開いて中年の女性が出てきた。その箱に手に持った番号札を入れている。
 尿意をもよおしてきた。
「すみません。トイレはどこですか」
 おじさんに聞く。
「ここにトイレなんかありません。駅の横の公衆便所に行きなさい。おっと行かなくちゃ」
 女性が出てきたドアの上に「2」の紙切れが張ってある。そのうえに手書きのきたない字で、「この番号の人どうぞ」とある。
 銀行なんかにある整理券を発行する機械はないらしい。待合の椅子は三つ。整理券は女性が「1」おじさんが「2」私が「3」どうもこのクリニックは3人しか患者を待たせないのだろうか。
 おしっこはがまんする。おじさんはすぐ出てきた。おそろしく患者の回転が速い。
 カタン。ドアの上の紙切れがはってある所が回転した。「3」になった。私の番号だ。しかし、このクリニックには受付はいないのだろうか。看護師もいないようだ。二人の患者以外だれも見てない。
 ドアを開けて診察室と思われる部屋に入る。不精ヒゲの男がいる。Tシャツにジーンズだ。白衣は着てないがこの人が医者だろうか。
 男は座っているが患者が座る椅子はない。
「あのう。座りたいのですが」
「すぐすむから立っててください」
 そういうと男はやにはに私の額に手を当てた。
「BT38度。あーん」
「うむ。ノドの奥に軽い炎症」
「はい風邪。そこに500円置いて帰ってください」
「あの診察はこれだけですか」
「そう。ウチは風邪専門です。あなたは風邪」
「薬は?薬局に持ってくカルテは」
「そんなもんは出しません。あなたは風邪です。どこかで風邪薬買ってください。はい。次の患者さんが待ってます。500円置いて出てください」
 そういうと男は壁にある木の棒を押した。そこからひもが部屋の外に出ている。これで番号が替わったのだろう。500円玉を1個ころんと置いて部屋を出た。

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携帯電話の電池を買いに行った

 小生の携帯電話はガラケーである。スマホは持とうとは思わぬ。通話とメールとカメラしか使わないのだからスマホは必要ない。デジカメを常に持ち歩いているから、ほんとは糸電話でもいいのだが、これだと糸のつながったとことしかお話できないから、しかたなく電話を持っているのだ。
 その小生の携帯電話が少し前からおかしい。すぐ電池がなくなる。それもとつぜんに電池切れ。残量が半分ほどあるのに電池切れ。充電すれば途中で「電池を保護するため充電停止。しばらくして充電してください」というメッセージが表示される。100パーセント充電するまでずいぶん時間がかかる。
 電池を買い替えてやろうと思ってドコモショップへ行った。整理番号を持たされたてかなり待たされた。やっと店員の前に座れたら、やれ暗証番号がどうの、住所書けだの、たかが電池を買うのにたいそうなことである。で、この機種は古い型なので電池は店に置いてません。イラチの小生はこのへんからイライラ。後日、自宅に送ってもらうことにした。
 参考までに聞く。この電話がダメになったら次もガラケーにしたいがあるか?いまはスマホしかないとのこと。別になんでもいいんだが通話とメールだけできる携帯電話もつくって欲しいものだ。
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黒井戸殺し


