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とつぜんコラム№86 資本主義のガタが出はじめた

 不景気になり、派遣、契約、期間工などの非正規雇用の労働者の切捨てが始まっている。正社員にも手をつけ始めた企業もある。
 不景気になれば、物が売れない。当然、製造業なら、工場で生産される製品の量が減ってきて、仕事がなくなって人減らしを始めたわけだろう。10個の製品を5人の正社員と5人の派遣で作っていた企業が、5個の製品しか造らなくなれば、5人分の仕事がなくなる。仕事がないのに人はいらないから、派遣の5人はクビになるわけだ。
 政府は緊急の雇用対策をとりまとめた。この対策というのは、要するに金で解決しようというもの。労働者を雇った企業にはいくばくかの補助金を出す。これでは、とても抜本的な対策とはいいかねる。金で企業を釣って人を雇用させても、肝心の仕事がなければなにもならない。
 では、どうするか。仕事を作ればいい。企業に仕事が減ったとはいえ、全くゼロになったわけではあるまい。派遣社員切りやリストラで従業員が少なくなって、その少ない社員だけで製品を造っているわけだろう。その社員ぶんの仕事はあるわけだ。だったら、その社員一人分の仕事を減らせばいい。
 まず、時間外労働を厳禁する。仕事がなくて困っている人がいるのに、時間外に労働することは、他の人の仕事を奪う許されざる行為であるとの認識を社会に認めさせることが大切。
 これでも、まだ、全労働者に仕事が行き渡らないのならば、5時終業を4時終業にする。それでも不足なら、3時まで。さらには、日本国中の企業を総て昼までの半ドンにすればいい。これぐらいすれば、日本国中の労働者が全員正規の社員となるだろう。数量が増えれば単価が小さくなるのはいたしかたなきこと。一人一人の労働者の賃金は少なくなるだろう。この収入不足を補うため、各企業は副業を認める。ほんどの企業は社員の副業を認めていない。賃金は減らすのに副業を認めないのは、企業の身勝手だ。本業に専心すべきとの考えでのことだろうが、人を非常に切り捨てるくせに、会社に忠誠心を求めることは許せない。いや、副業といわず、複数の会社に正社員として雇用されてもいいのでは。
 例えば、自動車の場合、トヨタ、マツダ、ダイハツが朝から昼までの就業。日産、ホンダ、富士重工が昼から夜までの就業ということに決めて、一人の労働者が午前中はトヨタの午後は日産の社員でもいいのでは。
 規制緩和、自由競争は好景気であればこそ。これだけ不景気になれば、そんなことはいっていられないはず。日本だけの不景気ならいずれ浮遊する。ところが、世界最大の超大国アメリカが原因の世界的な不景気となると、そう短期に簡単に回復するとは思えない。
市場原理による競争を基盤とした、資本主義は、もうそろそろ見直す時期が来ているのではないか。企業単独の自助努力も限界がある。それに企業とは本来、エゴイステックな存在で、世界中に自社1社が生き残ればいいと考えている。だから、企業社会全体を一つの有機物としてとらえて、全体を見渡しながらコントロールする必要がある。
 社会主義の実験はソビエトの崩壊によって失敗した。これは、人間一人一人の個人的な幸福の追求に目をつぶり、全体の幸福を追求したからだろう。人間一人が幸福になろうというエネルギーを軽く見ていたわけだ。
 資本主義はこれと全く正反対の鏡像といっていい。好景気不景気の波は資本主義の宿命。好景気の時はいい。不景気の時は、個人の幸福追求のエネルギーはある程度コントロールする必要がある。アメリカのビッグスリー支援策が、自動車の労働組合の抵抗によって、廃案になってしまったのがその好例である。あれで、ビッグスリーが崩壊すれば、一単産労組の幸福追求によって、世界中が恐慌に襲われるだろう。
 社会主義、資本主義のいいとこどりはできないだろうか。

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