雫石鉄也の
とつぜんブログ
阪神沈没
類似書 小松左京「日本沈没」
クラスエー大陸東端の弧状列島に位置する島国タイガ国。クラスビー大洋を西進する大洋側プレートと大陸側プレートの境目にある。マントル対流の流れに押されたプレートが破砕するエネルギーで巨大地震にたびたび見まわれてきた地震国である。
地球物理学者福所博士は深度一万メートル、タイガ海溝の底で信じられないもの見た。乱泥流。こんな深海で乱泥流を見られることはありえない。考えられることは、ただ一つ。
ちょうどそのころ、海洋観測船ワサオで観測していたノーミ博士は、一晩のうちに島が九つ沈没する事実を観測した。
タイガ海溝から戻った福所博士は、政財界に隠然たる力を持つワダ老人に呼ばれた。
「科学者にとって一番大切なものはなんじゃ」ワダ老人の問いかけに、福所博士は答える。
「コントロールとボールのキレです」
「この国はどうなる」
「大陸側のプレートと大洋側のプレートのバランスの上にこの国の国土はある。大洋側にフジナミ、メッセ、ノノミこの三つの巨大な岩塊に支えられていた。この内の一本が折れた。あとどうなるか子供でも判るでしょう」
「どうなる」
「タイガ国はクラスビー大洋に沈没します」
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