監督 城宝秀則
出演 野村万斎、大泉洋、遠藤憲一、松岡栞優、斎藤由貴、藤井隆、吉田羊

 テレビドラマである。原作はアガサ・クリスティの「アクロイド殺し」これを三谷幸喜が舞台を日本に変えてアレンジして脚本を担当した。
 クリスティ×三谷幸喜という組み合わせは2015年の1月に「オリエント急行殺人事件」があった。面白かった。今回も「オリエント急行」と同じ主役の名探偵勝呂武尊を野村万斎が演じている。あとはご覧のように「真田丸」一族が多く出演。
 田舎の富豪の未亡人が殺された。この未亡人と結婚する予定だった、同じく富豪の男が殺された。富豪の男には村を離れている義理の息子がいる。男の家には義理の妹。その娘の姪で息子の婚約者。執事に秘書、女中、さらには居候の作家まで、いろんな人物が居る。この騒動に入り込んだのが村でただ一人の医者。この医者の姉が周囲をうろちょろ。
田舎の大富豪が被害者の殺人事件。なんか横溝正史っぽいなと思っていたら、医者の隣に住むのが引退した名探偵勝呂武尊。勝呂が登場してきたころから横溝ではなく三谷ワールド全開となる。
ともかく野村万斎の名探偵勝呂武尊(エルキュール・ポアロ?)が面白い。うんと誇張した演技でケレン味たっぷりで名探偵を演じている。
たいへん面白かった。アガサ・クリスティ+三谷幸喜+野村万斎のトリオで第3弾をまたやってくれないかな。「ナイルに死す」を「瀬戸内に死す」とでもアレンジしてやってくれないかな。 
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西宮八園虎日記 4月15日

「こんばんは」
「こんばんは」
「あら、きょうはお二人そろって」
「うん、ちょっと夙川の駅前であってな」
「おふたり、おひさしぶりですね。どうしてたんですか」
「うむ。こっちに来たかったんやが、なぜか判らんがこれなんだわ」
「今津のせんべろ屋には行ってたんでしょう」
「うん。ちょっとな」
「それはそれとして玄白さん。久しぶりに阪神勝ちましたな」
「そうですな。あ、女将、お酒を下さらんか」
「ワシも」
「はい。きょうは獺祭を用意しました」
「お、ええな」
「アテは旬のホタルイカです。酢味噌和えにしました」
「岩貞が良かったですな」
「そうですね。藤浪は復活しそうだし、小野もええ。高橋遥人ちゅう孝行息子もでてきたし。メッセンジャー、秋山、先発はもう大丈夫とちゃいますか」
「打線もきょうは今季最多の8点。鳥谷もロサリオも打ったし、糸原、大山も打ったし、これから暖かくなって、ぬくとまってきたらみんな打つでしょうな」
「女将、獺祭はうまいな」
「ねー。いま、日本酒で一番人気でしょう」
「阪神、これで5割。これから中日巨人相手に貯金せなあきませんね」
「そうですな」
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イカとアスパラガスの木の芽あえ


「あ、こんばんは」
「今夜のお酒は桜正宗の焼稀大吟醸です。桜のシーズンは終わりましたが、お酒で桜をたのしんでいただきとうございます。ほほほ」
「え、アテ。これをどうぞ」
「イカとアスパラガスの木の芽和えです。タケノコを使いたいところですが、甚兵衛さんはタコノコアレルギーだったでしょう。アスパラガスを使いましたわ」
「イカはヤリイカです。皮をむいてゆでました。イカはゆですぎると固くなので気をつけなくてはいけませんわ。ほほ」
「アスパラガスもゆでて食べやすい大きさに切っておきますわ。ねー」
「木の芽をすり鉢ですります。ゴリゴリゴリ」
「調味料を入れましょうね。西京みそ、味醂、お酒。それにマヨネーズを隠し味にいれましたわ。ほほ」
「あとはイカとアスパラガスを和えたらできあがりです」
「さ、どうぞ。え、玄白さん。もうちょっとしたら来られると思いますわ。ほほほ」

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トラキチ酒場せんべろ屋 4月14日

「おもやん。ビールや」
「おや。きいこ久しぶりやな」
「なんや、せえやん来てたんか」
「来るわいな。阪神あかんな」
「そやな。まったく打てんな」
「雨天の試合やから打てんのやろ」
「しょうもないしゃれゆうな。相手のヤクルトは打っとうやんか」
「糸井と福留は打つねんけど、4番のロサリオかなあ」
「金本はん、どこまでがまんしてロサリオを4番にすえとくなか」
「金本はんの悪口ばっかりゆうてるヤツがおるけど、ワシらファンは監督を信頼して見守ったらええんちゃうやろか」
「そやな。それもふくめての阪神のファンやねんからな」
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タコ大豆


