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極光星群


 大森望・日下三蔵 編    東京創元社

 毎年吉例、年間日本SF傑作選、第6集目。小生はSF好きだ。しかし、いくら好きといっても、発刊されるすべての雑誌やアンソロジーに目を通すことは不可能。読むべき傑作をずいぶん見逃しているだろう。そういうことを考えると、このような傑作選はありがたい。ただ、どういう人が編集に当たっているかが大切。小生と同じ価値観同じ感性の人が編集者だと、選択されている作品も小生の好みにどんぴしゃなんだが、小生とは違う価値観感性の人が編んだ傑作選だと、実につまらない傑作選となる。これは価値観と感性の問題だ。つまらん傑作選だからといいって、担当編集者が無能というわけではない。その点、この年間傑作選の編集者、大森、日下のお二方は、おおむね小生の好みに合っている。
 なお、この本のタイトル「極光星群」の星群は、小生が所属する同人誌「星群」からとったとのこと。

「星間野球」宮内悠介
宇宙ステーションで野球盤をマジでやるおっさん二人。見破られなければズル、イカサマOK.。宇宙はヒマなんだな。
「氷波」上田早夕里
 土星の衛星ミマスに滞在する宇宙開発用人工知性トリプルツーの元に、地球からタカユキという人工知性がやってきた。タカユキは芸術家で、土星の輪のC環にサーフィンにやってきた。実はタカユキはもう一つ用事があった。
「機巧のイブ」乾緑郎
 時代劇ロボットもの。仁左衛門は遊女羽鳥にほれた。仁左衛門はからくり師釘宮久蔵に羽鳥の機巧人形の製作を依頼する。オチはロボットもの独特のオチ。
「群れ」山口雅也
 動物はなぜ群れるのか。群れの行動に法則はあるか。私の会社は群れ型ロボットを開発している。
「百万本の薔薇」高野文緒
 加藤登紀子の歌でもあったな。旧ソ連。最高指導者の死に備えて、薔薇の研究を命じられた主人公。
「無情のうた」會川昇
 アニメの脚本。
「とっておきの脇差」平方イコルスン
 マンガ。
「奴隷」西崎憲
 どうも今の日本が舞台らしい。車を買うように奴隷が買える。ホームヘルパーやメイドや執事ではない。奴隷である。奇天烈なネタをごく当たり前に描いているのがいい。寓意は感じなかったので西崎さんご安心を。
「内在天文学」円城塔
 円城塔。
「ウェイプスウィード」瀬尾つかさ
 SFマガジン掲載時に読んだ。今回再読。掲載時には前編後編の分載。前編は人気カウンター1位にして後編が楽しみと書いた。ところが後編は5位。このたび一気に読んだらよかった。やはり作品は分載せず、一挙掲載すべき。判りましたか。早川の塩沢くん。
「Wonderful World」瀬名秀明
 なんか中途半端。小説として未完成ではないか。未完成の作品を選んだ大森氏の見識を問いたい。
「銀河風帆走」宮西建礼
 うう、これはいい。非常にピュアなSF魂を感じる。まるでジェイムズ・ブリッシュか堀晃を読んだような喜びを味わった。SFはやっぱりこうでなくっちゃ。久しぶりに本格的宇宙SFを読んだ。ただ、宇宙SFの舞台だけを一生懸命に作って、その舞台上で演じられる芝居の脚本が少々弱いように思う。作者はまだ若いとのこと。楽しみな若い人が出てきた。
 
 
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