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とつぜんコラム №198 新入社員たちよ、経験を積め

 新社会人の諸君、就職おめでとう。君たちがこれから一日の多くの時間を過ごす会社なるところは学校とはまったく違う所であることをまず認識していただきたい。
 クラブ活動を経験した人ならば、先輩、同輩、後輩なる存在は先刻承知かも知れない。会社にも、もちろん、先輩も後輩もいる。会社に生息するかような生き物は、クラブの同種の生き物とは少々違う。
学校のクラブ活動ならば、最悪の事態がせいぜい試合に負ける程度のことだが、会社での業務では、最悪、多くの人たちが、おまんまの食い上げということになる。ぼく一人がヘタうったからって、そんなことはないでしょう。と、思うかもしれない。しかし、そんな「ぼく」が何人もいたら会社は倒れる。会社が倒れるということは、君が思っている以上にたいへんなんだ。被害は君の会社1社にとどまらない。君の会社に融資している銀行、株を所有している株主、君の会社に納品している商社、君の会社から仕事をもらっている協力業者、これらの会社がみんな大きな被害をこうむるのだ。銀行株主はさることながら、納品業者、協力業者は最悪連鎖倒産ということになるかも知れない。それらの会社に関連するところもさらには連鎖倒産するかも。君一人のヘタでこれだけの大きな被害が出るのだ。そこのところをしっかり認識してもらいたい。つまり、会社で君が行う業務には必ず責任が伴うということ。
と、おじさんは偉そうなことをいうが、おじさんたちだって、べつだん、ヘタうったらって責任をとってハラを切るなんて思っていない。そんなことをいっていたら、神戸製鋼やら日産やらJRやら、昨今の企業のええかげんさを見れば、日本国中ハラキリだらけだ。かようなおじさんもワザとズルしてやろうと思ってヘタするわけではない。では、おじさんたちは何が目的か。利潤を上げることが目的だ。ようするに会社企業なんてものは、利潤を上げることが至上の目的である。君たちはそのことを、しっかり頭に置いて、ズルやヘタをうたないようにしてもらいたい。もう一度いう、企業の目的は利潤を追求することだ。君のこれからの会社での仕事は、それを考えの中心において実践すれば、それなりのサラリーマン人生をおくれるであろう。
こんなことをいうと、会社の仕事ってたいへんなんだ。どうしよう。確かにたいへんなところもある。とはいいつつも、普通の頭脳の持ち主であれば、たいていの仕事は三ヶ月もすれば覚えられるものである。かくいう小生は今まで13社の会社を渡り歩いてきた。業種でいえば、食品、広告、電子機器製造、薬品など。職種でいえば、食品製造、コピーライター、購買仕入れ、生産管理など。この中で一番長く小生の本業といっていいのは購買仕入れである。それなりの仕事をしてきた。
 では、どんな仕事でも素人でもできるかと問われれば、できると答える。さっきもいったように、たいていの仕事は三ヶ月もすれば覚えられる。では素人とプロはどこが違うのか。トラブルが起きた時の対処の仕方である。仕事なんてものは毎日同じことのくり返しである。今日することは昨日と違わない。明日も今日と同じことをするだろう。実際、こんなことは小生のごときアホ頭でもすぐ覚えられた。ところが仕事にはトラブル、クレーム、突発事態、故障が付き物である。こういう時に素人とプロの違いがあらわれる。素人はどうしていいかわからず、先輩に聞くなりマニュアルを見るなりして、なんとか対応する。結果的に処理できたとしても時間がかかるだろう。プロならば、即、対応できる。なぜなら長年その仕事に携わっているプロならば、そういうことは長いサラリーマン生活で一度や二度は経験している。ああ、あの時には、こうしたな。だったらこうしよう。と、いうわけである。1年に1度起きるトラブルならば1年以上の経験があれば対処できる。5年に1度なら5年以上、10年に1度なら10年以上の経験というわけ。
 新卒で入社しても、最近は3年以内に会社を辞めていく者が多いとか。正直3年程度ではさしたる経験はできない。せめて5年はがまんできないだろうか。経験を積むことが大切である。
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