 大豆とタコの組み合わせである。両方ともうまみがたっぷり。市役所の建て替え工事と市民文化会館の新築工事。この2件の工事、市内のゼネコンにとってどうしてもやりたい仕事。市の建築課にとってもうまみたっぷり。と、いうような料理である。
 大豆は一晩水につけて戻す。水煮の缶詰を使えば簡単であるが、あれはうまみも栄養も抜けた抜け殻であるから、乾燥大豆を自分で戻そう。
 戻した大豆は倍ほどの大きさになるから、量は考えること。戻し汁は大豆のうまみがたっぷり入っている。
 鍋に戻し汁と戻した大豆を入れて加熱。差し水をしながら40分ほど煮る。大根とタコを入れる。今回はゆでダコを使ったが、生のタコならだんぜんうまい。
 調味料は醬油と酒。砂糖と味醂はいらんだろう。大豆とタコがやわらかくなったらできあがり。
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トラキチ酒場せんべろ屋 4月13日


「おや。甚兵衛さん久しぶり。ああたがここへ来るとはめずらしい」
「いやあ。甲子園に行って、そこのお好み焼き屋で晩めし食ってたから。せっかく今津に来たんやから、ちょっとここにも顔出しとこうと思って」
「阪神、まけましたな」
「そやねん。ワシが甲子園行くとたいたい勝つねんけどな。会社にそいつが行くと負けるちゅう男がおる。そいつが来とったんかも知れんな」
「藤浪はなんとか復活したんとちゃいますか」
「そやな。けど打線があかんわな」
「それでも福留がホームランを打ちましたやんか」
「盛り上がったんはあそこだけやな」
「そうでんな」
「ほな帰るわ」
「『八園』の女将によろしく」
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地下鉄道


 コルソン・ホワイトヘッド  谷崎由依訳 早川書房

 アメリカはえらそうなことをいってるけど、昔はこんなひどいことをしていた。奴隷制度のこと。アフリカからアフリカ人を拉致して強制労働させていたのである。特大の拉致問題である。
 時は南北戦争の前、アメリカ、特に南部は奴隷制度が厳格にしかれていた。そこでは黒人は人間ではない。農園主の「所有物」だ。しかし、「所有物」であることを断固拒否、自由な人間であること求めて逃亡する黒人も多くいる。この逃亡黒人の逃亡を助けること、かくまう事は法律で禁じられていた。賞金目当てに逃亡奴隷を追跡捕まえる賞金稼ぎもいる。かような人もいるが、心ある人たちもいる。その人たちは奴隷黒人の逃亡を助ける秘密組織「地下鉄道」を作った。この言葉は比喩だが、実際に地下に鉄道を走られて黒人を逃亡させる人たちがいた。と、いうのがこの話である。
 15歳の黒人少女コーラは南部の綿農園で奴隷生活を送っていた。母親はコーラを置いて一人で逃げた。農園主や監督は残忍で黒人を人間扱いしない。ちょっとしたことで、すぐしばり首。
コーラは黒人少年シーザーにいっしょに逃げないかと誘われる。最初は断ったが、結局二人で逃げる。地下鉄道の「駅」に着く。そこには黒人に同情的な白人がいて、自由黒人になれる北部への汽車に乗せてくれる。そのコーラたちを奴隷狩り人リッジウェイが追う。プロ中のプロのすご腕ハンターのリッジウェイが追う。つかまれば南部へ連れ戻されしばり首だ。コーラは逃げおおせるか。
 アメリカの恥部をこくめいに描写した南部の綿農園のようすは、読んでいて痛みすら感じる。奴隷制という歴史上の黒い真実を描きつつ、地下を走る蒸気機関車という虚構を加えることで、読者の興味をそそり、それに逃げる者と追う者、サスペンスがページをめくらせる。重く暗いが一級のエンタティメントに仕上がっていた。 
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とつぜん対談 第111回 山奥の巨木との対談

 ふうう。ちょっと休憩。ずいぶん歩いたな。もう、こんなに山奥。もう少しだ。がんばろう。今回の対談相手は人里離れた山奥におられます。
 あ、見えてきました。話には聞いてましたが、すごく大きいです。やっと、着きました。見上げれば首が痛くなるほどです。たいへんな貫禄です。山奥の巨木さんです。

