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とつぜんリストラ風雪記 16

とつぜんリストラ風雪記15

第16回中高年のための再就職マニュアル実戦編その2

 前回はハローワーク、人材紹介会社と、求人チラシ、新聞案内広告、と求人情報が公開されている情報収集方法について書いた。求職者は鵜の目鷹の目で求人情報を探している。これらの情報も当然目にしているだろう。と、いうことはこれらの案件に応募すればライバルが多いのはあたりまえ。特に中高年の場合は、求人案件そのものが少ないから、少ない案件に多くの求職者が押し寄せる。こういう状況で目的を達成しようと思えば、裏ワザ的な求職活動を行うことも必要だろう。

 条件から外れた案件に応募する。

 これはと思う企業が目についたが、自分の専門分野以外の職種しか募集していない、ということがよくあるだろう。
 小生の場合は、通信機器の会社で資材業務をやっていた。主に電子部品の購買仕入れと生産管理を担当した。
 電子電機通信機器の業界で資材業務という、ぴったりの案件があればいいが、そんなおあつらえ向きの案件はめったにない。それで、業界か職種かどちらかに焦点を絞って求職する。
 
 職種が同じで業界が違う場合

まず、職種は同じだが業界が違う場合。資材、購買仕入れ、生産管理という職種で様々な業界を探してみた。小生は、食品、印刷、機械工業、薬品などに応募した。この場合、職種そのものは募集しているから、企業にコンタクトを取れば面接まではしてくれる。
面接では「ウチの業界は、経験がお有りではありませんが、大丈夫ですか」と聞かれる。その時は「勉強します」と、答えればいい。シンプルに応じよう。色々といい訳めいたことをいうのは、逆効果だ。
実は小生が今の会社に入社したのはこのパターン。今の会社は、業界は重機械工業で、仕事は、在庫管理、倉庫管理、購買仕入れ、納品受付。業界は畑違いで、仕事は小生の専門分野。扱う品物は前は電子部品。手のひらに乗る。今はトン単位の金属のかたまり。手のひらには乗らない。その他溶接材料、高圧ガスなどの仕入れもする。
入社当初はなんにも判らなかった。ところがモノの名前さえ覚えれば、あとはスムースに仕事がこなせるようになった。品物は違うが、先入れ先出し、単価は安く、納期は早く、ジャストインタイムなどの資材業務の原則はどの業界も同じ。
違う業界に飛び込むのは、確かに不安だろう。しかし、大丈夫。物の名前なんぞは1ヶ月もすれば誰でも覚えられる。物の名前さえ覚えれば、やることは今までやってきたことと同じ。

業界が同じで職種が違う場合

小生がいた業界は電子電機の業界。もちろん、この業界の資材業務を探すが、難しい。そこで違う職種を募集している企業に当たった。営業、設計、総務などの職種を募集している電子電機業界の企業にアプローチをかける。柔軟な人で、どんな仕事にもチャレンジしてやろうという、進取の気性に富んだ人なら、今までまったく違う職種に就いて、新たな地平を切り拓いている人もいるだろう。しかし、中高年になって、ゼロから新しい仕事を覚えるのは大変である。小生はとてもそんな気概はなかった。
そこで、どうするか。資材業務のプロとして売り込むのである。まず、ハローワークで、業界を電子電機の関係に設定して、何件か画面に表示する。その中からこれはと思う企業を選ぶ。資材、購買、といった部門がありそうな企業を選ぶわけだが、どこを見ればいいかのポイントがある。
まず、従業員数。最低50人ぐらいの企業。従業員数人の企業では、資材購買といった仕事は、たいてい社長自らが行っている。専門の人間を置く余裕は無い。設計者を募集している所。設計者を必要としている企業は、受注した仕事を設計→部品調達→組立→品質管理→納品、という流れで一括受注していることが多い。こういう企業は資材部を持っていて部品を自社で調達している。
設計者がいない企業もある。そういう企業は図面を発注元から貸与してもらい、部品も支給してもらって、加工して組み立てるだけという所が多い。そういう企業では資材、購買の専門家は必要としない。
 他の条件は合っているが、募集職種に資材購買がない企業の案件は、まず、プリントアウトする。そして、ハローワークのカウンターに持っていかない。持っていっても募集していないから、受け付けてくれない。
基本的な履歴書、職務経歴書を作成して以下のような手紙を同封して送付する。

拝啓
 貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。突然このような手紙をさし上げる無礼をお許しください。
 さて、私は雫石鉄也と申す、現在、求職活動中の者です。昨年11月まで、27年間、K電気に在籍して、資材購買業務を担当しておりました。K電気はM電機の協力会社としては関西では最大手で、光通信、衛星通信、防災無線、ITVなどを、設計から組立、据付まで一貫生産しておりました。私は、主に電子部品の購買仕入れ、在庫管理、その他、生産管理、外注管理など、資材業務一筋で27年間を過ごしきました。ところが、業績不振により、大幅なリストラが敢行され、私も早期退職制度に応募してK電気を退職したしだいです。
 ハローワークで求人検索をしておりましたら、貴社が設計者を募集しておられるのを知りました。貴社のお名前はK電気在職中から存じ上げておりました。プラズマディスプレイの分野では、卓越した技術力を持ち、業界内でゆるぎない地位を築いていられる会社との認識を持っておりました。
 このたび断腸の思いでK電気を退職して求職活動の身の上となりましたが、これを機会に常々注目しておりました貴社に入社できれば、存外の喜びであります。しかし、このたびは設計者のみの募集とか。私は資材の専門家ですので、おかど違いかと存じますが。もし、資材業務の強化もお考えであれば、私もぜひ、貴社の一員としてその仕事に取り組めたらとの、強い希望を抱くしだいであります。
 資材部門は営業部門と同様、いや、それ以上に企業に利益をもたらす部門と私は考えます。資材はいうまでもなくモノを動かすところ、製造業はモノを動かして利益を上げております。そのモノの動きを一番よく知る部門が資材です。また、営業がいくら高い利益を上げても、製品の細胞ともいうべき部品、材料の仕入れが高くつけば利潤はあがりません。企業にとって資材部門に有能な人材は絶対に必要であると考えます。
 ぜひとも、貴社の「利益を生み出す資材」の構築に尽力させていただきたく、どうかご検討をお願いします。
敬具

 と、こういう手紙を同封するわけだが、現実はほとんどが、読まれもせずにゴミ箱行きだろう。しかし、何通も出していくうちに、読んでくれる人事担当者もいる。ほとんどが無視されるが、いくつかの企業からは、ていねいな返事の手紙を同封してきた。私の手紙を読んでもらったことは返事の内容で判った。
1社面接に呼ばれて、この会社に採用になり3ヶ月在籍した。
 手紙で気をつけるべき点は以下の通り。
 
①辞めた会社を悪くいわない。喜んで辞めたように思われないこと。
②その会社を以前から知ってなくても知っていたように書くこと。インターネット等で調べればだいたいのことは判る。その会社の、具体的なほめるべき点を上げて、なぜ私が貴社に入社したいのか書くこと。
③自分の専門分野が、いかに会社に利益をもたらしているか説明する。ただしあまり自慢っぽくならないように。
 
意地悪く読まれれば、あんたみたいな有能な資材のプロがいて、なぜK電気がリストラされるはめになったと、突っ込まれるが。そこはなんとかレトリックでぼやかしたい。
 

  


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