雫石
 こんにちは。

巨木
 うう。ワシの睡眠を妨げるのはだれだ。

雫石
 おやすみのところを申しわけありません。先日お手紙をさしあげた者です。

巨木
 ああ、そういえば何日か前、ハトがワシの梢になんか紙きれを落としていきおった。

雫石
 いやあ、あなたと連絡をとるにのずいぶん苦労しました。植物あいてに電話もメールもできないし、知り合いのハトに頼みました。

巨木
 それでワシになんの用だ。

雫石
 ちょっとお話が聞きたいと思いまして。

巨木
 ワシはただの木だ。ワシに何が聞きたい。

雫石
 巨木さんはずいぶんご長寿なんでしょう。おいくつになられます。

巨木
 さあ。よう知らん。自分の年齢なんて気にしたことないなあ。1000年ぐらいかなあ。

雫石
 その大きさなら樹齢1000歳は越えておられるでしょう。

巨木
 そんなことええではないか。ワシが1歳であろうが1000歳であろうが。

雫石
 そんなことはありません。1000年も生きてこられた。これは尊敬すべきことです。1000年分の知識が蓄積されておられるのでしょう。

巨木
 ワシは、ただここに立っておるだけじゃ。ワシは木だ。なんにもせん。なんにも覚えん。

雫石
 それでも、人間界のことが耳に入ってくることはありませんか。

巨木
 ああ。そういうこともあるなあ。カラスやトンビ、渡り鳥が旅の途中に立ち寄って見たこと聞いたことをワシにいうこともある。

雫石
 巨木さんから見て人間をどう思いますか。

巨木
 なんにも思わん。

雫石
 そうですか。でも、あえて1つだけお聞きします。

巨木
 なんだ。

雫石
 人間は、というより人類はこれからどうなりますか。

巨木
 遠からず絶滅する。

雫石
 なぜですか。

巨木
 自分らでよく考えてみろ。

雫石
 人類もバカじゃないと思います。

巨木
 だったら、そう思っとけばええじゃないか。
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トラキチ酒場せんべろ屋 4月12日

「大将、ビールを下さらんか」
「おや、玄白さん。めずらしい。きょうは八園には行かへんのですか」
「いやあ。きょうはちょっとこっちに用事がありましてな」
「玄白先生、こんばんは」
「おや清八さん、その後胃の具合はどうですかな」
「いやあ、先生にピロリ菌を除菌してもろてから快調ですわ」
「きょうは阪神あかんかったですな」
「そうですねん。メッセンジャーが失点して2回で暴言退場」
「メッセンッジャーはなにをゆうたんでしょうな。メッセンッジャーが退場すんのんは初めてですな」
「そうでんねん。あとを投げた石崎は良かったけど、打線と高橋聡があかんかったな」
「そうですね。それはそれとして藤川には胸うたれますね」
「ほう、なんですねん」
「藤川球児。かっては阪神の絶対的守護神といわれた男ですよ。それがこんな負け試合の敗戦処理。もうとっくに引退して解説者かコーチにおさまっていてもええ。それがまだ投げとう。阪神の投手陣の精神的支柱やないですか。藤川球児は本当の意味での阪神の守護神になったのではないですかな」
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西宮八園虎日記 4月11日

「こんばんは」
「お、甚兵衛さん。こんばんは」
「玄白さん。きょうの阪神、開幕の巨人の菅野をボコボコにして以来の快勝ですな」
「そうですな。きょうはなんといっても新人ピッチャーの高橋遥人の快投につきますな」
「そうですな。見ていて実に気持ちの良いピッチングでしたな」
「あの広島打線ですから新人ピッチャーにはコクかなと思ってましたが、そんな心配は無用でしたな」
「阪神の初物に弱い菌が、広島に感染したんでしょう」
「かもしれませんな」
「女将。きょうの酒は?」
「きょうはスコッチです。マッカラン12年です」
「お、ええな」
「ストレートでどうぞ。アテにゴディバのチェコレートを用意しました」
「あしたはメッセンジャーですな」
「うまいことすると対広島3連勝ですな」
「ところで、玄白さん。ワシ13日に甲子園に行きますぞ」
「対ヤクルト戦ですな。ワシの分まで応援してきてくださいな」
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